- はじめに
- 第1章 子どもが主体的に学ぶ国語授業を実現しよう!
- 筑波大学附属小学校 /青木 伸生
- @「子どもが主体的に学ぶ」とは
- A子どもの本気を引き出す言語活動をどのように設定するか
- B教師の役割がより大きくなる
- 第2章 子どもが協働的に学ぶ国語授業を実現しよう!
- 筑波大学附属小学校 /二瓶 弘行
- @「対話」は,すべての学び合い活動の基盤
- A「ペア対話」の3つの条件
- Bなぜ「対話」なのか
- 第3章 3つの視点でつくる!アクティブ・ラーニングの実践事例
- 夢の国語授業研究会
- 1年
- ペープサートで伝え合おう!
- 物語文「りすのわすれもの」(松谷みよ子)
- なかよしポイントを探そう!
- 説明文「はたらくじどう車」
- 自分の好きな動物で詩をアレンジしよう!
- 詩「おさるがふねをかきました」(まど・みちお)
- 2年
- どんな顔で話していたのか想像してみよう!
- 物語文「名前を見てちょうだい」(あまんきみこ)
- 「生きものってすごい!」クイズ大会を開こう!
- 説明文「すみれとあり」(矢間芳子)
- 2つの詩を読み比べてみよう!
- 詩「ジャングル・ジム」(まど・みちお)/「星とたんぽぽ」(金子みすゞ)
- 3年
- 観点に沿って作品を紹介しよう!
- 物語文「おにたのぼうし」(あまんきみこ)
- 昆虫のすごいところを「かくし絵カード」で紹介しよう!
- 説明文「自然のかくし絵」(矢島稔)
- 学習した構成や表現技法を用いて「詩画」をつくろう!
- 詩「転校生」(金子みすゞ)/「どきん」(谷川俊太郎)
- 4年
- 想像を膨らませて「なりきり日記」を書こう!
- 物語文「白いぼうし」(あまんきみこ)
- どっちが本当のコツなのかな?
- 説明文「大きな力を出す」(西嶋尚彦)/「動いて,考えて,また動く」(野進)
- かえるはなんで「うれしい」の?
- 詩「春のうた」(草野心平)
- 5年
- 「顔を元に戻す作法」を2人の紳士に教えてあげよう!
- 物語文「注文の多い料理店」(宮沢賢治)
- 書き手の意図を考えながら新聞を読もう!
- 説明文「新聞記事を読み比べよう」
- 詩を読んで,感じよう,考えよう!
- 詩「積った雪」(金子みすゞ)
- 6年
- 太一が話さなかったことを手紙で伝えてみよう!
- 物語文「海の命」(立松和平)
- プロフェッショナルってどんな人?
- 説明文「プロフェッショナルたち」
- 「翻作」に挑戦しよう!
- 詩「生きる」(谷川俊太郎)
はじめに
教育界で,新しい授業像が模索されています。
その柱となる考え方が「アクティブ・ラーニング」です。「アクティブ・ラーニング」は,資質・能力を育成するための重要な考え方です。これは,国語科に関して言えば,ただ単に言葉についての断片的な知識・技能を身につけさせるのではなく,「言葉に対する見方・考え方」を育て,その「言葉の使い手である自分自身」を育てるのだという発想に基づいています。「アクティブ・ラーニング」は,教科の本質に根ざした見方・考え方なのです。
国語科では,すでに現在の学習指導要領に「言語活動の充実」が掲げられており,子どもたちはアクティブに学習活動を展開してきていると言えます。ですから,「今さら改めて『アクティブ・ラーニング』などと言うことはないのではないか」「小学校ではすでに行われていることだ」と考えることもできるかもしれません。しかし,これからの授業像を考えるうえで,もう一度国語科の教科としての本質を見直し,子どもの学びをとらえ直そうとしているのです。
文部科学省が示した「論点整理」において,国語科において育成すべき資質・能力が,「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力,人間性等」の3つの柱に沿ってまとめられています。
さらに,中教審教育課程部会の国語ワーキンググループは,この3つの柱について,以下のようにまとめています。
○知識・技能
「言葉の働きや役割に関する理解」「言葉の特徴やきまりに関する理解と使い分け」「言葉の使い方に関する理解と使い分け」「書写に関する知識・技能」「伝統的な言語文化に関する理解」「文章の種類に関する理解」「情報活用に関する知識・技能」など
○思考力・判断力・表現力等
(言語の働きを捉える三つの側面(@創造的思考とそれを支える論理的思考の側面,A感性・情緒の側面,B他者とのコミュニケーションの側面)に着目しながら,国語で理解したり表現したりするための力として)「情報を多角的・多面的に精査し,構造化する力」「言葉によって感じたり想像したりする力,感情や想像を言葉にする力」「言葉を通じて伝え合う力」「構成・表現形式を評価する力」「考えを形成し深める力」
○学びに向かう力,人間性等
「自分のものの見方や考え方を深めようとする態度」「集団の考えを発展させようとする態度」「心を豊かにしようとする態度」「自己や他者を尊重しようとする態度」「我が国の言語文化を享受し,継承・発展させようとする態度」「自ら進んで読書をすることで人生を豊かにしようとする態度」
(平成28年5月31日国語ワーキンググループ(第8回)配付資料「国語ワーキンググループにおける取りまとめ(案)」より)
これらを相互に関連させながら,資質・能力が働く一連の学習過程をスパイラルに繰り返すとともに,一つ一つの学習活動において資質・能力の育成に応じた言語活動を充実することが重要である,と述べられています。
つまり,今までに行ってきた国語科の授業を,資質・能力の育成の視点で見直し,言語活動の一層の充実と,そこで育つ子どもの評価のあり方を考え,実践していく必要があるのです。
本書は,「アクティブ・ラーニング」の考え方に基づき,従来の言語活動を見直し,新しい視点で,つまり子どもの資質・能力を育成するという視点で言語活動をつくり直そうとしています。これからの国語授業づくりの参考になれば幸いです。
「アクティブ・ラーニング」に決められた「型」はありません。教師自身がアクティブになり,新しい授業像を模索することが大切だと考えます。
2016年7月 /青木 伸生
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- 明治図書