- まえがき
- 第1章 思考スキルの考え方とそのよさ
- 1 思考力,判断力,表現力を育成するために
- 2 思考スキルとその扱い方
- (1)当校で焦点を当てた思考(思考スキル)
- (2)指導の流れ
- (3)各教科で用いられる思考スキル
- 第2章 思考スキルの取り立て指導の実際
- 1 思考スキルの取り立て指導の考え方
- 2 思考スキルの取り立て指導の実際
- 対比,比較スキル
- 分類スキル
- 類推スキル
- 仮定スキル
- 帰納スキル
- 演繹スキル
- 3 思考スキルの汎用性を高める授業の実際
- 利用者の多い自動販売機の特徴について考えよう
- 立場を決めて説得力のある主張をしよう
- 第3章 思考スキルを活用した各教科の授業の実際
- 国語科@
- 国語科A
- 社会科
- 数学科
- 理科@
- 理科A
- 音楽科
- 美術科
- 技術科
- 家庭科
- 保健体育科
- 英語科
- 第4章 思考スキルを伸ばす学習方法,指導方法
- 「学習の仕方にかかわるスキル」の考え方
- ノートのつくり方
- テストの振り返り方
- 交流・検討の仕方
- 伝えるスキル
- 第5章 思考スキルを活用するにあたって
- あとがき
まえがき
本書は,当校が多年にわたって取り組んでまいりました,思考力育成に関する実践的な研究成果を世に問うものであります。
かつて,J.デューイは,子どもの問題解決能力を高めるために思考の方法を教えることの大切さを説きましたが,私たちも,各教科や教科を超えた様々な場で,思考の方法を取り立てて教えることを試みてきました。
思考の方法で大切なことは,自らの思考そのものをメタ認知的に自覚し,コントロールすることであると考えます。しかし,それは生徒たちにとっては,大変に困難なことであります。そこで当校では,1年生の段階で,モデルとなる思考の方法,例えば,「対比すること」「比較すること」「帰納すること」「演繹すること」「類推すること」「分類すること」などの意味やよさを,教師の方で指導・定着させ,学年を追うごとに生徒自身が思考の方法を思い出して使いこなしていけるような授業づくりとカリキュラムづくりを行ってきました。
教科の特性や,教科独自の思考の方法ということも十分に踏まえてはいますが,一般的な思考の方法を,教科の枠を超えて,学校全体で焦点化して学ばせ,指導していくというところに,全国でもあまり類をみないユニークな教育的チャレンジとしての特色が出ていると自負しています。また,新学習指導要領が重視している,思考力・判断力・表現力の育成という課題にも正面から向き合った実践記録として,皆様方のご参考になるものと思います。
さらに本書は,授業の成果の紹介だけでなく,授業をさらに生かし,生徒の学ぶ力をより高めるための学習指導法等に関する当校の様々な具体的工夫も記載させていただきました。あわせてお読みいただき,ご批正をいただければ幸甚です。
末筆となりましたが,改めまして東日本大震災,巨大津波,原発事故等で被災されました方々に心よりお見舞いを申し上げますとともに,一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。まさに国難ともいえるこの状況に際しまして,私たち教育関係者にできること,そしてやらなければならないことは,「米百俵」の精神に基づく,明日の社会の担い手たる未来の人材育成に外ならないと思います。人と社会のこれからの在り方について,深く考えて行動することのできる子どもを育成していきたいと考えています。教育とは希望を語ることである,といわれますが,ここに希望を共に語る1つの手がかりを当校が提供できますことを念じまして,まえがきとさせていただきます。
平成24年1月1日 新潟大学教育学部附属新潟中学校 校長 /児玉 康弘
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