- はじめに
- 序0章 「ボランティア体験学習」を通して育てたいもの
- 1 21世紀の教育がめざす「生きる力」とは?
- 2 学校教育における「福祉教育」とは?
- 3 教育改革プログラムに見られる「ボランティア教育」とは?
- 4 「ボランティア体験学習」を通して育てたいものは?
- 【調査資料】
- 1 震災時のボランティア経験の有無と内容
- 2 災害ボランティア活動への参加意欲の有無
- <作文> お母さんの用事
- 第1章 ボランティア教育をすすめるために
- 1 「ボランティア」という用語の意味は?
- 2 わが国の「ボランティア教育」のあゆみは?
- 3 青少年によるボランティア活動の現状は?
- 4 青少年のための「ボランティア活動の推進施策」は?
- 5 学校教育におけるボランティア教育の推進施策は?
- 6 社会教育におけるボランティア教育の推進施策は?
- 7 学童・生徒のボランティア活動普及事業とは?
- 8 ボランティアセンターの種類は?
- 9 「社会福祉施設」の種類は?
- 10 社会福祉施設におけるボランティア活動は?
- 11 新しく制定された「NPO法」とは?
- 12 ボランティア活動で使用される専門用語とは?
- 【調査資料】
- 3 「ボランティア」という用語の周知度
- 4 ボランティア体験の有無と内容
- 5 ボランティア活動の意義
- <作文> みっちゃん,がんばれ!
- 第2章 学校におけるボランティア教育
- 1 ボランティア活動の教育的意義とは?
- 2 「生きる力」を育むボランティア教育とは?
- 3 改訂学習指導要領におけるボランティア教育とは?
- 4 高等学校や大学におけるボランティア教育とは?
- 5 入学試験などでのボランティア活動の評価とは?
- 6 ボランティア教育を行うにあたっての留意事項とは?
- 7 ボランティア体験学習の指導方法とは?
- 8 実践@「総合的な学習の時間」におけるボランティア体験学習(小学校)
- 9 実践A「学校支援ボランティア」と共に取り組むボランティア教育(小学校)
- 10 実践Bボランティア団体と連携したボランティア体験学習(中学校)
- 11 実践C障害のある子どもたちによるボランティア体験学習(障害児学級・養護学校)
- 【調査資料】
- 6 ボランティア教育についての学習意欲
- 7 高齢者問題に関するボランティア活動への参加意欲
- 8 障害者問題に関するボランティア活動への参加意欲
- 9 環境問題に関するボランティア活動への参加意欲
- <作文> わたしたちは,ボランティア!
- 第3章 家庭や社会におけるボランティア教育
- 1 家族ぐるみのボランティア活動とは?
- 2 親子リフレッシュ・プログラムとは?
- 3 子どもの「社会参画」へのステップとは?
- 4 「児童の健全育成」をめざしたボランティア活動とは?
- 5 「完全学校週5日制」に向けてのボランティア活動とは?
- 6 勤労青少年のためのボランティア活動とは?
- 7 在宅している人たちの「生活支援」とは?
- 8 地域で暮らすための「在宅サービス」とは?
- 9 実践D子どもボランティアによる消費者活動(消費者団体)
- 10 実践E学校と地域が連携して取り組むボランティア活動(小学校・地域福祉委員会)
- 11 実践F地域における多様なボランティア教育実践(高等学校)
- 12 実践G地域ぐるみの「青少年ボランティア・フェスティバル」(ボランティア団体)
- 【調査資料】
- 10 ボランティア活動をする時間の問題
- 11 ボランティア活動情報の発信
- 12 地域におけるボランティア活動への参加意欲
- <作文> 空き缶ひろい
- 第4章 海外におけるボランティア活動事情
- 1 イギリスのボランティア活動の起源は?
- 2 イギリスのボランティア教育の実践は?
- 3 イギリスのボランティア教育の特徴は?
- 4 イギリスの青少年による「社会参加活動」とは?
- 5 イギリスの「ナショナル・トラスト運動」とは?
- 6 イギリスの「コミュニティケア改革」とは?
- 7 アメリカのボランティア教育の実践は?
- 8 アメリカの青少年のボランティア活動への参加状況は?
- 9 アジアの青少年によるボランティア活動は?
- <作文> 地球を緑と子どもたちの笑顔でいっぱいにしよう!
