- まえがき
- 第T章 「思考力・判断力・表現力」をつける中学校社会科授業デザインの新視点
- (1)「思考力・判断力・表現力」重視の背景
- (2)「思考力・判断力」から「思考力・判断力・表現力」へ
- (3)「思考力・判断力・表現力」を育成する授業デザイン
- 「理解型」の授業デザイン/ 「説明型」の授業デザイン/ 「問題解決型」の授業デザイン/ 「意思決定型」の授業デザイン/ 「社会形成型」の授業デザイン/ 「社会参加型」の授業デザイン
- 第U章 「思考力・判断力・表現力」をつける中学校社会科公民授業の改革
- (1)公民学習は「白熱授業」!
- (2)「思考・判断・表現」するための社会を読み解く問い
- (3)「思考力・判断力・表現力」育成の3つの鍵
- (4)それぞれの学習活動における公民学習の工夫
- (5)「思考力・判断力・表現力」の評価
- 第V章 「思考力・判断力・表現力」をつける中学校社会科公民授業の構成
- (1)社会科公民的分野における「思考力・判断力・表現力」とは?
- (2)社会科公民的分野の授業構成の視点
- 第W章 「思考力・判断力・表現力」をつける単元別公民授業モデル
- 1 「現代社会とわたしたちの生活」授業モデル
- 日系ブラジル人社会から見た日本のグローバル化
- 2 「現代社会の見方や考え方」授業モデル
- 「効率」「公正」から,教室の共用空間をどう使う?
- 3 「これからの人権保障」授業モデル
- 裁判員に選ばれたとき,あなたは「死刑」判決を言い渡すことができますか
- 4 「現代の民主政治」授業モデル
- 各政党のマニフェストを読み解き,自らマニフェストをつくる
- 5 「国の政治としくみ」授業モデル
- 社会の見方・考え方「効率と公正」で政治のしくみを読み解く
- 6 「地方の政治と自治」授業モデル
- 自分たちの県に必要な歳出案を提案しよう
- 7 「くらしと経済」授業モデル
- 「習得」「活用」力をつける経済学習―公的年金制度を考える―
- 8 「価格のはたらきと金融」授業モデル
- 貨幣論から現行通貨の性質と役割を探究する―お金を考える―
- 9 「国民生活と福祉」授業モデル
- 現実社会との関わりを意識した討論活動を―政府の大きさを考える―
- 10 「国際問題とわたしたち」授業モデル
- G20サミット―熱帯林保全のために国家予算の1%を拠出すべきか―
- あとがき
まえがき
2012(平成24)年4月より,新学習指導要領に基づく教育課程が中学校において全面実施となります。今回の中学校社会科改訂のポイントとなるキーワードの1つは,基礎・基本となる知識・技能を活用して課題を解決していくために必要な「思考力・判断力・表現力」の育成と言われています。それは,社会的事象や課題を単に知る・わかるだけでなく,その背景を熟考し,それに対する自分なりの意見や考えを持ち,それを表現しながら社会への参加・参画を考えていく力であると考えられます。
現在,全国各地の中学校においては,このような改訂の趣旨を踏まえながら,新しい授業開発の準備が進められているのではないでしょうか。この時期におけるこのような実践的課題に応えることを意図して企画されたのが,全3冊からなる『「思考力・判断力・表現力」をつける中学校社会科授業モデル』の本シリーズです。
シリーズの中の1冊である本書は,「思考力・判断力・表現力」の育成を視点としながら,中学校社会科公民的分野の単元別の授業プランの開発を意図して企画・編集されたものです。その特色としては,大きく次の3点を指摘することができます。
第1は,2009年3月に刊行した前著『「思考力・判断力・表現力」をつける社会科授業デザイン:中学校編』(2009年3月)の発展をねらいとしていることです。前著では,「資料から必要な情報を集めて読み取る」「社会的事象の意味・意義を解釈する」「事象の特色や事象間の関連を説明する」「自分の考えを論述する」という,「思考力・判断力・表現力」を育成するための主要な学習活動に着目して,地理・歴史・公民の各分野の典型的な単元の授業開発を試みました。幸いにも,前著については,多くの読者の先生方からのご支持を得ることができましたが,同時に,「さらに深く掘り下げた,単元別の授業プランが欲しい」との声も届けられました。本書の特色の1つは,それらの声に応えようとしていることです。
第2は,新学習指導要領に準拠した新しい教科書の内容に即して,「思考力・判断力・表現力」を育成する中学校社会科公民学習の単元ごとの授業プランを,系統的にまとめ提案していることです。そのために,今回は,わが国の公民教育に関する研究・実践を理論的にも実践的にもリードされている大阪教育大学の峯明秀先生を共編者としてお願いし,峯先生を中心としたチームによる協同的な実践研究の成果としてもまとめてもらっています。
そして第3は,開発した各単元を,具体的な教材例,効果的な授業手法・活動の組み込み方,単元の指導目標と指導計画,単元の学習指導案モデル,子どもの育ちをとらえる評価規準(テスト例など)を加えて,具体的かつ実践可能なものとして開発していることです。
このような特色をもつ本書が,全国各地の教師による独創的な公民授業づくりに活用されるとともに,「平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」これからの優れた中学校社会科授業づくりのための参考文献の1つとなることを願っております。また,そのことを通して,多くの中学生が市民として成長してくれることを大いに期待したいと思います。
最後に,前著に続けて本書出版の機会を与えて頂いた明治図書出版,ならびに企画段階からきめ細かい助言をいただいた及川誠氏に対して,心よりの謝辞を申し上げます。
平成23年7月 /小原 友行
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