- はじめに
- 第1章 ことばの発達の支援<S−S法>の考え方
- 1.言語発達の遅れの要因
- 2.言語行動の3領域
- (1) 記号形式―指示内容関係の発達段階
- (2) 基本的プロセス
- (3) コミュニケーション態度
- 3.症状分類
- 4.検査の構成
- 【資料】検査材料
- サマリー
- 第2章 ことばの発達の支援の方法
- ―課題別個別学習・小集団学習・日常生活指導の中で―
- 1.指導目標の設定
- 2.ことばの発達の支援の方法
- A 重度の発達遅滞があり言語未獲得の児童の場合
- 解説 ことばをまだ獲得していない児童の指導
- B ことばの理解はできるが話さない児童の場合
- 解説 単語の理解が可能だが話せない,あるいは幼児語や単語の一部が話せるようになった児童の言語指導
- 解説 理解力は高いのに発語がない児童の言語指導
- 解説 動作語・色名・大小の語彙学習
- C 語連鎖の理解も表現も可能で全体に発達を促したい児童の場合
- 解説 2語連鎖の指導
- D 文字学習に取り組みたい児童の場合
- 解説 文字学習の進め方
- E 言語発達の段階はかなり高いのに,会話がよくできない,行動のコントロールが困難な児童の場合
- 解説 会話や気持ちを表現することを促すには―会話の指導―
- 3.日常生活と言語発達段階の関係
- 【文献】
- 【資料】指導のための児童の日常生活状態チェックリスト
- 第3章 矢口養護学校小学部の実践
- ―言語とコミュニケーションの発達―
- はじめに
- コラム 文脈依存,非依存
- 事例1.簡単な指示理解と要求の表現を獲得していった児童
- 事例2.特定の要求を写真カードで伝えられるようになった児童
- 事例3.カードを使って自分の要求を相手に伝えたり,相手の要求を理解できるようになった児童
- 事例4.自分の要求を言語で伝えたり,相手の要求を言語で理解できるようになった児童
- コラム ことばを話さない児童で考慮すること
- 事例5.文字カードを通して事物名称・動作語・色・大小比較を理解した児童
- コラム 周囲への関心を育てるには
- 事例6.“自分が何をすればよいのかがわかる”ということが落ち着きにつながった児童
- コラム TEACCHとは
- 事例7.文字音声ボードによるコミュニケーション手段を獲得した児童
- 事例8.写真や絵,文字を通して気持ちや行動のコントロールができるようになった児童
- あとがき
- 【執筆者紹介】
まえがき
<S−S法>は,言語聴覚障害の領域で臨床的経験を基に作り上げられてきた我国オリジナルの言語発達障害児・者の評価・訓練・指導アプローチです。医療,福祉領域で働く言語聴覚士の間では,かなり使われているのですが,教育の現場では知られていないことが多いと思います。養護学校や特殊学級のお子さん達に学校という生活の場で<S−S法>を使えたら良いなあという思いは強く私の心の中にあり続けていました。1993年(平成5年)都立調布養護学校の飯野先生,山田先生から小学部でことばを学部研究会のテーマに取り上げたので,<S−S法>の考え方などについて話して欲しいという依頼を受け,これは渡りに船とばかりお誘いをお受けしました。調布養護学校で私も初めて養護学校との持続的な関係を数年持たせていただき色々勉強させてもらいました。2001年矢口養護学校に調布養護から移動なさった山田先生と同僚の宮越先生から「小学部で認知・言語の発達について研究することになり,ついては<S−S法>について講義をするように」というお誘いを受け,これで又養護学校での経験が出来るととても嬉しく思いながらお引き受けしました。研究においてはその後,年度ごとにテーマを持ち事例を積み重ねてきました。それらをまとめてみよう,養護学校や特殊学校で毎日悪戦苦闘している先生方のお役に立てるかもしれないと思い出来上がったのが本書です。
本書は3部構成になっています。第1章は<S−S法>についての紹介,第2章は発達段階別の具体的な働きかけかたに関するもの,そして第3章は矢口養護学校小学部の先生方の事例紹介です。
日々の指導の中で困った時,本書を見てその解決の糸口が得られるような本にしたいというのが著者達の願いです。
2005年12月 /倉井 成子
そこで述べられているように<S−S法>は海外輸入でなく日本の言語プロが日本語のために作られたものであるためか,助詞や語順など日本語にあった指導について記載されていて,なるほど,と思いました。もちろん助詞などの指導ができるのは軽度の子なのですが,学ぶのは日本語!を実感させられました。
ことばのない重度の子についてもコップ(実物)を見せて「牛乳のむ?」の言葉がわかるかわからないか,と発語の前段階を状況把握できるかどうか分けて指導方法に触れているのに関心させられました。参考になります。
一見,同じに見える「ことばのない子ども」であってもきちんと<S−S法>の考えを知り,アセスメントすることで指導方法が大きく変わること,子どもがいきいきと成長する様子を拝見しました。
この本には<S−S法>の基本的な考え方と矢口養護学校でされた個別指導・小集団指導・生活指導の実践がしっかりまとめられていおり,自分の学校での指導に役立てたいと思います。