国語科学習指導過程づくり―どう発想を転換するか
―習得と活用をリンクするヒント

国語科学習指導過程づくり―どう発想を転換するか―習得と活用をリンクするヒント

投票受付中

書評掲載中

従来の発想を転換した新しい学習指導過程を提言!

従来の国語科の学習指導過程の発想を転換し、「導入」の前に「〇次」段階を位置づけることで、一人ひとりの子どもたちがいかに主体的かつ意欲的に生き生きと国語科の学習活動を展開するのかを具体的な実践事例を通して明らかにする。


復刊時予価: 2,244円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: 未販売

電子化リクエスト受付中

電子書籍化リクエスト

ボタンを押すと電子化リクエストが送信できます。リクエストは弊社での電子化検討及び著者交渉の際に活用させていただきます。

ISBN:
978-4-18-045112-8
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 116頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第一章 なぜ、学習指導過程の発想の転換なのか
T 学校知を生活知に活かし、学ぶ意欲を喚起する「活用」段階
1 はじめに
2 従来からの一般的な学習指導過程
3 「活用」段階を位置付けた学習指導過程
4 学校で学ぶ知識・技能と生活との結び付き
U 子どもの興味・関心や課題意識を醸成する「0次」段階
1 追い風となった「活用」
2 「活用」概念の変容
3 国語科における「活用」
4 新たな課題に対応する「0次」段階
5 発想を転換した学習指導過程
第二章 子どもの興味・関心や課題意識を醸成する「0次」段階の実践事例
T 実践1 学校に働く自動車がやってきた
1 「0次」段階の二通りのタイプ
2 具体的な授業の概要―短期の「0次」段階―
3 単元の全体計画
4 学校に働く自動車がやってきた―「0次」段階―
5 子どもの書いた働く自動車
U 実践2 宮澤賢治「雪わたり」から古典の世界へ
1 はじめに
2 実践の概要
3 単元の全体計画
4 長期の「0次」段階「読書の日常化」
V 実践3 手紙で伝え合おう―二葉小・久松小のいいとこ紹介―
1 はじめに
2 実践の概要
3 単元設定の主旨と考察―短期の「0次」と長期の「0次」―
4 学習活動計画
第三章 学校知を生活知に活かし、学ぶ意欲を喚起する「活用」の実践事例
T 実践4 幼稚園児にお話を語って聞かせる小学校一年生
1 発想を転換した学習指導過程・再び
2 実践の概要と「活用」の概要
3 「0次」段階の取り組みと子どもの願い・教師の願い
4 単元展開の概略
5 本時(「活用」段階)の学習活動
6 次の学びを喚起する「活用」段階の学習活動
U 実践5 小学生が「枕草子」をすごく調べていて驚いた
1 はじめに
2 実践の概要
3 単元の全体計画
4 本時(「活用」段階)の学習活動
5 授業の実際
6 「活用」による学習への興味・関心・意欲の喚起
V 実践6 言葉のバトンをわたそう
1 はじめに
2 実践の概要
3 子どもたちの思いや願いを生かす単元の構想
4 単元の学習活動計画
5 「活用」段階の考察
W 実践7 二つの説明文を比べて読み、「活用」する
1 はじめに
2 実践の概要
3 二つの「どうぶつの 赤(あか)ちゃん」
4 単元設定の理由―「活用」段階の位置付けのわけ―
5 学習指導計画(概略)と本時の学習計画(概略)
6 「活用」段階を意識した発言と考察
X 実践8 文章を評価できる読み手を育てる
1 はじめに
2 実践の概要
3 教師の願い―文章を評価できる読み手を―
4 単元の目標と学習指導計画
5 教科内での「活用」から実生活での「活用」へ
6 子どもの書いた書評の実際
Y 実践9 昔遊びを隣のクラスのお友だちに紹介する
1 はじめに
2 実践の概要
3 子どもと指導者の思いや願い
4 単元の学習活動計画
5 「0次」段階に関する考察
6 「活用」段階に関する考察
7 子どもの書いた紹介文の実際
Z 実践10 もう一つの学習指導過程の発想の転換と一単位時間の展開の発想の転換
1 はじめに
2 作文(書くこと)の学習指導過程の発想の転換
3 一単位時間の展開の発想の転換
附章 一単位時間の展開の発想の転換
伝え合う力を高める一単位時間の展開の発想の転換
1 はじめに
2 授業展開における十分な討論活動
3 一単位時間の展開の発想の転換
初出一覧

まえがき

 「活用」なる文言は、新教育課程のキーワードの一つである。

 その新教育課程は、「基礎的・基本的な知識・技能の習得」、「習得した知識・技能の活用」、「思考力・判断力・表現力等の育成」、「学習意欲の向上や学習習慣の確立」、「言語活動の充実」、「伝統や文化に関する教育の充実」等々を重視しているが、筆者はとりわけ「活用」に注目している。

 なぜならば、一九九八(平成一〇)年版学習指導要領の告示前から筆者は、国語科の学習指導過程に「0次」段階と共に「活用」段階を位置付けるべきことを提言してきたからである。従来からの「導入」→「展開」→「まとめ」という学習指導過程の発想を転換し、「0次」→「導入」→「展開」→「まとめ」→「活用」とするべきであるという提言である。

