- まえがき
- T 特別支援体育──低学年
- §1 走・跳の運動
- 1 準備運動は,次々とテンポ良く
- 2 教師が参加し,調整する
- 3 勝負にこだわらせない
- §2 力試しの運動──「見通し」と「イメージ化」さらに「段階的指導」が有効である!
- 1 ピアサポートの考え方を導入する
- 2 さか上がりに挑戦する
- 3 縄跳びに挑戦する
- 4 ダンス指導にビデオを導入する
- 5 勝敗結果を納得させる
- §3 力試しの運動──型を決め,繰り返す
- 1 特別支援の子どもへの対応の基本
- 2 実際の指導
- §4 鬼遊び──体のコントロールは,心のコントロール
- ──姿勢や動きの自己コントロール力を高める,鬼遊び指導のポイント──
- 1 身体の動き
- 2 ルールの把握
- 3 コミュニケーション
- §5 ボール投げ遊び──ほめて参加させ,変化のある繰り返しと個別評定で上達させる
- 1 効果のない指導と効果のある指導のポイント
- 2 指導の実際
- §6 ボールけり遊び──どの子も楽しめるドンジャンボールで遊ぼう
- 1 やり方
- 2 指導法
- §7 模倣──「変化のある繰り返し」と「褒め言葉」で楽しい動物園ごっこをしよう!
- 1 単 元
- 2 目 標
- 3 授業の流れ
- 4 成果と課題
- §8 水遊び──ポイントは安心感を与えること,ほめること
- 1 頭を水につけることができない子への指導
- 2 浮くことができない子への指導
- U 特別支援体育──中学年
- §1 マット運動──基本の徹底と局面を限定した練習で後転ができるようになる
- 1 基本を徹底させる
- 2 局面を限定して練習させる
- §2 鉄棒運動──運動を分解して指導する!
- 1 協応動作
- 2 運動を分解して指導する
- §3 跳び箱運動──スモールステップと評定で特別支援の子どもも夢中になった
- 1 両足で踏み切れない子ども
- 2 勢いよく飛んでしまう子ども
- §4 バスケットボール型ゲーム──局面を限定した動きで意欲を高める
- §5 サッカー型ゲーム──全体を動かしてから個に対応
- 1 授業で見られる様子
- 2 授業全体を考える
- §6 ハンドベースボール型ゲーム──スモールステップによる習熟とルールの工夫でどの子も熱中する!
- 1 「投げる」運動の習熟
- 2 「打つ」運動の習熟
- 3 ゲームの工夫
- §7 表現──支援を要する子どもが活躍できる表現運動
- ──つまずきの原因を見極めた指導,言葉かけ──
- 1 恥ずかしいと強く感じる子どもへの指導
- 2 動き方が分からないという子どもへの指導
- 3 動きにメリハリをつけたいときの言葉かけ(ここでは大小)
- 4 友達と協力して動き作りができないという子どもへの指導
- §8 水泳──手のかきを一時一事の原則で
- ──クロール──
- 1 一時一事の原則で
- 2 授業のパターンを決める
- 3 プールサイドでの指導
- 4 その他
- V 特別支援体育──高学年
- §1 短距離走・リレー──「荒れる,逃げだす,騒ぎ出す」すべての原因は自分にあった
- 1 短距離走――効果のない指導
- 2 短距離走――効果のある指導
- 3 リレー――効果のない指導
- 4 リレー――効果のある指導
- §2 走り幅跳び──反抗挑戦性障害気味のA君が親善陸上記録会で活躍!
- 1 学年一の厄介者A君
- 2 運動パーツごとの効果のあった指導と効果のなかった指導
- 3 「先生の言う通りにすると跳べるようになる」と思わせる
- §3 走り高跳び(はさみ跳び)──変化のある繰り返しで走り高跳びに必要な基礎技能を身に付けさせる
- 1 リズム太鼓に合わせたスキップで足裏全体での踏み切り感覚を身に付けさせる
- 2 フープ跳びで左右どちらの足で踏み切るのがやりやすいか見つけさせる
- 3 ロープ跳び越しで,走り高跳びの助走とジャンプのタイミングをつかませる
- 4 3歩助走からマットへの跳び乗りで,振り上げる足と抜き足を身に付させる
- §4 ハードル走──「局面の限定」でハードルを指導する
- 1 4つの指導の留意点
- 2 ハードル走の指導
- 3 指導の実際(第1時)
- 4 指導の実際(第2時)
- §5 体力づくり──はげましと個別評定で意欲を持たせる
- 1 体の柔らかさ及び巧みな動きを高めるための運動
- 2 力強い動き及び動きを持続する能力を高めるための運動
- §6 体力づくり──時間差を生かせ。テンポ良く進めろ
- 1 全員そろうまで待たない
- 2 短い運動を次から次に繰り出せ
- §7 体ほぐし──楽しく交流できる! 風船を使った体ほぐし
- 1 特別支援教育対象児童への配慮
- 2 指導の実際
- §8 跳び箱運動──終末局面からの指導によって,あの子も跳び箱が跳べるようになった!
