- はじめに
- 第1章 数学的な思考力・表現力と小集団での追究を核とした授業
- 1.数学的な思考力・表現力
- 1 数学的な思考力とは
- 2 数学的な表現力とは
- 3 数学的な思考力・表現力を高める指導の手立ての工夫
- 2.小集団での追究を核とした授業とは
- 1 小集団での追究とは
- 2 小集団での追究を核とする授業をつくる
- 3 小集団での追究を核とする授業をつくるための留意点
- 第2章 小集団での追究を核とした授業プラン24
- 第1学年
- 1 正負の数の減法を説明しよう 〈正の数・負の数〉
- 2 必要なマッチ棒の本数は? 〈文字と式〉
- 3 カレンダーの数の秘密を探ろう 〈文字と式〉
- 4 白玉1個の重さは? 〈1次方程式〉
- 5 少女は何歳? 〈1次方程式〉
- 6 正方形を階段状に積み上げよう 〈比例・反比例〉
- 7 昼食時間の15分は適切か? 〈資料の散らばりと代表値〉
- 第2学年
- 8 各位の数を入れかえてできる数の秘密 〈式の計算〉
- 9 鶴亀算を解こう 〈連立方程式〉
- 10 盗まれた反物は? 〈連立方程式〉
- 11 正方形を重ねて並べてみよう 〈1次関数〉
- 12 三角形の内角の和 〈平面図形と平行線の性質〉
- 13 星形の先端の角度を求める 〈平面図形と平行線の性質〉
- 14 多角形の内部をくりぬいてできる図形 〈平面図形と平行線の性質〉
- 15 平行四辺形になるための条件 〈三角形・四角形〉
- 16 立方体の切断面を探ろう 〈三角形・四角形〉
- 17 一番出やすい目の組は? 〈確率〉
- 第3学年
- 18 連続する2数の性質を見つけよう 〈式の展開と因数分解〉
- 19 道の面積を求めよう 〈式の展開と因数分解〉
- 20 面積はどちらが大きい? 〈平方根〉
- 21 握手の回数から出席者数を求めよう 〈2次方程式〉
- 22 長方形を上下に並べよう 〈関数y=ax2〉
- 23 円周角と中心角の関係は? 〈円〉
- 24 角の二等分線と辺の比の関係は? 〈相似な図形〉
- 引用文献
- おわりに
はじめに
「考える力を育てたい」,「表現力を身に付けさせたい」
教育に携わる多くの方は,このような思いを持っているのではないだろうか。それは,数学科の指導においても例外ではない,否むしろ顕著と言ってもよいであろう。
数学科における思考力や表現力の育成は,従来から一貫して重視されてきた。平成20年告示の中学校学習指導要領の数学科の目標にも,思考力・表現力の育成に関わって,次のような記述がある。(下線部筆者)
「数学的活動を通して,数量や図形などに関する基礎的な概念や原理・法則についての理解を深め,数学的な表現や処理の仕方を習得し,事象を数理的に考察し表現する能力を高めるとともに,数学的活動の楽しさや数学のよさを実感し,それらを活用して考えたり判断したりしようとする態度を育てる。」
しかし,その一方で,最近の子どもたちについて,
「考える力が育っていない」,「表現力が身に付いていない」
と感じている教育関係者も少なくないのではないだろうか。実際,各種の国際調査や国内調査で,「思考力・表現力が十分に身に付いていない」点が指摘されている。
このことは,思考力・表現力の育成の難しさを物語っていると言えよう。
では,数学の授業を通して思考力・表現力を身に付けるためには,どのような指導を行えばよいのだろうか。そもそも,数学的な思考力・表現力とはどのようなものを指すのであろうか。
筆者らは,数学的な思考力・表現力を高めるための効果的な指導の1つとして,「小集団での追究を核とした授業」に着目する。
静岡大学教育学部附属島田中学校では,1974年より現在に至るまでの35年以上にわたって,「小集団での追究を核とした授業」を継続して実践してきた。メリットもデメリットも把握しながら,少しずつ改善を積み重ねてきている。そして,筆者らは今,数学的な思考力・表現力を高める上で,この「小集団での追究を核とした授業」が大変効果があると確信している。
本書は,静岡大学教育学部附属島田中学校において,長年にわたって実践を積み重ねてきた「小集団での追究を核とした授業」の一端を紹介し,数学的な思考力・表現力を高める中学校数学科の指導のあり方を追究するものである。
第1章では,まず,数学的な思考力や表現力の具体的な内容について検討し,それらの力を高めるための指導の手立てについて述べる。
次に,数学的な思考力・表現力を高めるための有効な方策として,「小集団での追究を核とした授業」について述べる。
第2章では,「小集団での追究を核とした授業」の具体的な指導について,3学年で24の実践例を紹介する。
なお,本書は筆者らが執筆したが,その内容は,これまでの附属島田中学校の数学科教員および附属島田中学校の研究に関わってきた数学教育関係者の方々が積み上げてきた財産であることを申し添える。
本書が,「数学的な思考力・表現力を高めるための指導」に少しでもお役に立てれば,望外の喜びである。
最後になりましたが,出版に際して大変お世話になりました明治図書編集部の木山麻衣子氏,有海有理氏に,この場を借りて心より御礼申し上げます。
筆者一同
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