- まえがき
- T 小学校とどこが違うか 中学国語授業の実際
- [1] 「書くこと」の力を評価する問題が違う
- (1) 小学校と中学校の違い
- (2) 「書くこと」の問題に対応する授業
- (3) 「書くこと」の大事さを意識させる
- [2] 「言葉にこだわる」姿勢の大切さは共通する
- (1) 小学校とは違うこと、同じこと
- (2) 実践例 長谷川氏の漢詩の授業
- (3) 実践例 高校生でも意見の応酬ができる
- [3] 自力で「読ませ、分析させ」そこから授業を展開せよ
- (1) 自ら読解・批評しようとする「積極性」と「力」を鍛える
- (2) 生徒の発言から論点を抉り出して授業する
- [4] 自己肯定感を高める教材 『中学生のための暗唱詩文集』を使おう
- (1) 暗唱詩文集を配る
- (2) 「一月の異名」で音読の授業をする
- (3) 暗唱練習・テストをする
- (4) 苦手な生徒への手立て
- U これができればひと安心! 中学国語に通用する国語力
- [1] 論説文を学ぶポイントの指導手順はここだ
- (1) 論説文とは何か
- (2) 論説文を学ぶときのポイントはこれだ
- (3) 筆者の伝えたいこと(主張)の見つけ方
- (4) 主張を分かりやすくするための例の見つけ方
- (5) 主張の見つけ方・例の見つけ方の練習
- [2] 中学には「作文テスト」があるのだ!
- ―テスト中に短時間で作文を書ける力をつける―
- (1) テスト中に作文を書き、採点される!
- (2) 作文の「条件」を満たす
- (3) 短時間で書くために段落構成の「型」を覚える
- (4) 作文を書く基本的な技能を身につける
- (5) よい作文を書くために「視写」する
- [3] 小説の読解テストに対応した指導ポイント
- ―三つの力を使いこなし、心情把握と主題の読解に迫る―
- (1) 場面設定を読み取り、あらすじを端的にまとめることができるか
- (2) 間接的な表現から心情を読み取り、小説を味わう
- (3) 中心人物の変化に注目し、主題に迫る
- [4] 分析の観点を知り、「型」を写すことで鑑賞文が書けるようになる
- (1) 「鑑賞文」の完成イメージ
- (2) 授業の展開@
- (3) 授業の展開A
- V 学テ問題分析で明らかになる、中学で育てる国語力
- [1] 中学では、「説明力」が育つ評論文指導が重要だ
- (1) 「説明」なき授業は国語嫌いを育てる
- (2) 全国学力・学習状況調査に見る「説明力」その1
- (3) 全国学力・学習状況調査に見る「説明力」その2
- (4) 大人をも納得させる論理を展開する生徒が育つ
- [2] A問題に対応する言語能力育成の授業
- (1) 調査問題の作成の意図
- (2) 出題された問題を分析する
- (3) 言語技術としての意識
- (4) A問題に対応する国語力
- W 国語嫌いの生徒を巻き込む「黄金の三日間」のシナリオ
- [1] 黄金の三日間の第一日目はこうする!
- (1) 国語嫌いの生徒を巻き込むポイント
- (2) 黄金の三日間 一日目の流れ
- [2] 「楽しい授業」が連発する “逆転と要約”の授業作り
- (1) 「黄金の三日間」にふまえるべきポイント
- (2) 向山実践でウォーミングアップ 「口に二画」の授業
- (3) 一年間を通した授業パーツ・向山型要約指導
- (4) 意見の違いを検討させる・描かせる指導
- X 明確な趣意説明で生徒も納得 学習の手引き
- [1] 教科書の音読と辞書引きから始めよう
- (1) 音読は楽しく、変化のある繰り返しで
- (2) 辞書引きも楽しくなる
- [2] 漢字を覚えるコツを身につけよう
- (1) 繰り返し学習する@ 「時間をおく」
- (2) 繰り返し学習するA 「変化をつけた学習方法」
- (3) 体を使って学習する
- [3] 黒板を写すだけがノートじゃない! ノート指導のポイントとコツ
- (1) ノート指導
- (2) ノートの「型」を教える
- (3) ノートの「中身」を教える
- (4) ノートと授業
- [4] 他と差がつく教科書・教材の使い方、学び方
- (1) 文法の学習は問題を繰り返し解くことで理解する
- (2) 教科書・教材の使い方
- (3) 趣意説明
- [5] 答えは「問題」と「本文」から探せ!
- (1) 本文からの発見
- (2) 文章の中の同じ言葉や言い換えている部分に着目
- (3) 言葉に対する厳密さを持つ
- (4) 本文全体から大事なことをつかむ
- [6] 問いに正対した答えを作ろう!
