- まえがき
- 序章 「生徒が選んだトリガーフレーズ」
- T 「困難」を「楽しく」に変えるきっかけフレーズはこれだ!
- 1 どんな困難も「楽しい」に変える考え方をフレーズにする
- @ 良い考え方を書き続ける
- A 「どうしたら……」と考え、動き続ける
- 2 たった一人の生徒をやる気にする=信頼を勝ちとる地道な作業を続ける
- @ 学級担任の熱が伝わる
- A 日記のコメントで学級担任の微熱を伝える
- 3 学級はすぐに変わらない
- 4 生徒がお互いの日記のコメントを見せ合うようになる
- @ 日記に長いコメントを書く
- A 生徒に担任の考えをコメントする
- U 良い考え方を習慣になるまで伝え続けるコツ
- 1 教科で励まし続ける
- 2 生徒の日記で励まし続ける
- 3 短学活で学級の対応をコメントする
- 4 番外編〜考え方を伝えるのは言葉だけではない〜
- V この場面で、このフレーズが効果的!
- 1 合唱練習をやる気にするトリガー
- 2 スポーツイベントをやる気にするトリガー
- 3 掃除をやる気にするトリガー
- 4 給食の配膳をやる気にするトリガー
- 5 友達関係を良くするトリガー
- 6 クラスを良くするトリガー
- 7 学年を良くするトリガー
- 8 日常生活を良くするトリガー(美しい姿)
- 9 勉強をやる気にするトリガー
- 10 受験をやる気にするトリガー
- 11 もう一人の自分に克つことを教えるトリガー
- 12 もう一人の自分に向き合わせるトリガー
- 13 継続の大切さに気づかせるトリガー
- 14 授業でやる気を起こすトリガーフレーズ
- W どこでどんな発信がベター&ベストか
- 1 エピソードを語る+良い考え方を話す
- 2 学級のドラマをコメントする
- 3 学級通信でコメントする
- 4 学級担任の体験を例にコメントする
- X 教師と生徒=決め手のトリガーフレーズ
- 1 教師だから生徒の生活をリンクできる
- @ 生徒の姿と生徒の生活をリンクする
- A 生徒の思いと生徒の思いをリンクする
- 2 生徒との関係作りが一番苦労する〜迎合しない〜
- 3 関係は一人一人と作る
- 4 励まし続ける。コメントし続ける
- Y やる気にするにはこんなパフォーマンスも必要!
- 1 見つめてコメントする
- 2 微笑んで生活する
- 3 声をかける
- 4 上品に接する(褒める)
- 5 一度は受け入れる(触れる)
- 6 生徒を見続ける(生活・言葉・かかわり)
- Z あなたの言葉が、生徒に響く尊敬される条件
- 1 誰でもできる当たり前のことを続ける
- 2 言ってきかせて、やって見せる〜教師が言ったことをまずやって見せる〜
- 3 わかるできる授業の実践
- 4 褒めて、褒めて、褒める
- 5 教師が見栄を捨てる〜生徒の成長をただ願う〜
- 6 教師が良い考え方を身につける
- 7 あきらめない姿を見せる
- 8 生徒を伸び伸び育てる
- [ 信頼される教師へ=ハヤ道・チカ道はある?!