- おわりに
はじめに
いま,世界では“Volunteer Learning”と呼ばれる教育実践が積極的に推進されています。1960年代から試みられているこの教育実践は,多くの国々の教育関係者の努力によって,『21世紀の教育を拓く教育改革』の一つとして確実に広がり続けていると言ってもよいでしょう。それは,ボランティア活動が,自らの自由意志でもって主体的に社会に参加し,自分たちとのかかわりを通しながら,生きとし生けるものと『共に生きる』という地球市民としての資質を磨くために役立つばかりでなく,子どもたちにとって,「生涯にわたる学びの質」を決定する重要な体験となるからです。
わが国においても,平成8年(1996)7月に文部大臣へ提出された中央教育審議会の『21世紀を展望した我が国の教育のあり方について』と題した第1次答申において,『これからの教育のあり方としては「生きる力」(ability to survive)を育むことが重要である』と提言して以来,「生きる力」がキーワードとなり,21世紀を生きる子どもたちに必要な資質・能力として位置づけられました。
そして,平成10年(1998)12月には小・中学校の改訂学習指導要領及び幼稚園の改訂教育要領が,続いて平成11年(1999)3月には高等学校及び特殊教育諸学校の改訂学習指導要領が告示されました。そして,「生きる力」を育成するための実践的で創造的な教育プログラムとして「ボランティア活動」の重要性が示唆され,その教育的意義が初めて明文化されたのです。
したがって,学校教育においては,ボランティア教育の意義と役割を正しく理解するとともに,子どもたちが体験を通してその教育的価値を発見し,探求できるように支援することが求められています。くわえて,子どもたち自らがボランティア活動に取り組もうとする意欲や態度を育み,ボランティアとしての資質を体得するため,教育の場においてボランティア活動への「動機づけ」や「きっかけづくり」などをはじめとする『ボランティア教育』を実践するなど,ボランティア活動の「学びのフィールド」を,いかに暮らしのなかに準備するのかが問われているのです。
しかしながら,このようなボランティア教育を教科指導と同様に受け止める場合には,「新しい教育は授業に取り入れるゆとりがない」「他の教科の指導が遅れる」「指導書や副読本がないと指導できない」,だから「ボランティア活動は教育の場に馴染まない」という極論が聞かれることになります。
そもそも学校は,競争よりも「協調と連帯」を学ぶ場であり,それは,学校教育の目標であり,学校教育が本来内在している目的でもあります。換言すれば,学校では学習のために「協調と連帯」するのではなく,「協調と連帯」することが教育の目的なのです。ところが,もともと人間にとって手段であるはずの知識や技術が,いつのまにか目的として受け止められるようになった今日,学校教育の本来的な機能が希薄になっているのではないでしょうか。したがって,学校は『助け合いのなかで学ぶ』という人権尊重を理念とした「人間理解と人間関係」を直接体験しながら学習する場であり,お互いの「心の絆」を確かめ合い,強め合う『人間中心の教育』を推進する絶好の機会でもあるという原点に立ち返る必要があるのです。
このような現状をふまえ,学習指導要領改訂の中核的なねらいとして,『豊かな心をもち,たくましく生きる人間の育成』が標榜されています。すべての子どもたちが社会の変化の荒波に押し流されることなく,「主体的に生きぬくための資質や能力を養ってほしい」という願いが込められているのです。そして,そのためには,「他人を思いやる心」や「公共のために尽くす心」の育成など,子どもの人間形成を図るうえで重要な意義をもつ『ボランティア教育』が極めて大きな役割を果たすと考えられているのです。
自発性や主体性の習得を発達課題とする子どもたちが,ボランティア教育を通して,自発的に「自分も社会の一員としての役割を果たしたい!」という社会への貢献活動に目覚め,「よりよい自分づくりをしたい!」という主体的な生き方を自覚した人間として育つことは,これからの教育が最も求めるところなのです。
このように考えると,学校におけるボランティア教育は,多様な価値観を共有できる「人間関係づくり」を行うために,最も基本的な機会と場を提供する重要な教育活動として位置づけることができるでしょう。また,ボランティア教育は,『自ら考え,主体的に判断する人間を育成する』という学校教育の目標と整合することから,学校においては決してマイナーな教育ではなく,改訂学習指導要領において新設された「総合的な学習の時間」の中心的なテーマとしても位置づけられるのではないでしょうか。
わたしたちは,『教育は公共の福祉に活用されてこそ,はじめて真の目的を果たしうるものである』ことを改めて銘記すべきでしょう。
本書では,「ボランティア教育とは,人や自然環境をも含めた,生きとし生けるものとの『共生』をめざして,自立した市民として社会参加するために(公共性),活動意欲を高め(自発性),見返りを求めず(無償性),創意工夫して取り組む(先駆性)ことを支援する営みである」ととらえ,「学校教育の中に,ボランティア体験学習を果敢に取り入れていこう!」という思いを込めて,書名を『ボランティア教育のすすめ』としました。
ボランティア教育をすすめるにあたっては,「いかにしてボランティア教育を行うか」という方法上の問題に終始することなく,「ボランティア教育がめざすものは何か」というボランティア教育の本質を理解したうえで取り組むことの重要性を訴えたいと考えたからです。
そこで,筆者が主宰する大阪ボランティア教育研究会でのボランティア相談事業において,たびたび質疑を受けてきた相談内容を『ボランティア教育実践のためのQ&A』としてまとめることにしました。また,学校や家庭・地域社会におけるボランティア教育の先進的な「実践事例」や,同研究会が毎年実施している『青少年のボランティア活動に関する意識調査』(1996)の中から抜粋した調査資料を,第一線で活躍するボランティアのコメントを添えて紹介することにしました。
今後,それぞれの学校や家庭・地域社会などでボランティア教育をすすめるにあたり,具体的な方策を考える際のマニュアルとして本書が役立つことを願っております。
編著者 /角田 禮三
また、ボランティアグループ、大学生、教員などから見た調査資料の結果への意見や考え方には興味をもてました。それぞれの立場で小・中・高生の気持ちから考える人もいれば現代社会の問題の背景から考える人もいるなどさまざまな視点からの問題解決策はとても考えさせられました。
この本は学校教育の中でボランティアをどう取り扱っていくのかを具体的に示してあるので、とても参考になる。
この本の中でイギリスやアメリカなど、外国のボランティア事情なども掲載されて、ヒントがもらえたように思います。
また、小さい頃からのボランティア教育の重要性や、教育関係者からボランティア活動への取り組みが研究されている事を知って、福祉社会の実現には、福祉・教育の連携が不可欠だと思いました。
いろんなヒントが得られて良かったと思います。
学校教育のなかでボランティアの重要性が叫ばれている割にいい本がありませんでしたが、すっと読み通すことができました。