- まえがき
- はじめに 〜本校教育課程の特色〜
- 第1章 特色ある教育課程を共につくる
- 1 教育目標を共につくる
- (1) 本校の学校教育目標設定の手順
- (2) 学校教育目標設定の視点 〜厳選とバランス〜
- (3) 本校の教育目標 〜共生と自己確立〜
- 2 教育目標達成のための教育課程をつくる
- (1) 分化と総合の視点で教育課程を編成する
- (2) 1活動2学習の基本的な考え方
- @ しらうめ活動
- A ふれあい学習
- B 教科学習
- (3) 教育課程の運用
- 第2章 共生と自己確立を目指す1活動2学習による展開
- 1 しらうめ活動
- 〜個の課題設定で進める総合学習〜
- (1) しらうめ活動の構想と展開
- @ 豊かな自己を創造していくしらうめ活動
- A しらうめ活動の姿と支援
- (2) 実践例
- @ 実践1 2年 「なかよしアルバム」をふやそう
- A 実践2 4年 「ヤッタ−!体験記」をつくろう
- B 実践3 6年 「しらうめ自叙伝」に表そう
- (3) 成果,考察
- 2 ふれあい学習
- 〜認識と行動の統一〜
- (1) ふれあい学習の構想と展開
- @ 認識と行動の統一を図る
- A ふれあい学習の姿と支援
- B 他領域とのかかわり
- (2) 実践例
- @ 子供が体験の中から自ら課題を見つけ,健全な価値観を創造する
- 実践1 1年 2年生とふれあい思い出絵本をつくろう
- 実践2 2年 英語の歌を通して,日本や外国のよさを探ろう
- 実践3 3年 おじいさんおばあさんと仲良し
- A 異年齢集団による体験や常時活動を3つの視点から厳選する
- 委員会活動/ ふれあい朝会/ ふれあい清掃/ ランチル−ム給食/ 通学路別ふれあいタイム/ 1年生を迎える会/ ふれあい宿泊活動(1・2年,3・4年,5・6年)
- B 子供が3つの視点をもとに,体験と常時活動をつないで考える
- 実践4 5年 アイデア係から学級を見直そう
- (3) 成果,考察
- 3 教科学習
- 〜人間性の育成の視点から認知構造の形成を図る〜
- (1) 教科学習の構想と展開
- @ 内容に迫る過程で自己理解,他者理解していく
- A 教科学習の姿と支援
- (2) 実践例
- 実践1 3年 国語科
- 実践2 5年 社会科
- 実践3 3年 算数科
- 実践4 4年 理科
- 実践5 3年 音楽科
- 実践6 6年 音楽科
- 実践7 3年 教科統合(社,図,国)
- 実践8 6年 家庭科
- 実践9 1年 体育科
- 実践10 3年 教科等統合(理,算,国,図,ふれあい学習)
- (3) 成果,考察
- 第3章 教育課程を共に支えるネットワ−ク
- 1 目的を共有し連携する教師と保護者
- (1) 家庭や地域に開放する学校
- @ シンポジウム
- A 研究主題を共有する
- B 一日参観
- C 子供・保護者・教師・専門家が集う学校保健委員会
- (2) 保護者と教師が話し合い,あるべき姿を求める
- @ 保護者の願いと役割
- A しらうめシンポジウム
- B 学級懇談会
- 2 テレビ会議システムによる連携
- (1) 大学からの遠隔教育
- (2) テレビ会議システム活用の広がり
- あとがき
まえがき
教育は永遠の課題です。変わることなきあるべき人間像を求める問いと変転する社会条件のなかでのその問い直しが絡み合うなか,あるべき教育は何かという問い直しがたえずなされてきました。今わが国では,子供が生活する家庭・地域環境が激変し,情報化,国際化が進み,また長寿社会の到来とともに生涯学習の必要性が強まっていますが,それに応じて,そういう社会で生きていく子供の教育の在り様も問い直されることになりました。そのなか平成8年の中央教育審議会第一次答申では,子供が身につけるべきものを「生きる力」,すなわち「自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質と能力」および「自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する能力など,豊かな人間性」と「たくましく生きるための健康や体力」とするという考えを打ち出し,いま日本の学校はそれに沿って学校教育の在り方を見直しているところです。
本校は,平成4年度より3年間文部省の研究開発学校の指定校となり,真の学力について教育研究を進め,平成7年にその成果を研究図書『個が生きる認知過程の探究』に発表しました。それは,真の学力とは,外から与えられる知識・技術を受容することによって得られるものではなく,子供が各々の認知過程に即して,知識・技術を主体的に相互に関連づけ,構造化していくことによって初めて形成されるものである,という考えに基づいたものでした。しかし,全人教育を目指すべき小学校教育にとって,それで十分ということはできないでしょう。身近な人から全地球の人々にまで及ぶ,ときには自然にまで及ぶべきとされる,他者と共に生きる心,「共生」の心が欠けてはならないからです。その観点から,本校では,道徳の時間に限らず,「共生」の基礎となる自己理解・他者理解の心を育むような授業開発に努めるようになりました。それは,あらゆる機会を通じて「共生」のための道徳的心情・態度を養うことを目指すとともに,獲得されるすべての知識と「共生」の心とが相互に連関し合って,一つのものに構造化され,あるべき人間の核となることを願うからであります。教科の授業に「共生」の心を調和するよう融合させることはきわめて難しく,本校の試みも未だ途上にあると言わなければなりませんが,それがなすに値する仕事ならなおいっそう,教育に心を傾ける方々のご批判とご教示が必要と考え,今ここに本校の試みを報告するこの研究図書を公にする次第です。
この研究を進めるに当たっては,多くの先生方からご教示,ご指導をいただきました。それがなければ本校の研究も,この図書の刊行も実現しなかったことでしょう。しかし一方では,本校の教員は,諸先生からのご教示をいただきながらも,それを受けて,自ら考え,自ら実践してまいりました。そのため,理論化においても,実践においても,至らぬ点は多々あると存じますが,多くの方からご批判をいただき,誤りを正し,共に歩むことができれば,これに過ぎる喜びはありません。
平成11年2月 香川大学教育学部附属高松小学校 校長 /土屋 盛茂
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- 明治図書