- まえがき
- 第1章 地域の特色を生かすことがなぜ必要なのか
- 1 例えば、こんな地域の特色
- 2 地域の特色を生かす
- 3 こんな町にしたいね
- 第2章 地域学習のネタ・テーマ探しのコツ
- 1 六つのコツ
- 2 コツの紹介
- 3 授業化
- 第3章 地域の特色を生かす総合的プラン34例集
- ▼3・4年
- 地域のかるたを作ろう
- 「むかしばなし」を紙芝居にしよう
- ドングリ団子を作ろう
- 山ブドウジュースを作ろう
- おいしい笹巻を食べるには
- ▼4・5年
- 地域に伝わる技を調べよう
- ▼4〜6年
- 「むかしばなし」を知り地域のお話を創ろう
- 地域のお宝をホームページで知らせよう
- 「レーダー基地」
- 「宅配便の秘密」
- 伝統芸能「獅子舞」を調べる
- 水害になったらどうする!
- 橋の図鑑を作ろう
- ▼5・6年
- 方言を勉強しよう
- 大きな病院の働きについて調べよう
- お年寄りの方に学ぶ駄菓子作り
- 宮城の民謡「さんさ時雨」をうたおう
- 里山に生きる人々のくらしを調べよう
- 未来につなげる校歌を作ろう
- ▼6 年
- 「シャッター通り」を知ろう
- 自分の住んでいる町を知ろう1「車止め」
- 自分の住んでいる町を知ろう2「街路灯」
- 自分の住んでいる町を知ろう3「商店街」
- まちづくり1「自分のまちを知ろう」
- まちづくり2「現在のまちづくりを知ろう」
- まちづくり3「調べたことを発表する・ポスターセッション」
- まちづくり4「本当にまちづくりは必要だろうか」
- まちづくり5「未来の町をデザインしよう」
- まちづくり6「町の方々に発表を聞いていただく」
- 愛島は暮らしやすいか?
- 竹やタケノコを調べよう
- タケノコ料理を作ろう
- お年寄りの方々にコンピュータを教える
- 伝統工芸をお年寄りの方々と一緒に作ろう
- 第4章 地域学習を支える四つのポイント
- 1 子どもから情報を得る
- 2 保護者や地域の人の協力を得る
- 3 教師自身が地域を知る
- 4 地域の財産を共有財産にする
- あとがき
まえがき
一枚の写真を差し出した。
農家の小屋の中の写真である。
「えっ? これは、どこ?」
相手をかえて、同じ写真を見せた。
「この中にあるものは何?」
何の写真なのかわからない。何が写っているのかもわからない。
この農家の小屋は、学校のすぐ近くである。近くであっても、目にすることは稀である。
この写真に写っているのは、田植え機、肥料、機械オイル、動力散布機、畔根刈り機、ビールケース、石油ストーブ、耕耘機………等である。
写真の中央に四本の石油ストーブが立っているが、これがハウスの中で使われているということを聞き、驚いた。
写真を見た職員の中で、正解を出した者は一人もいなかった。
地域には、見たことがないもの、知らないものがたくさんある。
地域の特色を知らなくては、授業をつくることはできない。
地域の特色を生かす総合的学習を組み立てるには、地域の特色をつかむことが大前提となるのである。
第2章に「地域学習のネタ・テーマ探しのコツ」として、六つのコツを示した。
先に示した農家の小屋の中の写真もこのコツによって、撮ることができた。そして、授業「お米は石油製品です?」(『「エネルギー教育」の実践プラン』竹川訓由・菅原光敏著 一九九九年 明治図書 五〇ページ)を組み立てることができたのである。
六つのコツを是非、参考にしていただきたい。
ところで、この六つのコツの後に次のようにある。
私は、この六つのコツで、都市(まち)づくり教育「未来の中新田町」という実践を行った。
ここに、「まちづくり」という言葉がある。
地域の特色を生かす総合的学習には、この視点がなくてはならない。
第1章に次のように書いた。
ここから一つの授業プランが誕生した。
わたしたちの町は、車椅子にやさしい町になっているだろうか
という授業である。
子どもたちは実際に町に出かける。点字ブロックをたどる。段差の具合を確かめる。そして、自分たちの町づくりを考えていく。
福祉・健康などの横断的・総合的な課題に興味をもち、取り組むのである。
そして、子どもたちは、「こんな町にしたいね」と夢を描くのである。
子どもたちからは、いろんな声が出てくる。
「お米は、石油がなくては作れないのだろうか」
「段差が多い歩道はなおせないのだろうか」
「老人ホームのお爺さんやお婆さんにもっともっと喜んでほしいなあ」
「昔話のことで、もう一度、お爺さんのところに遊びに行きたいね」
「あの橋は、凄く大切なんだね。でも、狭いよね。広くなったら、いいよね」
地域の特色を生かした学習によって、子どもたちは、地域を見つめる。地域を歩き回ることで、多くのことを発見し、多くのことに驚く。地域の素晴らしさも実感する。
そして、よりよい「まちづくり」の夢を描くようになる。
本書がそれに大いに役立つことを願っている。
2000年7月 /竹川 訓由
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- 明治図書