- まえがき
- 第1章 なぜ,今興味・関心を生かす「体験活動」の実践が必要なのか
- 1 試行錯誤の体験
- 2 「総合的な学習の時間のねらい」と「教育課程の基準の改善のねらい」
- 第2章 子どもの興味・関心を生かす体験活動の組み立て方
- 1 子どもの興味・関心をつかむ努力を続ける
- 2 「組み立てる」のは子どもではなく教師である
- 3 体験活動の目標をたえず意識する
- 第3章 「国際理解&英会話教育」体験活動実践プラン
- 『わたしの英語辞典』を作ろう(3〜6年)
- 給食時間に英単語の学習をしよう(1・2年)
- ホームページを利用した英会話学習プラン(5・6年)
- 英語で朝の会をしよう(4〜6年)
- 英語で会話とスピーチをしてみよう(4〜6年)
- 英単語と基本文型を教えよう(4〜6年)
- 第4章 「情報・コンピュータ教育」体験活動実践プラン
- 我が家のお正月飾りを作ろう(3〜6年)
- 合宿の新聞を作ろう(5・6年)
- めいしを作ろう(4〜6年)
- こども学級通信を作ろう(4・5年)
- おばあちゃんの知恵袋(5・6年)
- 草木染めをしよう(5・6年)
- 特ダネです(3〜6年)
- 第5章 「福祉・健康・ボランティア教育」
- 体験活動実践プラン
- 車椅子で買い物に出よう(5・6年)
- お年寄りといっしょに「すいとん」を作って食べよう(5・6年)
- 老人福祉センターを体験しよう(5・6年)
- 交流学級で取り組む「花いっぱい」活動(特殊学級,交流学級)
- 「ボランティアセンター」を体験しよう(3〜6年)
- 介護のお手伝い(3〜6年)
- 第6章 「環境・エネルギー教育」体験活動実践プラン
- 待機電力を調べよう(3・4年)
- あなたの家も地球温暖化の原因か?(5・6年)
- 地球温暖化問題を考えると省エネが見えてくる(5・6年)
- 街角ウォッチング(4〜6年)
- EMによる体験活動(4年)
- 第7章 「町づくり学習」体験活動実践プラン
- 未来の愛島をデザインしよう(6年)
- 市長さんになろう(4〜6年)
- 第8章 「地域学習」体験活動実践プラン
- 町のお宝マップを作ろう(3・4年)
- 史跡巡りポイントチェックハイキングをしよう(全学年)
- 岡崎さんの秘密 四郎丸の達人を探せ!(3・4年)
- 第9章 「体験学習」を実践するための4つの支え
- 1 授業の原理原則
- 2 教師の行動力
- 3 周囲の人々の協力
- 4 時間の確保
- 5 補足〜念のために〜
- あとがき
まえがき
工務店経営の教え子から電話が入った。
住宅設備の展示会に一緒に行ってくれないかという内容であった。人集めの義理もあり,是非,お願いしたいというのである。
教え子の頼みである。なんとかきいてあげたい。
それに,(このような住宅設備関係の展示会,車で1時間かけて自ら進んで行くということは,まずありえない)と思ったので,参加を了解した。
『ところで,住宅設備って,例えば,どんなものが展示されているの』
教え子は,いろいろ説明してくれた。ドア・フェンス・門扉・外壁・ユニットバス・キッチン・屋根瓦・階段・トイレ………。
この説明の中で,次のことばが出てきた。
「バリアフリー」
その瞬間,(そうか,ラッキー)と思った。すぐにデジカメを準備した。
会場に入った。
ゆっくり見て回った。
まもなく,車椅子が目に入ってきた。
(これだ)と思った。そこには,エイジフリーということばがあり,車椅子使用の図とともに次のようなことが書かれてあった。
【車いすでも使いやすいキッチンを考えました。】
◆座ったままでも手が届きやすく,足腰に負担をかけない収納位置を考えました。
◆カウンターの高さを台輪の高低で調整。調理や後片づけがゆったり行えるちょうどの高さをお選びいただけます。
(エイジフリー,なるほどなあ)と思いながら,車椅子に座った。
実際に,キッチンに向かってみた。
すると,車椅子に座ったままで,水栓や排水部にも,さらにすぐ上の収納棚にも楽に手が届くのである。
一般的なキッチンとは違って,シンクや調理機器の足元が空いている。シンクの深さも浅型設計になっている。また,収納棚も引き出して使えるようになっているのである。
車椅子に乗ったまま,一般的な高さの足元の空いていないキッチンに向かってみた。
使えない。
足元が空いていないので,正面を向くことができない。必要な部分に手が届かない。
エイジフリーという商品のカウンターの高さを測ってみると,75cmである。立って使う商品の方は,85cmであった。
たった10cmであるが,随分大きな違いである。
(このキッチンは,凄い! よくできているなあ)と感心した。
車椅子に乗って,実際にキッチンを移動して,エイジフリーなる商品の使いやすさを実感した。そして,立って使う一般的なキッチンの不便さの発見もできた。
さらに会場を回った。
次は,お風呂場である。
ここでも,段差をまったくなくした設計になっている。車椅子でも,そのまま浴室まで移動できる。しかも,車椅子の状態で,必要な部分のすべてに手が届くのである。
会場には,車椅子体験コーナーもあり,通りやすい通路幅や段差などを実際にシミュレーションすることができた。
最後に,次のコピーが印象に残った。
「誰もが主役になって活躍できるキッチンが実現できます」
一本の電話から,貴重な体験をすることができた。
えっ? バリアフリー!?
この一言で,展示会場への興味・関心が一気にわいてきた。
バリアフリーをどのように取り上げているのか,その場所に真っ先に行きたい気持ちでいっぱいだった。
お目当てのコーナーでは,早速,体験をした。
見れども見えずを実感した。
子どもの興味・関心を生かす体験活動もこれと同じである。
ただ,子ども達の興味・関心をどう生かすかも大きなポイントとなる。
子ども達の興味・関心を生かすということは,次の3点についても関わっているということである。
(1)子ども達の興味・関心をどう引き出すか
(2)子ども達の興味・関心をどう見付け出すか
(3)子ども達の興味・関心をどう広げるか
このことについては,第1章および第2章で取り上げた。
そして,子どもの興味・関心を生かす体験活動実践プランを6つのジャンル(国際理解&英会話教育/情報・コンピュータ教育/福祉・健康・ボランティア教育/環境・エネルギー教育/町づくり学習/地域学習)に分けて示した。
本書がこれからの体験活動の実践に少しでも役立つことを願う。
2000年4月2日 /竹川 訓由
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- 明治図書