- はじめに
- 序章 未来につながる ほめ言葉
- T章 ほめ言葉 ここがポイント!
- §1 最初の一歩
- 1 思いをこめて
- 2 I(愛)でいこう
- 3 ストライクゾーンに入れる
- 4 具体的なもので
- 5 だれによってほめられる?
- 6 常に深化
- §2 どこでほめる?
- 1 結果で・過程で
- 2 動機で
- 3 目標を設定してほめる
- 4 モデルにしてほめる
- 5 意味ある場としてほめる
- §3 ほめ方アラカルト
- 1 すぐVSあとで
- 2 大きくVS小さく
- 3 言葉でVS文章で
- 4 直接VS間接
- §4 あきらめないほめさがし
- 1 どんなときも
- 2 自信がないときにも
- 3 とうとう
- 4 変わろうとしているときにも
- 5 視点をかえて
- §5 ほめの風土をつくろう
- 1 習慣をかっちりと
- 2 ほめは平等に
- 3 よさを見つけられる場づくりを
- 4 素直に受け止める
- §6 ほめの応援団づくり
- 1 親がかわる
- 2 親もほめる
- 3 子どもからほめる
- 4 キャッチボールの関係づくりを
- 5 さびしい子こそたっぷりと
- §7 ほめの考え方を広げて
- 1 引き出しを増やそう
- 2 先輩をまねする
- 3 表情でほめる
- 4 ヒントはあらゆるところに
- 5 表情を見抜く
- 6 おとなをほめる
- 7 ほめることは,自分も試されている
- 8 加点主義でいこう
- §8 次への「ほめ場」へ
- 1 その気にさせる
- 2 まきこむ
- 3 ほめの重ね塗り
- 4 「広報」支援
- 5 学校全体で
- 6 終わりこそ 心をこめて
- U章 ほめ言葉 ワールドへ(実践編)
- §1 こんな場のこんな子どもたちには
- 実践例@ ほめる機会を学級経営に常設する
- (1)低学年での実例「今日のチャンピオン」で終わる,帰りの会/(2)高学年での実例「みんなから見た自分」/(3)全学年での実例「がんばった君に」/(4)高学年での実例「日記」/(5)全学年での実例「がんばった人を認め合う自習」
- 実践例A 課題を抱えている児童へのかかわりとほめ言葉
- (1)派手な服装や言動で注目を集めるA子との出会い/(2)A子の内面に目を向けて/(3)「つながり」を求める子どもたち/(4)感情の起伏の激しいB男との出会い/(5)頑なな気持ちを和らげる言葉がけ/(6)母親との協力体制づくり/(7)子どもたちの力のすばらしさ/(8)実践を振り返って
- 実践例B 自信につなげるほめ指導
- (1)荒れたクラスの子どもたちから学んだこと/(2)ほめ指導作戦/(3)ほめるところを見つけるために
- 実践例C 一人をほめて,集団を育てる学級経営
- (1)はじめに/(2)OKサイン一つで子どもが変わる,クラスが育つ〜低学年〜/(3)集団を意識したほめ方でクラスが変わる〜中学年〜/(4)ほめる種を植えながら,個と集団を育てる〜高学年〜/(5)教師の意識(事前準備)が子どもたちを変えていく〜全学年共通〜
- §2 エンカウンターでほめ風土をしくんで
- 【小学校】
- エクササイズ〈1〉それが あなたの いい と・こ・ろ
- エクササイズ〈2〉ポーズでお話
- エクササイズ〈3〉今日のスポットライト2 〜それが あなたの いい と・こ・ろ〜
- エクササイズ〈4〉あくしゅで さようなら
- 【中学校】
- エクササイズ〈1〉友達の良いところ探し
- エクササイズ〈2〉そのことば,チョー気持ちいい!
- エクササイズ〈3〉体育祭の思い出をワークシートに
- エクササイズ〈4〉私の心を温かくしてくれた言葉
はじめに
ほめて育てる
という言葉は育児書・教育書は及ばず,部下の育て方として経営指南書でも語られる。
ほめる → 認められて嬉しい → 自信を持つ → やる気になる → 伸びる というプラスの連鎖で,赤ちゃんから大人まで育っていくという道筋は素直に理解できる。
でも,どうやってほめればよいのか…
いいね いいね さすがだね やっぱりね できるね すごいね
とほめ言葉は数々とでてくる。そのほめ言葉をじょうろに入れて,水をかけるかのように子どもに毎日かけていれば,すくすくと育つのか。それを連発していれば伸びるのかといえば疑問である。
アメリカ人は,何でもほめることは侮辱に近いという感情を持つと聞いたことがある。「○○ちゃん よくできたわね。」「えらいわー。」「さすがお兄ちゃん。」「お母さんもうれしいわ。」とずっと子どもにほめ言葉をかけている母親と一緒になったことがある。きっと母親の育児書には「ほめて育てろ」というフレーズがあったに違いない。しかし,相手側の小学校3年ぐらいの子どもは母親の明るい表情とは裏腹に,無愛想で「もうたくさん」といううんざりした顔であった。こうなるとよかれと思って実践している母親にもそれを受けている子どもにも悲劇である。「何でもほめる」はやりすぎだろう。限度がある。
大事なことは,「何でもほめる」ではない。「何を」ほめるかである。
どこにポイントをおいてほめるかである。
ほめる側にとっても,ほめられた側にとっても,双方がプラスとなるほめ方を学ぶべきである。
このほめ方についてのスキルを紹介するのが本書である。
学校という限られた空間ではあるが,教師の「ほめ方道」(もし,そういうものがあるとすれば…)について絞ってまとめてあるので,一読してほしい。
T章ではポイントをまとめ,U章は実践編として二つ取り上げた。
§1では,4名の先生方によるさまざまな角度からの実践例で,より具体的に「ほめ方道」がイメージできると思う。
§2は,エンカウンターを活用した実例であり,8つのエクササイズを紹介した。
私が大切だと思うことは,その次の一歩である。どんなによい実践を聞いても読んでも,「ふーん なるほど」と思っただけでは聞かなかったり,読まなかったりしたことと変わらない。そこから,自分なりにまねしてやってみる・挑戦してみることが,私たちの伸びにつながる。
皆さんの前向きな心が,明日の子どもたちを育てる。ぜひ取り組んでみてほしい。
学習指導要領が変わり,変わらなければならない教育課題をたくさん抱えている現場である。もちろんその研修は着実に積み重ねていかねばならない。
でも,新たな取り入れの時にこそ,その土台に「子どもと子ども」「子どもと私たち」の人間関係が温かく柔らかいつながりであることが大事であろう。
その子を認める,励ます,ほめる言葉が行き交う学級・学校こそ,新たな道に挑戦するための受け皿が整っていると考える。
この本がささやかな力となり得て,皆さんから,「この本のここが役立ちました。」という上手なほめ言葉をいただけたら,とても幸いである。
平成23年12月 編者 /山宮 まり子
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- 明治図書