- ―簡単な問題を次々に繰り出す一字読解―
- (1) 子どもは一問一答のクイズが好き
- (2) 一〇〇発問作りは教材研究の基本
- [7] 学級の仲がよくなり、知的で楽しい五色百人一首≠楽しもう
- (1) 百人一首を授業で行う意味
- (2) 五色百人一首を行うときの趣意説明
- (3) 五色百人一首の手引き
- [8] この家庭学習なら着実に力がつく
- (1) 家庭学習の習慣化
- (2) 習慣化の基礎は「日記」と「新聞コラム視写」でつける
- Y 実録! 定期テスト・実力テスト
- ―ギャップを乗り越えさせるテスト作り
- [1] 単元テストとのギャップを埋める定期テスト作り
- (1) 小学校の単元テストと中学校の定期テストの違い
- (2) 生徒が混乱しないテストとは
- (3) 生徒が混乱しないテスト作り
- [2] 中1ギャップを乗り越えさせるテスト問題作成のコツ(課題作文編)
- (1) キーワードは小学校、高校への「接続」
- (2) 三年間を見通した定期考査の課題作文
- (3) 小学校と中学校テスト問題の「接続」
- Z 小学校とのギャップを埋めるTOSS教材・TOSS実践
- [1] ステップを踏ませ発表へのハードルを乗り越えさせる
- (1) 問題点─発表に至るハードルをどう乗り越えさせるか
- (2) 「できること」を積み重ねる1─音読のステップ
- (3) 「できること」を積み重ねる2─指名なし発表
- [2] 小学校間のギャップも埋める「五色名句百選かるた」
- (1) 小学校間のギャップも埋める
- (2) ギャップを埋める挿絵効果
- (3) ドラマを生んだ「五色名句百選かるた」
- (4) 「成功体験」がギャップを埋める
- [ 中学一年生の悩み、疑問に答えるQ&A
- (1) 中1ギャップの要因と対策
- (2) 中学一年生の悩み、疑問に答える その1〜「日頃の勉強の仕方が分かりません」
- (3) 中学一年生の悩み、疑問に答える その2〜「テスト勉強の仕方が分かりません」
- (4) 中学一年生の悩み、疑問に答える その3〜「どんな問題が出るんですか」
- (5) 中1ギャップを乗り越えさせるためのもう一つの視点
- \ 小学校で抜け落ちた学力を中学校で保証する
- ―入学時基礎学力調査からの報告※問題実物と平均点付き
- (1) 基礎学力を保証するための手段を持て
- (2) 入学時基礎学力調査の概要
- (3) 指書きをする際、筆順を声に出すと習得率が上がるか
- (4) いつ漢字のまとめテストをすると習得率が上がるか
- (5) 得たデータをもとに日本の子どもたちの基礎学力を保証する
まえがき
四年前、勤務校は「中1ギャップ解消のための小中連携事業」の研究委嘱を受けた。不登校がきわめて多かったからである。委嘱期間を終えた今も、取り組みは継続している。互いの努力によって、不登校生徒の数は激減した。
小中のギャップに悩み、不適応行動を取る、不登校状態に陥る。
その「ギャップ」とは一体どこにあるのか。
規則もそうだろう。小学校では概して、甘い。指導が一貫せず、徹底しない。
部活動も負担になるだろう。毎日暗くなるまで練習する。土日にも活動がある。上下関係も厳しくなる。
だが、何よりもギャップになるのは、授業である。
中学教師に(もちろん小学校教師にも多いが、中学には特に)、我流が蔓延っているのだ。こと授業に関して不勉強な教師が山ほどいる。原理原則を身につけていないから、あっちにいったりこっちにいったり、しまいには長々と説明して教えた気になっている。
そんな授業をしているのに、二言目には「評価」「評定」「高校入試」を持ち出す。
子どもたちが愛想を尽かすのは、無理もない。
中1ギャップから子どもたちを救うのは、我々中学教師である。我々がどれだけ勉強をし、力量を高め、授業の質を向上させるかにかかっている。
そんな思いで、本書を企画し、編集した。
第T章では、中学における「子どもに力をつける」授業を収録した。向山型国語による、小学校国語との連結の一端を示した。
第U章では、「中学国語に通用する国語力」と題し、中学国語で求められる力を具体的に示した。
第V章は全国学力学習状況調査問題を分析し、中学国語でどんな力を育てるべきなのかを示した。
第W章では、「小学校時代に国語が嫌いだった生徒」を対象に、彼らを最初の三時間で国語好きにするための授業案を提示した。
第X章の主眼は趣意説明である。授業で子どもたちに指示をする。その際に最も大事なのが趣意説明である。どんな言葉で学習の価値を語るか。明日の授業で使える形にまとめた。
第Y章ではギャップの代表格である定期テスト・実力テストを取り上げた。何が子どもたちを混乱させるのか。その原因と対策を具体的に示した。
第Z章ではTOSS教材のユースウェアを取り上げた。小学校と連結しつつ、中学生用に発展させていくためのポイントを書いた。
第[章では生徒達から挙がる質問の中から普遍的なものをピックアップし、授業で使える語り口で答えを付した。
最後の第\章は私自身も事務局として関わっている、日本教育技術学会主催の「中学入学時基礎学力調査」の問題と傾向分析を収録した。この問題をぜひ、入学時に実施してほしい。小学校時代に身につけるべきことをどれだけ身につけているかを正確に把握すればこそ、次に打つべき手が見えてくる。実のある計画を立て得る。
執筆陣は「中高向山型国語授業研究会」に集う現役中高教師である。私達の研究と実践が、読者の授業改善に資すれば幸いである。ご批正賜りたい。
最後に、著書の形で問題提起の機会をくださった明治図書の樋口雅子編集長に心から感謝申し上げます。
二〇一〇年晩秋に /長谷川 博之
私は、小学校の教師ですが、とても参考になりました。
それに対してこのように対応していけばいいのか、ということが極めて具体的に書かれています。
国語についての本ですが、他教科でも応用可能だと思います。