- 1 中学生は教師のやる気を見抜く〜中学生が信頼する教師になる〜
- 2 教師が言ったことをやらせる
- 3 たった一言で中学生は変わらない
- 4 良い考え方をシャワーのように浴びせる
- 5 教師としての二つの考え方を身につける
- あとがき
まえがき
「トリガー」とは銃の引き金のことを指し、「きっかけ」という意味でも使われています。
中学生はとてつもない力(可能性)を秘めています。その可能性を引き出すのが教師の仕事です。
そして、可能性を引き出すきっかけ(トリガー)を作るのが教師の激励です。
私は、生徒たちを毎日激励してきました。
生徒には、良い考え方を毎日伝えたいと思いました。
全ての生徒に幸せな人生を歩んでほしいと思っています。
このようなことを毎日毎日、生徒たちにシャワーのように浴びせ、話したいと思っていました。
私が行ってきた生徒への激励と良い考え方を伝える方法の中心は次の三つです。
@ 朝の会・帰りの会の語り
A 日記へのコメント
B 学級通信・学級日誌
卒業を間近に控えた今、私の学級の生徒たちは、朝の会・帰りの会の教師の語りをシーンと聞いています。しかし、はじめから静かに聞いているわけではありませんでした。学級通信を読むときも生徒は学級通信を手に持って、シーンと聞いています。これも、はじめからこのような姿勢ではありませんでした。急にこのようになったわけではないのです。
信頼される教師になるための日々があり、生徒が耳を傾けてくれる関係を作るのに多くの時間を費やしました。
例えば、日記へのコメントはその子だけへのラブレターだと思って毎日書き続けました。だから、生徒もそのつもりで私の考えを大事に受け止めるようになりました。学級通信も一日も欠かさず毎日書き続けました。掃除も毎日生徒と一緒に行いました。
このようにして、生徒たちと毎日共に過ごす中で、生徒たちを激励し続け、良い考え方をシャワーのように浴びせてきました。
それは砂に水をかけ花を育てるようなあてのない、果てしない作業に思えました。
この子たちは本当に変わるのだろうか……。こんなことをしても生徒には何も伝わらないのではないか。私が行っていることは無駄なことではないだろうか……。
このような考えに毎日襲われ、あきらめそうになることが何度もありました。
向山洋一氏が言われた、二つの教育哲学を毎日ノートに書き続けました。それを支えにし、果てしのない作業を続けることができました。
向山洋一氏の二つの教育哲学とは、次のものです。
・どの子も大切にされなければならない
・どの子も可能性を持っている 一人の例外もなく
生徒たちに言い続けた言葉(トリガーフレーズ)をいくつか紹介します。
〈生徒会の仕事で疲れや自分への自信をなくしそうになった生徒への言葉〉
逃げたいよね。それもわかります。そして、こういう弱音をはきながらも○○は、何とかやってしまうこともわかりました。これで良いのだと思います。人間の弱さをみんな知っているから弱音もはくし、グチもこぼすのだと思います。それでもみんな、何とかやっているんです。そのことを感じます。力を出し切れ。
〈悩みの相談を日記へ書いてきた生徒へ〉
悩むことは大事です。悩まない人間は成長しません。悩むってことは、目の前のことに本気ってことなんです。生きることに真剣だから悩むのです。
〈やっても無駄と思っている生徒に〉
僕はいつも「ダメでもともと」だと思っています。大切なことは、次のことを忘れぬことです。何もせずにいるのは、チャレンジしないままでいるということです。一生懸命にやって、それでも失敗してしまうことがあり、だからいいんじゃないかな…と思っています。やれるだけのことをやって、結果がでなかったら改善していくこと。すこしでも工夫して、良いものを目指していくだけです。悩まない人間は成長しないから、悩みや不安とは上手につき合っていくしかありません。ダメでもともと。一番ダメなのは何もしないことです。それから悩みを一人で抱えないこと。先生に話してください。そして家族にも話してみてください。僕には悩みや不安を取り除くことはできませんが、一緒に考えていくことはできます。
あてのない、果てしのない作業を続ける中で、「どの子も可能性がある」ということ。そして「それは、一人の例外もない」ということを実感することができるようになってきました。「どの子も大切にされなければならない」ということの意味も実感できるようになってきました。
どんなに荒れている中学生でも必ず変わることができるのです。どんなに手のかかる中学生でもやる気になるのです。
そして、そんな生徒たちとの関係作りが、やる気に満ちた学級を作っていくことも実感できました。
とんでもない生徒たちと過ごした二年間(二〇〇九年、四月〜二〇一一年、三月)。この二年間、毎日毎日、生徒たちに声をかけ続けました。「学級担任である僕があきらめたら、生徒がやる気になるはずがない」と自分に言い聞かせてきました。
生徒たちに、かけ続けた言葉のほとんどが、実は自分への激励の言葉だったようにも思います。
「言霊」
言葉には魂があると言われます。しかし、同じ言葉であっても、誰が、誰に向かって言うのかによってその力は違うと思います。
読者の皆様は、一人の例外なく、言霊を発することができる力を持った教師になる可能性があります。そのようなことを一人でも多くの教師に知ってほしいと願っております。シェアしましょう。
/垣内 秀明
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- 明治図書
- 中学校勤務の時に購入しました。担任ではないクラスの授業に困っていたときでした。「教師が一人の例外もなく、どの子も見捨てないこと。そのためにアクションを起こし続けることだ。」この言葉に、そしてこの本に、当時折れそうな心が救われました。2020/5/2960代・小学校勤務