- まえがき
- 序 章 子どもを見つめて
- 第T章 みずから動きだす姿をめざして
- 一 みずから動きだす子どもとは
- 二 三つのキーワード
- 三 表す力が伸びる
- 第U章 表す力を伸ばす授業を創る
- 一 楽しくわかる授業を
- 二 表す力と学習課題
- (一) 表す力をおさえる
- (二) 学習課題を設定する
- 三 表す力を伸ばす学習過程
- (一) 表す力を伸ばす学習過程とは
- (二) 表す力を伸ばす学習過程を創る
- 四 わかることを広げる
- (一) わかることを広げるステップ
- (二) わかる手だて
- (三) わかることを広げる学習活動の構想
- 五 感じることを広げる
- (一) 感じる工夫
- (二) 感じることを広げる学習の展開
- 第V章 表す力を伸ばす授業の実際
- 一 わかったよ(わかる手だての具体例)
- <ステップを通して>
- (一) 徐々に高くなるいくつもの的〜小学部三・四年 体育科「ちびっこウルトラマン」〜
- (二) カラーシートで色をつけたパズル〜小学部五・六年 図画工作科「おおきなパズル」〜
- (三) 三つのマスに書かれた平仮名〜中学部Bグループ 国語科「出た絵はなあに」〜
- (四) 色分け目盛りの付いたけがき線〜中学部二年 職業・家庭科「のりもの遊園地」〜
- <一時間の中で>
- (五) 跳ぶときに聞こえるかけ声〜中学部Aグループ 保健体育科「ゾウさんの宝物」〜
- (六) ケーキが10個入った色違いの箱を積み上げる〜中学部Cグループ 数学科「ぼくらはパン屋さん」〜
- (七) 旋律のリズムに合った歌詞を歌う〜高等部一年 音楽科「森の音楽会」〜
- (八) 襟の折り目の少し上に張られたテープ〜高等部二年 家庭科「附養クリーニング店」〜
- (九) 斜めの角度をつけやすい型板〜高等部窯業班 作業学習「コーヒーカップ作り」〜
- 二 たのしかったよ(感じる工夫の具体例)
- <一時間の中で>
- (一) 曲の感じが交互に変わる曲〜小学部一・二年 音楽科「むしさんとおさんぽ」〜
- (二) ふたが傾いてボールが見えなくなる箱〜小学部三・四年 算数科「ボールころころ」〜
- (三) にんぎょうとあそぼう〜小学部五・六年 国語科「かわいいお客さま」〜
- (四) さらさらした材料で色をつける〜小学部五・六年 図画工作科「きれいなふね」〜
- (五) 強くけるとたくさんの足が落ちる大ダコ〜中学部Aグループ 保健体育科「海の冒険」〜
- (六) 積み重ねられた積み木の箱〜中学部Bグループ 数学科「ボールでダーツ」〜
- (七) 友達に見せる絵札を作る〜高等部一年 生活単元学習「附養かるたをつくろう」〜
- (八) 上手にできた材料に張られる「良品シール」〜高等部縫製班 作業学習「ラップホルダー作り」〜
- (九) 行事の内容を思い出せる絵〜高等部Aグループ 国語科「心わくわく思い出パネル」〜
- (十) 好きなミニカーを選んでかく〜高等部二年 美術科「お店を開こう」〜
- 三 たのしかったよ わかったよ
- <題材を通して>
- (一) 養護・訓練「おてがみ きたかな」―小学部一・二年―
- (二) 生活単元学習「絵あわせゲーム」―中学部一年―
- (三) 保障体育科「ボール集めゲーム」〜高等部Bグループ〜
- <ステップを通して>
- (四) 音楽科「楽しいおもちゃ工場」〜中学部三〜
- (五) 数学科「得点王はだれだ」〜高等部Cグループ〜
- (六) 美術科「みんなの駅」〜高等部三年〜
- 第W章 生活の中で動きだす子どもたち
- 一 生活の中で伸びる
- 二 子どもの成長を見つめて
- (一) 芳子はね、もっと大きくなるよ
- (二) 友達大好き
- (三) 正俊君、立ってください
- (四) 十一時、トレイを集めます
- 研究のあゆみ
- あとがき
まえがき
このたび、ここに『みずから動きだす子ども』を世に問うことになりました。この書は、昭和四十二年六月の本校開校以来、十冊目の出版図書となります。
これまでの本校の出版図書をひもといてみますと、精神発達遅滞の子どもたちへの学校教育の取り組みの歴史が語られています。
開校当初は、子どもたちの思いもよらない行動や心の動きに、戸惑い、悩み、暗中模索の日々であったことが克明につづられています。しかも、当時、頼りとなるべき出版物の多くは、専門的な障害児の病理・心理及び概論的な教育論であって、日常の具体的指導の手がかりとなる実践報告は皆無に等しく、教材の選択・構成、教具の工夫等に対して計り知れない努力がなされたことがうかがわれます。
しかし、これらの戸惑いや悩みの源、及び指導の糸口は徐々にではありますが解きほぐされてきたといえます。それは、教官と子どもたちとの体当たりともいえるふれ合いを通して、子どもの心を開き、その内面に迫る営みによってもたらされたものであり、また、保護者との強い連携のなかで、家庭と学校とが協力して、その子にあった適切な指導の手だてを試行錯誤しつつ求めてきたことによってもたらされたものであります。こうした試行錯誤は、開校以来三十年を経た今日でも止むことなく、永々と続けられています。
本書は、今までの本校の研究成果を踏まえ、一人ひとりの子どもの発達を促す内容を、その子どもに合った方法で指導し、その子なりに取り組む姿を育てながら、できることを一つ一つ着実に増やしていくという方向を堅持したものであります。そして、一人ひとりの子どもが、少しでもその子なりに生活にかかわり、目の前に起こるさまざまな事象に対して、みずから動きだす姿を育てるために、どのような授業を展開していけばよいかを、目の前にいる子どもを見つめて問い直し、実践したものであります。
「一人ひとりを生かす」という本校の教育方針のもとに、子どもの可能性を全面的に発達させ、自己実現への助成をすることは教育本来の理念であり、すべての教育の基盤であります。学校教育におけるさまざまな問題、また学校教育を取り巻く環境が厳しくなりつつあるなか、改めて子どもを中心に据えた取り組みの必要性が叫ばれています。本校で取り組んできた教育実践の成果は、必ずしも満足のいくものではないと反省しておりますが、少しでも参考になることがありましたら、喜びと致すところであります。
最後になりましたが、本書の出版にあたり、深いご理解とご支援を賜りました石塚嘉典氏・庄司進氏をはじめ、明治図書編集部の方々に、厚くお礼申し上げます。
平成九年十月 愛知教育大学附属養護学校長 /松井 利幸
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