- はじめに
- 第1章 3日あれば,数百mを泳げる
- (1)今まであんなに泳げなかったのはなんだったんだろう/ (2)松前小「初心者水泳教室」/ (3)日本テレビ「伊東家の食卓」
- 第2章 「泳げる」とは?〜泳法とサバイバルスイミングの関係〜
- (1)息づぎができたら/ (2)泳げるとは溺れないこと/ (3)「漂う」こととは/ (4)「泳ぎ」を浮き沈みの視点から見る/ (5)サバイバルスイミング/ (6)泳法とサバイバルスイミングの関係
- 第3章 泳げる原理・原則があるはずだ
- (1)向山式跳び箱指導法/ (2)鈴木勘三式水泳指導法
- 第4章 泳げるようにするための理論とは
- (1)なぜ泳げないのか/ (2)赤ちゃんが歩けるまで,泳げない子が泳げるまで/ (3)子供の能力は本当に25m?/ (4)阻害しているものを除く/ (5)なぜバタ足(キック)がいけないのか/ (6)2つの動きの連携をつくってから3つ目の動きを加える/ (7)陸上ですら苦しいことを水中でさせている/ (8)バタ足をさせないもう1つの理由/ (9)バタ足をさせなければ何百mも,数千mも泳げる/ (10)ヘルパーをつけてゆったりと/ (11)2つの動きの連携をつくる「連続だるま浮き」/ (12)準備運動とは
- 第5章 必需品ワンタッチヘルパー
- 第6章 すべての子を泳げるようにする指導ステップ
- (1)体に水をかける/ (2)水遊び(水の中を歩く)/ (3)足から飛び込む/ (4)潜る(水中で息を止める)/ (5)だるま浮き/ (6)ボビング/ (7)連続だるま浮き/ (8)水中ヘリコプター/ (9)クラゲ足平泳ぎ/ (10)クラゲ足平泳ぎ+キック/ (11)クロール/ (12)バタフライ/ (13)背浮き・ちょうちょう背泳ぎ・背泳ぎ/ (14)ちょうちょう背泳ぎが困難な子の指導
- 第7章 「初心者水泳教室」全発問・全指示
- (1)バディをつくる/ (2)更衣〜準備運動/ (3)足飛び込み/ (4)止息,吐息(ボビング)/ (5)だるま浮き/ (6)連続だるま浮き/ (7)手を伸ばした連続だるま浮き/ (8)足も伸ばした連続だるま浮き(=クラゲ足平泳ぎ)/ (9)キックをしない/ (10)記録に挑戦
- 第8章 溺れる子をなくすために〜深さへの対応を核としたサバイバルスイミング〜
- (1)危機管理の視点に気付かされた荒木氏との出会い/ (2)「着衣泳」の追試/ (3)「着衣泳」,言葉が一人歩きしている/ (4)溺れる根本的な原因/ (5)なぜ,島の子は深さに平気なのか/ (6)水に落ちた瞬間/ (7)危機の際の行動パターンを教える/ (8)様々な危機場面を教える/ (9)ラヌーの浮標と連続だるま浮き
- 第9章 障がいがあっても泳げる
- 第10章 追試
- (1)背浮き,ちょうちょう背泳ぎ,連続だるま浮きを追試して/ (2)ラヌーの浮標と鈴木式/ (3)追試のお願い/ (4)追試がうまくいかない原因と対策
- 第11章 学習指導要領への提案
- (1)学習指導要領がほんの少し変われば/ (2)浮き続ける技能と深いプール
- 第12章 中高年の泳げない方に
- おわりに
はじめに
泳げない子をなくす,そして溺れる子をもなくす,それが本書の願いです。
この本に書いた指導法は非常に簡単です。
だれでも,泳げない子を泳げるようにすることができます。
私は小学校教師です。小学校の先生のために授業の中だけで500m程度の泳力をつける方法を紹介します。もちろん「泳げない子の水泳教室」など特別な指導はしません。
小学校のほとんどの先生は「授業の中だけで全員を泳げるようにするのは無理」「全員を泳げるようにするためにはスイミングスクールに通わせないと」「泳げない子の水泳教室を開いて,特訓をしないと全員を泳げるようにするのは無理」と思っているようです。
私は小学校,中学校,高校と泳げませんでした。コンプレックスを持ち続けてきました。高校生の頃にはどんなに猛暑の日であってもプールの青い水面を見ただけで嫌悪感が走っていました。大学では教員養成課程の必修科目である水泳実習から逃げ続けました。泳げないというコンプレックスが毎夏私を襲っていたのです。
教師になって「私のような思いを目の前の子供たちには味わわせたくない」「何とか泳げるようにさせたい」と思い続けていました。
『泳げない子をなくすこと』,それが私の教師としての痛切な願いだったのです。
これまで32年間,何人もの泳げない子にいろいろな指導を試してきました。
そして,25mすら泳げない小学4〜6年生の多くは,実に簡単に,
3日あれば,数百mを泳げる
ようになることを発見しました。例えば,愛媛県伊予郡松前町立松前小学校では毎年25mを泳げない4,5年生を対象に「泳げない子の水泳教室」を3日間開いているのですが,この水泳教室でも数百mを泳げるようになる子が続出しているのです。
この本では,どのような指導をしたのか紹介します。また,なぜ泳げるようになるのかその理論を説明します。
「えっ,何だこんな簡単なことで…」と,きっと思われるに違いありません。「コロンブスの卵」と同じようなものです。
でも,最初から簡単に見つかったわけではありません。試行錯誤の末,ようやく見つかったのです。見つかってしまえば,本当に本当に簡単なことでした。
もし,この本を読んでいるあなたが学校の先生なら,実技を示すことができなくても指導はできます。ピアノを弾けない先生が,ピアノを教えることは非常に困難ですが,この方法は実技ができなくても泳げるようにすることができるのです。理論を理解し,あることをさせないだけでよいのです。
誰がやっても同じ効果があります。
もし,あなたが長年泳げないというコンプレックスを持ち続けている中高年の方であれば,まるでウソのようにコンプレックスが解けていくことでしょう。
もし,あなたが小学生なら自分一人で練習しても泳げるようになります。自分一人で練習しても大丈夫です。
もし,あなたがスイミングスクールのコーチなら,スクールの子供たちの平泳ぎのかきとキックのタイミングを10分で修正できるでしょう。そう,北島康介選手のような平泳ぎに。
もし,あなたが水難事故防止に関わっている方なら,この考え方・方法が水難事故防止に大きな効果があることを確信してくださるに違いないでしょう。
本書によって,一人でも泳げない子をなくすことができれば,また,水難事故で溺れる子を一人でもなくすことができれば,著者としてこの上ない幸せです。
本書と合わせてDVD『「水泳」の教え方』(明治図書刊)を御覧ください。
本書で理解した動きをDVDでイメージできます。
中でも,泳げるための裏技であり,しかも水難事故防止にも効果的な「連続だるま浮き」は必見です。
/鈴木 智光
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- 明治図書
- 水泳が苦手な子への支援を考える上で、大変参考になりました。2016/3/1830代・小学校教員