- §9 跳び箱運動──細かいステップを用意し,小さな成功体験を積み重ねる
- ──向山式跳び箱指導法は特別支援を要する子にもやさしい指導法──
- 1 放課後の挑戦
- 2 Yちゃんの実態
- 3 向山式跳び箱指導法で挑戦
- §10 鉄棒運動──できるようになるまで場をつくり変えて,成功体験を保障する
- 1 場づくりは「安心第一」
- 2 体と接する面積を増やす
- 3 手を着いて回る
- 4 マットを短くして,空間をつくる
- §11 バスケットボール
- 1 効果のある場づくり
- 2 効果のある授業の組み立て方
- §12 サッカー──シンプルに授業を組み立て見通しを持ちやすくすること
- 1 特別支援体育授業の原則(仮説)
- 2 効果のある指導その1
- 3 効果のある指導その2
- 4 効果のない指導
- §13 表現──この言葉かけで子どもが動く!
- 1 題材「祭り〜太鼓〜」――一人で
- 2 題材「祭り〜太鼓〜」――グループで(4〜6人)
- §14 表現──SAMURAI─侍─ソーランを成功させる7つの指導ポイント
- 1 効果のない指導
- 2 効果のある指導
- §15 水 泳
- 1 水への恐怖心を取り除く
- 2 見通しを持たせる
- 3 指導の実際
- あとがき
まえがき
特別支援の子どもに,目線を送りながら,全体を集合させる指示の場面になり,次の指示をしたそうです。「3メートル以内に集まりなさい」。
また,バスケットボールのサークルを使い,集合させたそうです。体育座りをさせましたが,特別支援のA男はできなかったといいます。きちんとできている子どもを褒めてもできなかったのです。
特別支援の子どもには当然指示が通らないのです。では,どのような指導を行ったら効果的なのでしょうか。
山梨県の雨宮久氏は,「ステップを小さくすることと体感することを取り入れる」と報告しています(『TOSS体育通信NO.219』)。具体的な方法として跳び箱の事例を紹介しています。
@ 評定のステップを小さくする。
ア ゆっくりできているか
イ 腕がまっすぐか
ウ おしりが跳び箱にさわらないで着地するか
エ 手首より肩が前にでることがあるか
A 基本を徹底させる。
ア ケンパー跳び
イ 前回し跳び(一回旋一跳躍)
以上の指導は効果があったといいます。評定のステップを小さくして,基本を徹底することにより,動きができるようになったのです。
本書では特別支援の子どもの体育指導で効果のある指導,効果のない指導を具体的な指導場面に即して紹介してあります。
障害児学級で「なわとび」の指導をしたことがあります。私が主に指導して,担任の先生が補助をしてくれました。
補助運動ではトランポリンやラダー,竹の教具をつかって学習しました。普段の学習の中で行っている内容です。瞬発力や調整力,リズム感などを養う運動で,なわとびの動き作りの活動につながっているのです。
次になわとびの学習になりました。最初にフープとび縄の指導を行いました。フープとび縄は高畑庄蔵氏が開発されたすばらしい教具です。
床にフープがついたときの感覚を感じることができます。目で見て,手で感じることのできるすばらしい教具です。
「バシン,トン。バシン,トン」と擬音語をつかって指導していきました。「目」と「手」に加えて,「音」という感覚を意識させて指導していきました。すると子どもは見事に跳ぶことができました。
次に「むこうまでいこう」という指示をしました。前に跳ぶことを意識させ,フープがジャンプした下を通りやすくなるための指示でした。
場所を指定することで目標が明確になるようにしたのです。そして,できたことを大きく褒めていきました。
このような的確な指導によって,「不可能だ」と思っていた子どもが跳べるようになったのです。
本書では以上のような特別支援の体育指導で効果のあった事例が紹介されています。特別支援の体育指導は普通学級での体育指導でも役立ちます。
本書を活用されて,体育の好きな子どもにしていってほしいです。
平成20年6月 /根本 正雄
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- 明治図書