- はじめに
- 1.まず知ろう「自閉症」って
- Q1 自閉症(広汎性発達障害)とは
- Q2 配慮すべき自閉症の特性とは
- Q3 診断名が複数ある不思議!?
- Q4 療育手帳を持っている人と持っていない人がいるのは何故
- Q5 学校卒業後の進路について
- コラム PARS(広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度)
- 2.おさえておこう「特別支援教育」
- 「特別支援教育」がはじまって
- Q6 特別支援教育のしくみについて教えてください
- Q7 「通常の学級」ではどのような支援ができますか
- Q8 「特別支援学級」ではどのような支援ができますか
- Q9 巡回相談を受けるなど専門機関との連携ができると聞いたのですが…
- Q10 親の会について教えてください
- コラム WISC-・とK-ABC
- 3.保護者と教師が信頼を深めるための基礎知識
- Q11 保護者と教師が共通理解を図るためのポイントは
- Q12 共通理解のためのツールはありますか
- Q13 気になる行動を共通理解するためにはどうしたらいいですか
- Q14 学校内で共通理解するための工夫は
- Q15 クラスの仲間やその保護者と共通理解を図るには
- コラム 個人情報保護と情報共有
- 4.保護者と教師の悩み解決相談
- Q16 診断を勧めたいのですがどうしたらよいでしょうか(担任より)
- Q17 相談や特別な支援自体を拒否されるのですがどうしたらよいでしょうか(担任より)
- Q18 特定の療法を勉強するように言われてしまいました(担任より)
- Q19 行事にはでませんと言われてしまいました(担任より)
- Q20 診断名や障害をどのように伝えたらよいでしょうか(保護者より)
- Q21 担任の先生から特別扱いはしたくないと言われてしまいました(保護者より)
- 5.支援のためのちょっとしたコツ・指導のイロハ
- Q22 自閉症の子どもがノル会話「なかなか会話にのってくれないのですが…」
- Q23 自閉症の子どもがよろこぶほめ方「ほめてもうれしそうなそぶりがみられないのですが…」
- Q24 自閉症の子どもに伝わる叱り方「叱っても反省のそぶりがみられないのですが…」
- Q25 自閉症の子どもと楽しい約束の仕方「約束しようとしても拒否されて…」
- Q26 自閉症の子どもがすすんでやる指導法「課題をうながしても拒否されて…」
- コラム 応用行動分析学の基礎知識
- 6.【事例】こんな時どうする?気になる行動への支援
- 事例1 小学校2年生の男児です。ルールを頑なに守ろうとします。自分だけでなく,守らない人をよく注意し,トラブルになります。
- 事例2 小学校6年生の男児です。相手に失礼なことを言ってしまいます。たとえば,太っている人を見かけると,「太っている!」と言ってしまいます。
- 事例3 騒音や人混みが苦手です。どうもざわつくような音が苦手なようです。そのため多人数の集団場面に参加しにくいようです。
- 事例4 よくパニックになってしまいます。その時には,泣き叫び,止めようとすると叩いたり,噛んだりします。
- 事例5 小学校1年生の男児です。こだわりが強く,やめさせようとすると怒り出します。
- 事例6 中学校3年生の男児です。何回注意しても,同じ話をくり返ししてきます。なんとかやめさせたいのですが…
- 事例7 学校ではおとなしいようで,学校の先生からは問題がないと言われていますが,家に帰ってくると,とたんに泣き始めたり,怒り出したりします。
- 事例8 小学校5年生の男児です。「死にたい」「僕なんかいなければいいんだ」と言います。心配で仕方ありません。どうすればよいでしょうか?
- 事例9 ご機嫌なときはよいのですが,イライラしている時には,どのように対応すればよいでしょうか?その時には,表情は険しく,何を言っても怒り出します。
- 事例10 小学校3年生の男児です。学校に行きたがりません。どのように対応すればよいでしょうか?
