- まえがき
- T章 見えない《生活ルール》見えていますか?
- 1 《生活ルール》は「見えない」
- §1 《生活ルール》は「規則」ではない
- §2 《生活ルール》は「見えない機能」
- §3 たとえば,「朝の会」のプログラム
- 2 《生活ルール》を「感じている」
- §1 「子どもが怖い」
- §2 「自ら学ぶ授業」の秘密
- 3 《生活ルール》の出口とは?
- §1 自律なくして自立なし
- §2 「管理型」「なれあい型」学級経営
- §3 出口は「自律」
- §4 出口は「協働」
- 4 《生活ルール》の入り口は?
- §1 日常の些細なことの指導
- §2 「自律」は「ていねいさ」
- §3 「自分たち律」の協働は「優しさ」
- U章 《生活ルール》何をどう指導するのか?
- 1 「毅然さ」から「安心感」を創りだす《生活ルール》
- §1 「二つの約束」…《生活ルール》の根幹
- §2 一つの宣言「侮蔑・差別の拒否」
- §3 想定外だから「事故」
- §4 教師用《生活ルール》の根幹「ほめる」
- 2 秩序を見せて「安定感」を創りだす《生活ルール》
- §1 思わず「あっ,きれい」の靴箱の靴の入れ方
- §2 「模倣する」ロッカーの使い方
- §3 「どうぞ・ありがとう」の共用ロッカー
- §4 「使わない」机のフックの使い方
- §5 「位置・順序」机の中の整頓
- §6 「いい加減・ていねい」が見える机の並べ方・基礎
- 3 「ひと手間」かけて「優しい一日」を創りだす《生活ルール》
- §1 日直を「ひいき」する
- §2 日直の朝は先生とデート
- §3 朝の会の返事が「バナナ」
- §4 休み時間…黒板の消し方 縦? 横?
- §5 授業…ノートの「初歩の初歩」
- §6 授業前…声の大きさ「内緒話」
- §7 プリントの配り方…優しさが見えてくる
- §8 配布されたプリントをどうする?
- §9 給食の時間…配膳は「一方通行」
- §10 給食の時間・会食…落ち着くまでは基本形
- §11 給食の時間・片付け…「心」を届ける
- 4 「けじめ」を創りだす《生活ルール》
- §1 授業開始1分前 その@ 授業の準備・机の上
- §2 授業開始1分前 そのA 日直の準備
- §3 授業開始 その@ あいさつ
- §4 授業開始 そのA 言葉遣い
- §5 授業開始 そのB 名前の呼び方
- §6 授業開始 そのC 姿勢
- 5 「集中」を創りだす《生活ルール》
- §1 「先生の話」の聞き方
- §2 「先生の話」を聞いていない子がいたら
- §3 発言 その@ 挙手
- §4 発言 そのA 発言の姿勢
- §5 発言 そのB 発言パターン・基本形
- §6 発言 そのC 発言パターン・改善形・発展形
- §7 発言 そのD 発言の聞き方
- §8 授業中の離席…教卓での個別指導
- 6 「作戦タイム」で「真剣さ」を創りだす《生活ルール》
- §1 机の並べ方・発展 「対面型」
- §2 机の並べ方「対面型」の構造…「班・グループ」
- §3 「対面型」での話し合い…「作戦タイム」
- §4 「対面型」での「A 作戦タイム・隣近所」
- §5 「対面型」での「B 作戦タイム・班のフリートーク」
- §6 「対面型」での「C 作戦タイム・みんなで会議」
- §7 「みんなで会議」は「班の結論」,「個人の参考」?
- §8 発言・話し合いの前に…自分の意見・考え
- 7 学級に「居心地」を創りだす《生活ルール》
- §1 生活班の編成…人数
- §2 生活班の「役職」「班内係」…みんな班長?
- §3 生活班の座席…「班」で座る
- §4 生活班による日直担当制
- §5 班長会議の会食
- §6 班の活用…「班指名」「作戦タイム」
- §7 実行委員会方式・プロジェクトチーム方式
- 8 「非日常」に「洗練」を創りだす《生活ルール》
- §1 教室外での整列・集合
- §2 扇型自由隊形
- §3 校外での整列・集合 基礎編
- §4 校外での整列・集合 ワンランクアップ編
- §5 校外での整列・集合 洗練編
まえがき
《生活ルール》で学級が変わる…学級の何が変わるのか?
