- まえがき
- Part1 算数授業で育てたい表現力
- 1 いま求められている表現力とは
- @ 表現力育成の課題
- A 期待される表現力の姿
- 2 表現力を育てるポイント
- @ 表現力をとらえる視点―表現力を構成する要素―
- A 思考と表現の一体的な把握と表現技能
- B 全国学力・学習状況調査でさらに精緻化されたこと
- 3 目指すべき「子ども像」の設定
- @ 「子ども像」の設定にあたって留意したいこと
- A 低学年で身につけたい表現力
- B 中学年で身につけたい表現力
- C 高学年で身につけたい表現力
- D 「子ども像」の設定例
- Part2 表現力を育てる授業・学級・学年づくり
- 1 授業展開における表現活動の工夫
- @ 問題解決型の授業展開と表現技能
- A 子どもの表現を豊かにするための発問例・板書例・ノート指導例
- B 子どもたちの伝え合う活動を豊かにする授業形態の工夫
- 2 表現し伝え合う活動を支える学級づくり
- @ 子どもたちの関係性をはぐくむ授業の工夫
- A 協同的に算数をつくる学級・学習集団づくり
- B 数学教育学研究における学習集団についての理論的研究より
- 3 表現力を豊かにするための学校での取り組み
- @ 学年や学校として取り組みたいこと
- A 表現力を豊かにするための学習環境の工夫
- Part3 表現力を育てる算数の授業アイデア
- 1 1・2年の授業アイデア
- 1 1年 単元「ひきざん」(A領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全11時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 2 1年 単元「かたちあそび」(C領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全3時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 3 2年 単元「かけざん」(A領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全10時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 4 2年 単元「図をつかって考えよう」(D領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全8時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 2 3・4年の授業アイデア
- 1 3年 単元「二等辺三角形と正三角形」(C領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全12時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 2 4年 単元「がい数を使った計算」(A領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全11時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 3 4年 単元「面積」(B領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全10時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 4 4年 単元「折れ線グラフ」(D領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全6時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 3 5・6年の授業アイデア
- 1 5年 単元「小数のかけ算」(A領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全12時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 2 5年 単元「三角形や四角形の角」(C領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全6時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 3 6年 単元「分数のわり算」(A領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全9時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
- 4 6年 単元「速さ」(B領域)
- @ 身につけたい表現力 A 指導計画(全8時間) B 授業の目標と評価規準 C 授業展開 D 板書例・ノート指導の実際
まえがき
「知識基盤社会」と言われる今日,知識を身につけ,それを活用し,さらなる知識を構築していくような資質や能力が必要とされている。また,合わせて,多様な価値をもった他者とともに生きていくこと,そして,協同的に様々な取り組みを進めていく力が求められている。そのようなとき,表現とコミュニケーションは,その媒介となるものだけでなく,もっと本質的なものとして存在をしている。
このような今日の社会のもと,算数科において,数理的な事象に関わる豊かなコミュニケーションを展開したいと思っている。また,そのためにも,確かで豊かな数学的表現力・コミュニケーション能力を育てたいと思う。
数学的な内容を理解し,計算ができたり,図やグラフがかけたり,その特徴を読み取ったりすることも大切である。それとともに,数理的な事象に関わって,自らの考えを表現し,他者とコミュニケーションを進めたり,それらをもとに考えや表現を深めたり高めたりできるようにすることは,知識や技能を身につけることと同様に,学校教育において進めるべき,また,算数科において進めるべき大切なことである。また,それだけではなく,さらには,協同的な問題解決の過程においてそのような表現力やコミュニケーション能力を発揮することができるようにすることも求められている。
このような意識から,数学的表現力・コミュニケーション能力の育成について,本書を著した。
本書のPart1は,我が国の今日の状況の中でどのような数学的表現力・コミュニケーション能力の育成が期待されているかについてまとめ,また,提案をした。表現力・コミュニケーション能力の育成の今日的特徴は,教科横断的な能力としてその能力の重要な要素を押さえながらも,各教科の特質に応じてさらに精緻化をする,あるいはさらに豊かにするという編成の仕方をとるところにある。しかも,それらについて発達段階に応じた具体化を図るところにある。そのことを踏まえ,本書でさらに具体的に展開をした。
本書のPart2は,数学的表現力・コミュニケーション能力の育成を進めていくにあたって,授業展開においてどのような工夫を進めるとよいのか,また,そのような授業展開を進めるにあたって同時的に進めなければならないものとしての学級づくり・学校づくりについてまとめた。ここでは,様々な学校での実践研究でどのような成果が出されているのかを明らかにし,それに学びながら,提言をしている。
本書のPart3は,数学的表現力・コミュニケーション能力を育てる授業アイデアについて,1・2年,3・4年,5・6年の3段階に分け,それぞれの中からいくつかの単元を選び,実践をもとに示している。そこでは,「身につけたい表現力」を指導内容との関係で明らかにすること,授業展開で工夫しているところを明確にすること,授業展開案とともに板書とノート記述の様子を示すことにより,具体的にどのように授業を進め,子どもたちに身につけさせたい力としてどのようなあたりを目指し実現していくとよいかを示した。
数学的表現力・コミュニケーション能力の育成に向けて取り組もうとされている全国の先生がたに,本書を活用していただければ幸いである。
本書の作成にあたっては,多くの先生がたにお力添えをいただくとともに,埼玉大学教育学部附属小学校の子どもたちにもご協力いただきました。ここに厚く御礼を申し上げます。また,編集の労をとっていただきました明治図書の木山麻衣子氏,林知里氏,有海有理氏に深く感謝の意を表します。
平成24年3月 編著者 /金本 良通
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- 明治図書