まずは素直に、そのままやってみてください。これに尽きます。ただし、あれもこれも一度に取り組んでみようとすると無理が生じます。例えば、まずは「なるほど!(体の向きを変えて)どう?」方式からやってみるなど、的を絞ることです。はじめはぎこちないものになるでしょう。生徒から「先生、今日はどうしたの?」と言われるかもしれませんが、繰り返し行うことで、ごく自然に、違和感なくできるようになるものです。この方式であれば、生徒の意見をつなげることができますから、生徒の声でつくる授業に変容していく実感をもてると思います。
授業開きをはじめ、機会をとらえて「授業では何を言ってもいい」ということを生徒にしっかり伝えます。ちょっとした気持ちの表れも大切にします。例えば「この問題はどう?」と聞いたときに「難しそう」と生徒が言えば、「難しそう」と板書します。「えっ」とつぶやいて止まってしまう生徒もいますが、「えっ」というつぶやきも板書します。そして、これらは立派な意見だと価値付けします。教師が一人ひとりを大切にしていることを伝えることになりますし、発言へのハードルを下げることにもなります。授業では安心してつぶやくことも、気持ちを言うこともできる、このような教科経営を心がけたいものです。
もともと教科書は学習指導要領に基づいて編集されていますから、教科書のことをよく理解した上で授業を進めれば、自ずと学習指導要領を意識していることになるでしょう。おすすめするのは、新たな単元に入る前には、学習指導要領や解説書の該当範囲に目を通しておくことです。教科書を深く理解するためには欠かせません。例えば、学習指導要領、第2学年の内容A「数と式」には「具体的な事象の中に数量の関係を見いだし」と示されています。教科書ではどのような具体的事象を基に見いださせようとしているのか、そのために授業はどう展開したらよいのか…と考えることで、深い教科書理解をすることができます。
ネタそのものに、生徒をひきつけたり、多様に考えさせたり、深く考えさせたりする力がありますから、ぜひそのまま生徒にぶつけてほしいと思います。そして、生徒の発言を重ねることはもちろんですが、生徒の表情やつぶやきをできる限り拾うことを心がけてください。それらをつなぎ合わせれば、盛り上がる授業になると確信します。一番おいしいところ、つまり生徒に気付かせたり、感動させたりしたいところを教師が言ってしまうのでは、教師一人が盛り上がる授業になってしまいます。
私自身は、これまで多くの実践書から学び、そこで紹介された教育技術や授業ネタを実際にやってみて確かめてきました。実践してみると、書籍で“なるほど!”と思った以上の手応えを感じることが多々ありました。紹介した大原則にも、書籍から学び、それを意図的に繰り返しているうちに、いつしか自分のものになり、自分流の色をつけることができたものが多くあります。ぜひ本書を基に皆さんの色をつけていただけることを願っています。
先生のホンモノの「授業」を受けてみたいくなりました。