- 序
- はじめに
- 第1章 発語を促す言葉遊び歌の働き
- 1 リズムの働き
- 1 (音符省略)のリズムについて
- 2 (音符省略)のリズムについて
- 3 (音符省略)のリズムについて
- 4 (音符省略)について
- 2 陽旋法の働き
- 1 陽旋法について
- 2 日本語と結びついた陽旋法
- 3 言葉と音楽の諸機能をマッチさせた言葉遊び歌
- 第2章 発語を促し言葉や文字を体得させる指導
- 1 教材・教具の作成
- 1 言葉遊び歌の作成とそのねらい
- 2 絵カードと文字カードを作る
- 3 書写用プリントを作る
- 2 学習の展開
- 1 五十音46種の言葉遊び歌を使って
- (1) おばけの歌
- (2) 「やさいのや」と「やさい」
- (3) みんなでカード合わせ
- (4) 続けて歌う
- (5) 絵を見て歌詞の2語文を言う
- (6) 絵の言葉の文字を探す
- 2 濁音・半濁音25種の言葉遊び歌を使って
- (1) 絵の言葉の2語文の文字を探す
- (2) 好きな歌の言葉を書く
- 3 多くの促音の言葉遊び歌を使って
- (1) はっぱの歌
- (2) かぞえうた
- 4 よう音を含む言葉遊び歌
- 5 片かなの五十音45種の言葉遊び歌を使って
- (1) 歌いながらみんなでおどる
- (2) 歌をリクエストして歌う
- 6 片かなの濁音・半濁音の歌を使って
- ○ザクロの歌のバリエーション
- 3 言語表現の拡大
- 1 絵日記作りを通しての言語表現
- 2 音楽劇「大きなだいこん」で発表表現
- 第3章 M子の変容とまとめ
- 1 M子の学校生活での言語表現の変化
- 2 M子の家庭生活での言語表現の変化
- 3 まとめ
- 第4章 自閉症児の発語を促す指導
- 1 児童の実態
- 1 就学前の検査
- 2 自閉症について
- 3 各種訓練等について
- 4 発音,発語等について
- 2 心のつながりを求めて
- 1 リズム感を育てる
- 2 リズム感を生かして発音の意識化を
- 3 指導の方法とねらい
- 1 教材・教具の作成
- (1) 絵カード・文字カードを作る
- (2) 2音節語のリズム歌を作る
- (3) 2音節語の言葉遊び歌を作る
- (4) 2語文の言葉遊び歌を作る
- (5) 2語文の言葉遊び歌の絵カードを作る
- (6) 生活語の言葉遊び歌を工夫して
- (7) 平がなや片かなの言葉遊び歌を使って
- 4 学習の展開
- 1 いえのリズム歌を歌う
- 2 2音節語の言葉遊び歌を使って
- (1) いえの2音節語の歌を歌う
- (2) 絵カードと文字カードのマッチングをする
- 3 2語文の言葉遊び歌を使って
- (1) 「いえをつくる」などの2語文の歌を歌う
- (2) 絵カードを見て2語文を言う
- 4 生活語を生かした歌を使って
- (1) 「だめでしよ」の歌
- (2) 「あぶない」の歌
- 5 平がなや片かなの言葉遊び歌を使って
- (1) 絵・文字カードの前で歌を聞いて拍打ち
- (2) 絵カードと文字カードのマッチンク
- (3) 歌集を見て続けて歌う
- 6 言葉遊び歌の拡大・活用
- (1) 歌を聞いて顔の絵を描く
- (2) 実物や場面を歌にして
- (3) 朝の会の歌問答
- (4) 音楽劇で発表表現
- (5) 音楽劇の台本を読んだり歌を歌ったりして
- (6) アンパンマンかるた歌
- (7) アンパンマンとキャラクターたちの歌
- (8) 助数によるかぞえ歌
- (9) お金の歌
- (10) 用言を軸とした歌
- ア 日常の生活の歌
- イ 擬音語・擬態語を生かした歌
- 第5章 S男の変容とまとめ
- 1 学校生活での発語や表現の変化
- 2 家庭での発語や表現の変化
- 3 まとめ
- 参考文献
- [資料]
- △第2章の関係資料
- 平がな(五十音)の言葉遊び歌/ 平がな(濁音,半濁音)の言葉遊び歌/ 片かな(濁音・半濁音)の言葉遊び歌/ 促音の言葉遊び歌と絵カード/ よう音の言葉遊び歌/ 片かな(五十音)の言葉遊び歌
- △第4章の関係資料
- 2音節語のリズム歌/ 2音節語の言葉遊び歌/ 2語文の言葉遊び歌と絵カード/ 生活語による言葉遊び歌/ アンパンマンかるた歌/ アンパンマンの歌/ 助数によるかぞえ歌/ 日常の生活の歌/ お金の歌/ 擬音・擬態語を生かした歌
- おわりに
はじめに
私は長年,通常の小・中学校で主に音楽の基礎指導の実践研究を続け,これを生かして残り少ない教師生活最後の6年間,障害児教育に取り組んだ。
担当した小学校特殊学級の児童たちの心身の障害は,自閉症,てんかん,小頭症,ダウン症など多様で,そのすべての児童に程度は異なるものの,精神発達遅滞からと考えられる言葉の発達の遅れが認められた。
中でも,重い先天性の心臓疾患(ファロー四徴症)をもったダウン症児の2年生M子(身体障害者手帳2種1級,中度の精神薄弱)は心身の発達の遅れから,発語は大変不明瞭で教師や級友には全く意味が通じなかった。
このような児童たちではあるが,音楽,とりわけ歌は大好きで,声が出る児童は大声で歌い,あまり声の出ない児童は手や体を動かして反応した。
そこで,いわゆる三・三・七拍子(音符省略)を生かしたリズムの上に日本語の抑揚と表裏一体の陽旋法で節づけした言葉遊び歌を五十音順に作って歌わせ,発語促進や言葉や文字の体得を目指した。
児童たちは大変喜んで歌い,M子も1年間の学習で2年生の終わりには発語が少し通じるようになり,平がなの読み書きも少しできるようになった。
続いて濁・半濁音,促音,よう音,片かな五十音,濁・半濁音と展開したところ,M子たちの発語は明瞭化し多くの言葉や文字を体得していった。
平成2年度に,母音の発音はあるものの,発語らしいものは認められない大変多動な自閉症児S男(精神年齢1歳5か月)が1年生に入級した。
S男が教師にだかれて来る機会を生かして三・三・七拍子を打ってリズム感を育て,リズム歌や2音節語の歌を作って歌わせたところ1年間で,いえ,うま,かめ等の名詞20ほどが発語可能になった。2年生ではこれを基に「うまがはしる」などの2語文の歌を歌わせたところ500種ほどの歌を歌い,多くの言葉の発語や平がな,片かなの読みや短い文の音読が可能になった。
これらの実践研究の過程を考察を含めて順を追って述べたい。
1992年9月 著 者
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- 明治図書