- 推薦のことば /柘植 雅義 /戸部 けいこ
- 》プロローグ《
- 第1章 みんなが応用行動分析学を使えることを目指した「支援ツール」の提案
- すべてはなわとびから始まった「あきら君の17年にわたる実践記録」
- 1.養護学校卒業後の実態
- 2.手がかりツール
- ◎わかっているけれど支援できない現状
- ◎みんなが使える手がかりを目指して
- 3.交換記録ツール
- ◎みんなが達成感を共有できることを目指して
- 4.支援ツールのパワー
- ◎やらされモデルからチャレンジモデルへ
- 5.支援ツールで研究協議が楽しくなる
- ◎キーワードで協議しよう
- 6.みんなが主体的に使えることを目指して
- ◎ユニバーサルデザインの考え方
- 第2章 子どもと保護者のせいにしない支援
- 1.みんな大好き
- ◎愛情から行動分析モデルへ
- 2.「応える支援」を目指して
- ◎4つのモデル
- 3.社会的強化子を目指す
- ◎いろいろな強化子
- 4.強化子がないと行動できなくなるのでは
- ◎強化スケジュール
- 5.これは使える「待ちの支援」
- ◎遅延プロンプト
- 6.これは効果的「ふろしき後ろ回り」
- ◎五感に伝える刺激プロンプト
- 7.できる行動とできない行動を実態把握する
- ◎課題分析
- 8.一歩ずつ支援するスモールステップ
- ◎順向型と背向型
- 9.俺がいれば言う事を聞くぜ
- ◎愛のムチは教育の無知
- 10.正の強化で満ち溢れた世界へ
- ◎維持・般化の困難性への挑戦
- 第3章 「ナンバーぞうきん」であきこさんの自発的行動を高める
- 1.機能分析で支援のヒントを探る
- 2.先生より優秀なぞうきん
- ◎3つの箱で考える機能分析(ABC分析)
- ◎刺激プロンプト「ナンバーぞうきん」
- 3.準備から後片付けまで
- ◎課題分析作成への配慮
- ◎ベースライン
- 4.実態把握をしっかりと記録する
- 5.成功体験を繰り返す
- ◎刺激制御の成立と維持の促進
- 6.保護者も実践に参加する
- 7.みんながわかるABデザイン
- ◎家庭でも簡単にできる般化の促進
- ◎刺激プロンプト「目印バケツ」
- 8.階段掃除でお金の価値を学習する
- ◎10円を使ったトークン・エコノミー
- 第4章 「お手玉ふっきん」でたけし君の家庭と共同実践する
- 1.かんしゃくを繰り返す
- ◎卒業生の現状
- 2.好きなこと,できることから始めよう
- ◎3つの箱で考える機能(ABC)分析
- 3.もしも「お手玉ふっきん」がなかったら
- ◎気まぐれ弁別刺激と計画された弁別刺激
- 4.クラス集団のパワーと家庭での維持
- ◎家庭での腹筋運動・散歩の経過
- ◎遅延プロンプト
- ◎対立行動分化強化(DRI)
- 5.丁寧に一歩ずつ支援する
- ◎プロンプト・フェンディング
- @言語プロンプト
- Aジェスチャー
- Bモデリング
- Cフィジカルプロンプト
- 6.よい行動を累積・強化する
- ◎チャレンジ日記
- 7.よい行動だけを評価する
- ◎他行動分化強化(DRO)
- 8.両立できない行動を設定する
- 9.教師の実践行動を分析する
- ◎苦悩する若い教師
- ◎楽しい実践研究にするための追試
- 10.支援をやめないで効果を評価する
- ◎マルチベースラインデザイン
- 第5章 手がかりツールの工夫
- 1)バスタオル跳び
- 2)おばけを消そう!
- 3)スーパー袋ボール
- 4)身近なものを手がかりに
- 5)MY掃除用具
- 6)目印水彩水入れ
- 7)お手玉スクワット,ランニング
- 8)携帯用MYミニブック
- 9)おもしろビデオレンタル
- 10)鳴らないでよタイマーさん
- 11)何でも使えるカウンターと洗濯ばさみ
- 12)ユニバーサルなふろしき
- エピローグ
- 参考文献一覧
- 索引
推薦のことば
国立特殊教育総合研究所に勤務していたとき,ある養護学校の研究協力者として,中堅からベテランの域にある教員による,知的障害のある自閉症の子の個別指導の場面を見る機会がありました。30分ほど見て,「先生は行動分析を学ばれたのですね」と聞くと,「(行動分析を)学んだことはないです」と答えられました。「でも,先生の指導には行動分析のいろいろな手法が盛り込まれていましたよ。例えば……」と続けました。すると,少し憤慨した様子で,「行動分析は大嫌いです。物(食べ物?)で子どもをコントロールするようなやり方は障害児にはよくないです」と話されました。中堅とかベテランとかの域に達した教員が知らず知らずに行動分析の手法を取り入れていた事実と,その一方で行動分析についての誤解や拒否感を持っていることを目の当たりにした日でした。
また,やはり研究所勤務のときに開催された国際会議で,ニュージーランドだったかオーストラリアだったかからの参加者が,その国の現職教育プログラムの説明をしました。アセスメントとかIEP作成などの必要な10項目ほどの中に,「応用行動分析の基礎」というものが入っていました。会議の休憩時間に,「あなたの国の現職教員の研修に応用行動分析が入っているが,どうしてですか?」と聞いてみました。すると,予想通りの答えが戻ってきたのです。「IEPを作るには,行動分析の最低限の知識や技能が必要です。それに,質の高い指導をするためですよ。」
そして,逆に質問されてしまいました。「日本では,教員養成や現職研修に行動分析は入っていないのですか?」
実はこれらの出来事の後,一部の教員が行動分析に対して誤解や拒否感を持っていることと,最低限の行動分析の知識や技能を日本でもたくさんの教員に身に付けてもらいたいということが気になっていました。今回,高畑氏によって,その豊富な教職経験と研究の積み重ねから生まれた本書は,まさにこの2点を見事に解決してくれるものと思います。そして,特別支援教育に直接また深く関わっている教員のみならず,通常学級の担当者にこそ読んでもらいたい本であるし,そのような対象を意識した構成や記述になっています。
兵庫教育大学大学院教授(前文部科学省特別支援教育調査官)
/柘植 雅義
推薦のことば
高畑先生とは『光とともに……』の取材中,メールを通してお知り合いになりました。
先生のメールの署名欄のサラリ君似のアスキーアートが新鮮で楽しかったです。
連載当初,私が初めて読んだ応用行動分析の本は,入門書でありながら難解でため息ばかり。でも高畑先生の御本は違います。
専門性に裏打ちされながらも本当にわかりやすく,すぐにでも応用して試したくなる支援ツールが満載です。
お子さんに合わせ,状況に応じ,科学的に創造的に繰り広げられる支援の事例は,爽快で思わずうなるものばかり。
そればかりか何かしら,自分の身の回りでうまくいった時の記憶と重なります。
「ある,ある,ある……。これ,これ,これ……」
きっとそれがユニバーサルデザインである所以なのでしよう。
(絵省略)
漫画家 /戸部 けいこ
漫画イラストが多く、やさしい文章で、それでいて理解しやすい。