 子どもが主体的にかつ意欲的に学ぶためには、学習指導は、あくまでも子ども自らの課題意識や興味・関心を起点として展開されなければならない。しかし、実際には、何事にも興味・関心を示さない子ども、自らの課題を自ら見付けることのできない子どもが多い。そこで、導入の前に、子どもたちの興味・関心や課題意識を豊かに醸成する時間を十分にとる必要がある。

 その時間が「0次」段階である。

 では、なぜ、まとめの後に「活用」段階を位置付けるのか。

 国語科学習で身に付けた知識・技能を教室でまとめて終わりにしてしまっては、その学習は単なる教室内での学習でしかない。いわゆる「学校知」でしかない。国語科学習で身に付けた知識・技能は教室の外に広く開いて、子どもたちを取り巻く実生活に活かすべきではないのだろうか。この、国語科学習で身に付けた知識・技能を教室の外に広く開いて、子どもたちを取り巻く実生活に活かす過程が「活用」段階なのである。これは、つまり「学校知」と「生活知」との総合化でもある。この段階を位置付けることによって、子どもたちは、教室での学習は単なる教室内だけの学習ではなく、実生活にも活きるものなのだということを実感することができるのである。

 さらに、子どもたちにもゴールの見える学習指導過程でありたいという願いからでもある。「活用」段階が学習のゴールなのである。しかも、学習の成果を教室の外に広く開くことのできる学習活動が期待できるようなゴール、また、子どもたちの興味・関心を喚起するようなゴールであるならば、子どもたちは、おのずと主体的にかつ意欲的に学習活動を展開するのである。そしてこの「活用」段階の活動によって子どもたちは学習の成就感・達成感を実感することができるのである。この成就感・達成感の実感が、つまり実の場における実感(いわば自己評価)が、子どもたちに次の学びへの意欲を喚起するのである。学びを喚起する自己評価ができるのである。

 本書は、従来からの「導入」→「展開」→「まとめ」という国語科の学習指導過程の発想を転換した「0次」→「導入」→「展開」→「まとめ」→「活用」という学習過程によって、一人ひとりの子どもたちがいかに主体的にかつ意欲的に生き生きと国語科の学習活動を展開するのかを具体的な実践事例を通して論究するものである。

 第一章は、言わば理論編である。

 なぜ学習指導の展開の発想の転換が必要なのかを論究している。

 第二章は、実践編である。

 「導入」の前に「0次」段階を位置付けることの意義とその効果について、実践1から実践3までの三つの実践事例を具体的に紹介しながら論究している。

 実践1は、短期の「0次」段階を位置付けた事例であり、実践2は、長期の「0次」段階を位置付けた事例、そして実践3は、短期と長期の「0次」段階を位置付けた事例である。

 第三章も実践編である。

 「まとめ」の後に「活用」段階を位置付けることの意義とその効果について、実践4から実践9までの六つの実践事例を具体的に紹介しながら論究している。

 実践4は、「活用」段階において小学校一年生が幼稚園年長児にペープサートを使ってお話を語って聞かせる実践である。実践5は「活用」段階において小学校五年生が中学校三年生と古典をめぐって交流する実践である。実践6は、小学校卒業を間近に控えた六年生が自分たちの思いや願いをメッセージとして書く。そして、五年生に伝えるという「活用」段階を位置付けた実践である。実践7は、動物の赤ちゃんの成長を題材とした二つの説明文を読み、生き物の赤ちゃん解説書を書く。そして、「活用」段階として図書館に置き友だちに読んでもらうという一年生の実践である。実践8は、文章を評価する読み手を育てたいという教師の願いを生かした六年生の実践である。「活用」段階では、筆者の説明の工夫とその効果を書いた書評の感想を友だちと交流し、後に作者にメールするというものである。実践9は、隣のクラスの友だちと交流したいと願う一年生が、昔遊びの遊び方や面白さを紹介する文章を書き、「活用」段階で、隣のクラスで紹介文を発表し、それに従って一緒に遊ぶというものである。

 実践10では、もう一つの学習指導過程の発想の転換として、「作文(書くこと)の学習指導過程の発想の転換」と「一単位時間の展開の発想の転換」とを紹介した。

 附章は、実践10で紹介した「一単位時間の展開の発想の転換」を再度取り上げ、それによって伝え合う力を高めることができると論究したものである。


 最後に、実践事例の紹介を快諾してくださり、児童作品等の資料を提供してくださった各先生方にお礼申し上げる。

 さらに、本書の刊行に際しご助言とご支援とをたまわった明治図書出版編集部の江部満氏、佐保文章氏、井草正孝氏には、心からのお礼を申し上げる。


  二〇一一(平成二三)年 初秋   /大熊 徹

著者紹介

大熊 徹(おおくま とおる)著書を検索»

1948年,千葉県市川市生まれ。

東京学芸大学教授,全国大学国語教育学会常任理事,日本国語教育学会常任理事・編集部長,元市川市教育委員長など。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