- はじめに
- T 特別支援教育の基礎知識
- [日本の特殊教育から特別支援教育への潮流や「新しい障害観」への変遷について解説します]
- 1 特別支援教育への転換と特殊教育
- 2 基本となる答申等について
- U 特殊教育から特別支援教育への転換
- [特別支援教育の対象となる枠組みから特別支援教育を進めるためのシステム他についてキーワードを示し解説します]
- 1 特殊教育から特別支援教育へ
- 2 特別支援教育の対象となる枠組み
- 3 盲・聾・養護学校から特別支援学校へ
- 4 小・中学校における特別支援教育の推進
- 5 特別支援教育を進める上でのシステムとして
- 6 特別支援教育を進める上での3つのキーワード
- V 障害についての基礎知識
- [LD,ADHD,PDDや従来からの障害種についての基礎知識と教育的対応について解説します]
- 1 LDについて
- LD(学習障害)とは/LDの判断基準/LDの教育的対応/LDの子どもの特性に応じた指導方法について
- 2 ADHDについて
- ADHD(注意欠陥多動性障害)とは/ADHDの判断基準/ADHDの教育的対応/ADHDの子どもの特性に応じた指導方法について
- 3 高機能自閉症について
- 高機能自閉症とアスベルガー症候群/高機能自閉症等の判断基準/高機能自閉症等の教育的対応/高機能自閉症等の子どもの特性に応じた指導方法について
- 4 広汎性発達障害について
- 広汎性発達障害とは/広汎性発達障害の教育的指導について―知的障害のある自閉症の子どもの特性に応じた指導を考える上での観点―
- 5 言語障害と情緒障害について
- 言語障害とは/情緒障害とは
- 6 視覚障害について
- 視機能の障害とは/視覚障害の分類/盲児に見られる行動の特徴/弱視児に見られる行動の特徴/視覚障害の教育的対応/視覚障害のある子どもへの教育対応/小・中学校における弱視の子どもへの教育的対応
- 7 聴覚障害について
- 聴覚障害とは/聴覚障害のある児童生徒に見られる行動の特徴/聴覚障害の教育的支援/聴覚障害のある生徒の就労・自立支援について
- 8 知的障害について
- 知的障害とは/知的障害のある児童生徒に見られる行動の特徴/知的障害と重複障害/知的障害の教育的対応/知的障害の児童生徒の具体的ケースとその指導について
- 9 肢体不自由について
- 肢体不自由とは/肢体不自由児童・生徒に見られる行動等の特徴/肢体不自由の教育的対応/肢体不自由の子どもの具体的ケースとその指導について
- 10 病弱・身体虚弱について
- 病弱・身体虚弱とは/病気の子どもの教育機関/特別支援学校(病弱)の役割/特別支援学級(病弱)では/病気の子どもに見られる行動の特徴/病気の子どもに対する教育的対応
- 11 医療的ケアについて
- 医療的ケアとは/医療的ケアの現状/医療的ケアの課題/具体的ケースとその対応
- 12 自立活動の指導について
- 障害のある子どもと自立活動/自立活動の歴史的経緯/教育課程における自立活動の位置づけ/自立活動における5つの指導内容と22項目/知的障害者を教育する養護学校の自立活動の特色/自立活動における具体的指導について
- W 障害者自立支援法等について
- [これまでの障害者福祉と発達障害者支援法などのことを踏まえ,福祉と教育の連携の必要性を解説します]
- 1 障害者自立支援法の概要
- 2 発達障害者支援法の概説
- 3 福祉と教育の連携の必要性
- X 特別支援学校の役割について
- [学校と教員に求められる専門性と個に応じた指導計画と保護者との関係について解説します]
- 1 学校と教員に求められる専門性とは
- 2 個に応じた指導計画と保護者との関係
- Y 小・中学校における特別支援教育について
- [小・中学校での発達障害のある児童生徒の理解と指導のあり方や具体的な指導内容について解説します]
- 1 小・中学校でLD・ADHD・高機能広汎性発達障害の 支援をすすめるにあたって
- 2 小・中学校における校内支援体制と市町村の巡回相談体 制
- 3 発達障害のある子どもの理解と教員に求められる資質
- 4 小・中学校特別支援教育コーディネーターの役割と連携 のあり方
- 5 通常の学級における支援のあり方
- 6 学校行事での対応
- Z 保護者との連携で大切にしたいこと
- [障害の理解と受容,保護者への支援のあり方などについて考え,教育相談における配慮について大切となる事項について解説します]
- 1 障害の理解と受容について,そのサポートのあり方
