著者インタビュー
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『学び合い』では確実に成績が上がります。ただし『学び合い』のセオリー通りに実践した場合です
上越教育大学教職大学院教授西川 純
2015/2/2 掲載

西川 純にしかわ じゅん

1959年東京生まれ。筑波大学生物学類卒業、同大学院(理科教育学)修了。博士(学校教育学)。臨床教科教育学会会長。上越教育大学教職大学院教授。『学び合い』(二重括弧の学び合い)を提唱。『クラスと学校が幸せになる『学び合い』入門』『気になる子への言葉がけ入門』『子どもたちのことが奥の奥までわかる見取り入門』『子どもが夢中になる課題づくり入門』『子どもによる子どものためのICT活用入門』(明治図書)など著書・編著書多数。

―本書は「会話形式でわかる『学び合い』テクニック」の第5弾として、テーマは「学力向上」です。まず、本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 『学び合い』によって人間関係が改善することは比較的簡単にできます。しかし、成績を向上するには徹底的にやる必要があります。本書では『学び合い』だと成績が上がる理由、逆に言えば、今まででは上がらない理由を、小学生にも分かる理屈で説明します。その上で、『学び合い』で成績が上がらないとしたら、『学び合い』をセオリー通りにやっていないことを明らかにします。

―先生は本書の中で、まず「なぜ成績が上がらないのか」「なぜ効果が出ないのか」について述べられています。本書でも詳しく紹介されていますが、この点について教えて下さい。

 成績が上がらない理由は至極簡単です。自分が上げたいという成績の実態は何かを冷徹に分析することです。そして、その上げたい成績に対応する課題をやることです。例えば、深い読みの授業を積み上げて、漢字の書き取りと基礎的文法が6割を占めるテストをすれば成績が上がらないのは当然です。

―本書の第2章は、「どうやったら向上するか」がテーマとなっています。「問題の与え方」「深い理解を要するテストの点数の取り方」「深い理解に必要な3つのこと」など、詳しく紹介されていますが、子どもの「深い理解」に大切なことはでしょうか?

 「深い理解」とは何かをハッキリさせることが大事です。自分の頭の中にあるように感じていたとしても、それを言葉でハッキリと示せず、それが達成したか否かをハッキリ判断できる評価方法を示せない場合は、本当は分かっていないのです。教師が本当に分かっていないならば、子どもが分からないのは当然です。

―本書の第4章では、「学力向上の基礎基本」として、現在の授業スタイルが子どもに合わなくなってきていることについても述べられています。この点について教えて下さい。

 現在の授業スタイルは明治初期に生じたきわめて異常な状態に対応して生まれたものです。人類発祥から江戸時代まで、そのような状態になっていなかったのです。その時代は『学び合い』ときわめて近いスタイルで学習は行われていました。現在の日本は異常な状態から脱しています。それ故、もともとのスタイルに戻す必要があるのです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 『学び合い』では成績を上げることが出来ます。ただし、『学び合い』のセオリー通りに実践した場合です。中途半端な実践では結果は出せません。是非、学力向上を願うならば、ルビコン川を渡り、徹底した実践をして下さい。

(構成:及川)

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