- はじめに
- T 理論編
- 1 今こそ求められる,これから求められつづける「創造的に思考する力」
- (1) これからの社会を生きていく子どもたちに
- (2) 「創造的に思考する子ども」とは
- 2 創造的に思考しながら問題を解決し,確実に教科本質に迫る学びをめざして
- (1) 創造的に思考する子どもを育てる授業づくりの基本的な考え方
- (2) 基本的な考え方をもとにした授業づくりのポイント
- ポイント1 学習材の開発と出会わせ方
- ポイント2 切実な問題が連続する単元展開
- ポイント3 問題解決のために,子どもの創造的な思考が活性化する言語活動
- U 実践編
- 1 国語科(C 読むこと)における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 2 社会科における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 3 算数科における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 4 理科における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 5 生活科における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 6 図画工作科における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 7 家庭科における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 8 体育科における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 9 道徳の時間における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 10 外国語活動における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 11 総合的な学習の時間における創造的に思考する子どもを育てる授業
- 12 学級活動における創造的に思考する子どもを育てる授業
- おわりに
- ○引用・参考文献
- ○研究同人
はじめに
最近,学校現場の先生方と話をすると,「本校は全国平均よりも点数が高かった」「本県は全国で○位でした」と全国学力・学習状況調査の点数や順位が話題になることが多くあります。また,子どもたちの学力低下が問題になっています。どちらも学力の問題ですが,ここで言う「学力」とは何なのか。学力を一側面のみでとらえた話になってはいないでしょうか。子どもたちにつけたい,つけなければならない「学力」をどう考えるかによって,その対応の仕方は違ってきます。研究教科が国語科か算数科である小学校が多いように聞きますが,このことも「学力」のとらえ方とかかわっていると言えるでしょう。
時代が平成になった頃,「新しい学力観」ということが言われました。しかし,今,その学力観はどうなったのでしょうか。今日,言われている学力のとらえ方と同じなのか違うのか。その点が明確でないまま「学力」という言葉だけが一人歩きをしているように感じます。
何事も,方向性が不明確になったときには,今一度「原点回帰」をし,本質を明確にし,原点に立ち返って考えることが大切です。
また,「思考力・判断力・表現力を高める」「言語活動の充実」ということが言われています。このようなキーワードが示されると,学校の教育実践の場においては,そのことへの対応だけに関心が高まる傾向があります。学習活動の中に話合いの場が設定されたり,情報の交流の場が設定されたりする実践を見聞きすることが増えました。
教育においても「不易流行」があります。子どもを取り巻く環境の急激な変化に対応するための今日的な課題としての「流行」の部分と,どのような時代であっても変わらない本質的な「不易」があります。どちらが重要ということではありません。ただ,対処療法的な対応策を求めすぎると,本質からずれてしまう可能性があることには気をつけなければなりません。国際化,情報化が進み,想定外の出来事が次々起こる時代に生きていかなければならない子どもたちの教育のあり方を考えるとき,今一度,「原点回帰」「不易流行」という視点で見直すことが大切だと考えます。
本校では,これまでの研究実践を通して培ってきた教育の原点に軸足を置き,今日的な課題への対応だけでなく,これからの社会を生きていく子どもたちに必要な力として「創造的に思考する力」を育む教育実践研究に取り組んできています。自分たちで問題を見出し,情報を集めたり,既有の内容知・方法知を駆使したりして問題を解決していく中で,価値あるものをつくりだす学習をめざしているのです。
皆が言われたとおりに同じことをし,同じ答えにたどり着くという学習の積み重ねでは,これからの社会の未知なる問題を解決していくことは難しいでしょう。
問題解決のために,多くの情報や既有の内容知・方法知から自分が必要と考えたものを自分で判断し選択をする。時には,その選択が正しくない場合もあるかもしれません。しかし,そのようなときは,友達とのかかわりの中で考えを再構成したり,再度,選択し直したりすることが深い学びとなるのです。このような学習の過程においては,必然的に言語活動を通して友達とかかわる場も生まれ,創造的な思考が活性化するのです。
ただし,このような学習は,子どもまかせではなく,教師の見通しをもった計画と周到な準備があるからこそ行うことができます。
本書は,このような考え方,そのための手立てや言語活動を,具体的に,わかりやすく表現したつもりです。本書が多くの先生方の教育実践,何よりも子どもたちの学習に役立つものになって欲しいと願っています。
最後になりましたが,本校の研究ならびに本書の発刊にあたり,かかわっていただいた福岡教育大学の諸先生方と,ご指導ご支援をいただいた本校「誘導の会」の諸先輩,また本書の発行をご快諾くださいました明治図書編集部長の樋口雅子氏に厚くお礼申し上げます。
平成25年2月 福岡教育大学附属小倉小学校校長 /津川 裕
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