- はじめに
- /福井 憲彦
- T 世界史への多様なアプローチ
- 序 歴史学と地理学からの提言 /田尻 信壹
- 1 これからの市民社会と世界史 /福井 憲彦
- 2 銀と世界史 /岸本 美緒
- 3 ESD(持続発展教育)と世界史 /田部 俊充
- 4 海域史と世界史 /桃木 至朗
- 5 グローバル・ヒストリーへのアプローチ /水島 司
- 6 「イスラームを知る」という隘路 /森本 一夫
- 7 環境史と世界史 /深草 正博
- U 生徒と共に創る世界史授業デザイン
- 1 「思考力・判断力・表現力」をつける授業づくりのポイント /原田 智仁
- 2 「世界史A」の全体像と教材化・授業化のヒント /田尻 信壹
- 3 思考力・判断力・表現力をつける「世界史へのいざない」授業モデル
- ザビエルで16世紀の日本と世界を考えよう【世界史A】 /藤村 泰夫
- 4 思考力・判断力・表現力をつける「世界の一体化と日本」授業モデル
- バーミヤーンの石仏は何を見てきたか【世界史A】 /松森 昌
- 5 思考力・判断力・表現力をつける「地球社会と日本」授業モデル
- マルコと考える「移民の世紀」【世界史A】 /風間 睦子
- 6 「世界史B」の全体像と教材化・授業化のヒント /田尻 信壹
- 7 思考力・判断力・表現力をつける「世界史への扉」授業モデル
- 風が巡り,世界をつなぐ―コロンブスの航海誌は語る―【世界史B】 /村瀬 正幸
- 8 思考力・判断力・表現力をつける「諸地域世界の形成」授業モデル
- ハドリアヌスの大旅行と地中海世界【世界史B】 /日下部 公昭
- 9 思考力・判断力・表現力をつける「諸地域世界の交流と再編」授業モデル
- 地図の作図・読み取りを通して諸地域世界の交流をとらえよう【世界史B】 /廣本 哲哉
- 10 思考力・判断力・表現力をつける「諸地域世界の結合と変容」授業モデル
- 穀物法論争から見る19世紀の世界【世界史B】 /藤本 和哉
- 11 思考力・判断力・表現力をつける「地球世界の到来」授業モデル
- 戦争記念碑から戦争を考えよう【世界史B】 /宮本 英征
- V 広がる教材づくりの可能性と世界史教育
- 序 学習指導要領と世界史授業づくり /田尻 信壹
- 1 学習指導要領の変遷から見た世界史教育 /木下 康彦
- 2 中・高の接続を意識した世界史教育 /二井 正浩
- 3 博物館と世界史教育 /田尻 信壹
- 資料 世界史教材づくりのための文献ガイド /藤本 和哉
- おわりに
- ―これからの世界史教育の展望― /田尻 信壹
はじめに
高校生の多くにとっては,それが世界史であれ日本史であれ,歴史の授業は現在においても,ともすると「憶える」ということと不可分なものとしてあるようだ。これは,不幸な状態だと言わないわけにはいかない。たしかに歴史には記憶の伝承という役割がある。2011年3月11日の東日本大震災も,歴史的出来事としてしっかり忘れず伝承しなければならない。しかし記憶の伝承は,暗記ということとはなんの関係もない。
では,歴史を学ぶ意味とはなんなのであろうか。これにたいして,唯一絶対の答えがあるわけではないだろう。だが歴史を教える立場にあるものは,このような素朴な,しかしそうであるがゆえに大切な問いに向き合って,自らの考えを語れるようでなければならない。大学で学生と接してきた私は,そう思ってきた。高校において日々,教育現場で工夫を重ねておられる教員の皆さんも,同様ではないかと信じている。
日本の高校世界史は,そのカバーする範囲も分野も広大で,学ぶ方もあらかじめ,これからの世界を生きていくにあたって視野を広くもつことの大切さをつかんでいないと,どういう構えで学べば良いのか出発点でつまずきかねない。人類の来し方について理解するということは,いま自明と思っていることが以前には必ずしもそうではなかったことへの気づきと,異文化への理解につながる。ことがらを多様な角度から眺めてみる,一面的な決めつけではなく多面的な考察をしてみる,そういう体験につながる。
2013年度に向けた世界史の学習指導要領改訂は,多面的・多角的に調べ論点整理し,問題の所在を自ら明確にして説明できるような力を,歴史の勉強を通じて身につけさせたい,という願いが牽引した。世界史教育は,いわば総合的な学びが可能な場なのだ。本書が,現場で生徒たちの豊かな学びの時間を作るために奮闘している先生方に,少しでも役に立てばうれしい。
編著者を代表して /福井 憲彦
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- 明治図書