特集 子どもの意欲につながる教材用具の選定;編集長の主張
- まえがき
- 例えば,「絵の具箱の中にある用具の中で一番大切だと思うものはなんですか。」と問われたら,あなたは何と答えるだろうか。パレットか,筆か,絵の具か,水入れか。考えればどれもみな大切な用具だ。
- しかし,私は私なりの考え方を持っている。なんといっても一番大切なのは「筆」だと考えている。理由はいろいろとあるが,一番の理由は,「筆こそが描く人の心を映し出す用具」であると考えているからである。だから筆が古くなってボサボサになっていたり,曲っていたりすることに我慢できない。何がなんでも筆だけは,きちんと整えさせるようにしている。もちろん,私の考えを押しつける気持ちは毛頭ない。パレットこそが大切と考える人,絵の具と考える人,いや全部大切だという人があっても一向に差しつかえはない。要は,それらの用具について,自分なりにしっかりと考え,自分なりの「用具観」のようなものを持つことが大切だといいたいのである。
- 材料とても同じことだ。私はいろいろな画用紙の中で,いちばん好きなのが「白」の画用紙だ。白い画用紙は,クレヨンでも,水彩でも最も美しく発色してくれるからである。にもかかわらず,私は茶ボール紙や色画用紙などを多く選定している。それは白の画用紙の良さを十分に理解するが故に,他の画用紙のよさを生かすことに挑戦できるのである。材料や用具については,いくら研究しても,研究しつくせぬほどの深い意味がある。教師は,それらをよく勉強しながら,子どもに与えていかねばならない。この頃,用具も材料も子どもまかせ――といった風潮が強い。指導要領の中の「いろいろな材料を使って……」という文に惑わされているのである。生まれて十年そこそこの子どもに,材料を選定する力があるなどと本気で考えているとしたら,それは幻想というものだ。
- 材料や用具は,教師が自分の責任で厳選して与えることこそが基本であり,その土台があってこそ,附随的な材料を子どもが選択できるのである。
- 今号は,材料,用具について,正面から考える特集である。おそらく,これは我が国で初めてのことだろう。これを機会にいろいろと考えるきっかけになれば幸いである。
- 目次
- 特集 子どもの意欲につながる教材用具の選定
- 幼児 「かみなりの国」「屋根の上の白い猫」/遠藤 京子
- 1年 「かみなりの国」に挑戦/近藤 由佳
- 2年 お話の絵「かさじぞう」―地蔵をボール紙に貼って完成/坂井 邦晃
- 3年 「白い船に乗って」―茶ボール紙を使って/青木 典子
- 4年 「白い船に乗って」の教材用具の選定/上木 信弘
- 5年 「騎馬戦」―自分の最高傑作をめざして/船曵 則成
- 6年 教具の相性をみる「地域の町並み」/大谷 和明
- 中学 コラージュでつくる「自画像」/小嶋 瑞紀
- ◆実践を読んで/酒井 臣吾
- 連載講座●酒井式描画指導法入門――新しい机上シナリオ
- 「海・河川愛護ポスター」への新しいアプローチ・高学年/酒井 臣吾
- 誌上添削指導「ここはこう指導しよう」
- 「カブトムシをつかまえたよ!」・1年/漆山 仁志
- 「屋根の上の白い猫」・2年/香川 宜子
- ◆実践を読んで/酒井 臣吾
- 作品の見方研究::★この作品―どこを見るか
- 「紙飛行機に乗って」・4年/杵淵 真
- 「先生の顔」・1年/井関 和代
- 「理科実験」・6年/野崎 史雄
- ◆実践を読んで/酒井 臣吾
- 連載●私の新題材への挑戦
- 新題材への挑戦T
- 「彩色物語版画」共同で制作する4年/前田 康裕
- 新題材への挑戦U「かいじゅうと遊ぼう!」幼児/田中 博樹
- 新題材への挑戦V「ジャンボカボチャで遊んだよ」 2年/藤倉 欣浩
- 新題材への挑戦W「変身する野菜・果物」中学校/高橋 正和
- インタビュールーム★酒井先生に聞く
- 「思いを丸や三角に表現する」とは…聞き手/金子 智
- 表現活動で“子どもの心を開く”―障害児への指導
- フロスティッグ視知覚学習とかたつむりの線/長江 佳子
- 編集長のQ&Aコーナー 何でも相談室
- 教材用具の選定・取り扱いと基礎・基本
- 酒井式をめぐるマルチ情報
- ◇私の好きな画家
- 「宗達」―民衆の中から生まれた巨人
-
- 明治図書