◎ 学生からのメール「ていねいに生きる」
本書の資料収集を学生に手伝ってもらった。それが終り家に帰ったら,学生から「今日の感想」のメールが届いた。その一節にこうあった。
「『ていねいに生きる』という話,とても良かったです」
資料収集ではあるが,学生の勉強にもなるだろうと《生活ルール》のいろいろなことを話しながら作業した。その中の一コマではあろうが,当の私がおぼえていない。でも,「ていねいに生きる」いい言葉だなあ…そう感じた。
《生活ルール》の本質は「ていねいに生きる」,核心を突いた表現だ。本書に書き表したいのも「ていねいさ」である。
◎ お風呂の脱衣
お風呂に入るため,服を脱ぐ。そこには洗濯機がある。脱いだ服はその洗濯機に入れておく。そのときどうするか。
服を脱ぐと裏返しになったり,袖が中にもぐりこんだりする。そのまま洗濯機に放り込むのではなく,裏返しになったものを表にする,袖を元に戻す。それから洗濯機に入れる。脱いだ衣服は洗濯機に入れるという《生活ルール》にひと手間かけた。これは「ていねい」な動作である。
その「ていねい」は何のためなのか。
洗濯し干し,乾いたら取り込む家族がいる。その家族のことを思いやった。家族が袖を元に戻して干す,裏返しの服を表にしてたたむ,という手間を省けるように手伝ったのである。それは,毎日洗濯をしてくれる家族への気遣い,思いやりであり,ささやかな感謝の印である。
「ていねいに生きる」とは人への優しさであり,それが《生活ルール》の本質である。本書が「ていねいさ」にこめて伝えたいのは「優しさ」である。
◎ 「未使用の画用紙」は「学級の荒れ」の予兆
今度は逆の例をあげてみよう。
「床のあちこちにものが落ちている」は,学級の荒れの予兆である。特に,落ちていて「危険なもの」がある。それは「学校からお知らせ・プリント・未使用の画用紙」等である。「学校のお知らせ・未使用の画用紙」はごみではない。だれかが使う「落し物」である。これは危険信号である。何が危険か。
ものが落ちていても「拾って『誰の?』」という行動を起こすことに,子どもたちは躊躇,恐れを感じ始めているのである。「拾って『誰の?』」という真っ当な行動が「余計なこと・いい子ぶりっ子」と悪意にしかとられない人間関係悪化の予兆なのである。
「落ちているものを拾い,持ち主に渡してあげる」というごく当たり前の《生活ルール》が機能していない。「落し物があっても拾わない」という暗黙の《生活ルール》が定着してしまった。
◎ 「荒れ」とは「ていねいさの剥落」
逆に言えば,「落ちていたものを拾い,『誰の?』と探す」という《生活ルール》の確立は「学級に良好な人間関係が存在している」という証左である。
その逆,「ごみを拾わない,日直の仕事をしない,あいさつをしない」など「いい加減さ」の頻発が,学級の荒れである。学級の荒れとは「ていねいさ」の剥落である。
笑顔,「おはよう」,「ありがとう」,「ごめんなさい」…そんな当たり前のこと,ていねいさ・優しさがこめられた動作,動きを誘う《生活ルール》が確実に息づく学級生活を創り出したい。
◎ 書名「良質な学級生活を創る」には?
「ていねいさ」と「優しさ」を学級に創りだす具体的な指導の内容と方法を本書に書き表したつもりである。だが,本書が成果を生み出すには,「いい学級にしていきたい」という先生方の熱意が不可欠の要素である。学級を変えるのは先生方の熱意である。
そういう意味で,先生方の熱意と本書の協働作業によって「学級が変わる」ならば,望外の喜びである。
平成23年5月 著者 /松永 昌幸
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- 明治図書
- 基礎の確認として良かったです。2022/12/2740代・中学校教員