- 資料
- *発達障害に関連する精神医学的診断基準
- *発達障害者支援法
- *全国発達障害者支援センター一覧
- *親の会(高機能自閉症・アスペルガー症候群活動グループ)一覧
- *サポートブック
- *サポートブック記入例
- *個別の支援計画書式サンプル
- ・児童生徒用支援計画
- ・プロフィールシート
- ・保護者への配慮事項
- ・フェイスシート
- *行動観察シート
- *行動頻度観察シート
- *ストラテジーシート
- おわりに
- 著者紹介
はじめに
平成19年は特別支援教育元年となりました。本書は書名で示されているように特別支援教育にはじめて取り組む担任の先生と親御さんを対象にしています。
担任の先生の立場からは,特別支援教育に取り組む際の疑問に答え,具体的な指導計画を作り,実践のサポートをすることを目的としています。また親御さんの立場からは,特別支援教育の仕組みや学校での取り組みについて,直接担任の先生に聞きにくいことがらの解説も入れています。
先生用に書かれた章も親御さん向けに書かれた章もどちらも読んでいただければ相互の理解が進むのではないかと思います。私たちは,よく「自閉症」の対人関係の困難性を問題にします。しかし,彼らの支援のためにまず必要なことは,周囲の大人たちの対人関係やコミュニケーションやこだわりの問題の克服ではないかと思うのです。教師と親がわかり合えないという悩みは,学校からも親からも聞かれます。「子どものために」まずお互いの立場や気持ちを理解することから始めてほしいと願っています。
本書は専門用語をできるだけ使わずに,保護者とのかかわりや校内ミーティングの方法,行動面での問題に対する具体的取り組みなど特別支援教育に必要な内容を幅広く,かつわかりやすく解説したつもりです。また,本書の著者である両名は,いずれも応用行動分析学をベースにし,自らも発達障害のある子どもたちの教育を行い続けてきた臨床家です。したがって本書の中身も自らの実際の臨床経験や臨床研究に根ざしたものになっており,具体的な実践に踏み込んだ内容になっています。本書が担任の先生や親御さんの悩みに応え,子どもたちの学校生活や家庭生活を楽しく,また夢のあるものにするためのきっかけになれば幸いです。
本書のイラストは高機能自閉症の診断を受けた当事者であり,現在は筆者のよきパートナーでもある伊丹宏太郎氏の協力を得ました。氏は現在専門学校にてアニメ・コミックの専門家を目指して勉強中です。レポートの合間をぬってご協力頂いたことに深く感謝するとともに,夢に向かって日々努力されている氏に大きなエールを贈りたいと思います。
本書の計画が立ちあがるまで,著者二人はともに臨床活動,研究,ゼミ指導,授業,地域支援などで飛び回り,学内でも十分に話をする時間を確保することが難しい状態でした。私にとっては“本書の執筆”という環境設定によって,互いの原稿を読みあい,議論するという充実した時間を過ごすことができました。このような機会を与えて頂きました明治図書の佐藤智恵氏,そしてなによりも共著者の井澤信三先生に深く感謝いたします。
2007年4月 /井上 雅彦
また、Q&A形式、事例、サポートブックなど書式資料という構成もそつなく特別支援教育のポイントをおさえていて役に立つ。
しかし何より気に入ったのは著者の子どもへの愛情が行間からにじみ出ているところだ。例えば、子どものこだわりへの対応として、他者に迷惑をかけるなどとても困ることでなければ…たとえばぬいぐるみを持ち歩くとか…ならば認めて、ただし持つのを手伝わない、など対応をとるとよいといった記述がある。パニック、こだわりは問題行動として是正すべきもの、何とか皆と同じにできるよう指導・対応を、と思っていた自分には目からウロコだった。自閉症がある子どものしんどさ(つらさ)を理解しつつ社会ですごせるようにおりあいをつけると生きやすいよ…と本書は導いているようであたたかい。