- 2 保護者と共につくる個別の指導計画と個別の教育支援 計画のあり方
- 3 教育相談で大切にしたいこと
- 4 保護者懇談会・家庭訪問で大切にしたいこと
- 5 保護者のニーズに応える学校組織のあり方
- [ 卒後の進路について
- [障害のある生徒の進路指導と就労支援について解説します]
- 1 特別支援教育における進路指導
- 2 特別支援学校及び小中高等学校における進路指導の課題
- 3 多様な障害種に対応した進路指導
- 4 就労支援を展開する関係機関との連携
- 5 障害のある生徒の自立を促す学校教育のあり方
- \ 支援に必要なツールについて
- [支援に必要なツールについてと実態把握からアセスメントなどの方法を解説します。特別支援教育コーディネーターの必須アイテムです]
- 1 個々のニーズに応じた支援ツール
- 2 実態把握とアセスメントについて
- 3 個に応じた補助・代替コミュニケーションの活用
- 4 支援をつなぐ関係機関との連携マップ
- 5 特別支援教育コーディネーターが必要とする支援ツール
- ] これからの特別支援教育の課題
- [これからの特別支援教育を進める上での学校組織のあり方の工夫やネットワークの構築について学びます]
- 1 個に応じた支援を可能とする学校組織のあり方
- 2 特別支援教育の充実をめざしたネットワークづくりと キーパーソン
- 3 保護者に寄り添った支援の展開のあり方
- おわりに
はじめに
一人一人の子どもの教育的ニーズに応じて,適切な指導や必要な支援を行う特別支援教育は,全ての先生の課題となった。言葉を変えれば特別支援教育の理念が,すべての子どもの教育の理念となったと言っても過言ではない。その意味で通常の教育と障害児教育の境界線がなくなったとも考えられる。まさに戦後の教育改革の中でも,歴史に残る大きな転換である。
これまでも,障害児教育は教育の原点と言われてきた。自立に向けて一人一人の可能性を最大限に育むことを目指していること,教育内容・方法の開発について,いつの時代にもチャレンジしてきたことなどが,その理由とされている。
本書はすべての先生が,「特別支援教育」の基本的考え方と教育実践上の観点について,広い視野に立って理解していただくための,よりどころになることをねらいとしている。すでに多くの類書がある中で,障害児教育の経験がない通常学級の先生,これから特別支援学級(学校)の先生を目指す人,特別支援学級の担当者,教職課程を履修している大学生を想定して,入門書としての役割,より深く理解するための手がかり,あるいはテキストとして,できうる限り幅広く内容を取り上げた。いわば「特別支援教育を理解し実践するための基礎知識として最小限必要な内容(ミニマム・エッセンシャルズ)」で構成した。
特殊教育から特別支援教育への転換に伴い,その理念や基本的考え方は答申等に示されている。文部省特殊教育課が文部科学省特別支援教育課に改称されたのが平成11年1月であった。その後,矢継ぎ早に多くの答申・通達等が出され,調査研究,実験学校の指定など,めまぐるしく改革が進められてきた。したがって,特別支援教育は実施されてすでに5年余が経過しているとも考えられる。まず答申等によりその流れを整理して,基本的理解を深めることが大切である。
残されていた課題の一つである法制度の改正に関しても,学校教育法等の一部改正に関する法律案が平成18年6月15日に成立し,平成19年4月1日から施行されることとなった。
これに伴い,第一に盲・聾・養護学校は,特別支援学校に一本化されること。第二に特殊学級(障害児学級)は,特別支援学級となること。答申で当初示された特別支援教室(仮称)については,今後の検討課題となっていること。第三に,特別支援学校については,専門性とセンター的機能の充実を図ること。第四に通級指導教室については,新たにLD・ADHD・高機能自閉症が指導対象となること。この大きな節目に当たり,心機一転,一人でも多くの先生が,特別支援教育の実践に取り組んでいただくことを願ってやまない。
人生はリレーである。それぞれが自らに託されたバトンをしっかりと握り締め,走るべき道程を走りぬき次の走者にきっちりとバトンを渡さなければならない。特別支援教育は,特殊教育の時代に培われたノウハウの良い面を生かしながら,新しいシステムの中に再構築することが必要である。一人一人がそれぞれのところで,特別支援教育の充実と発展のために力を尽くせればと思う。
2007年1月 編著者
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- 明治図書