- まえがき
- T 授業で使える微細技術
- 国語に関する問題への対応
- 1 音読が苦手な子への対応
- 音読の機会を増やし、そばに寄り添って補助する
- 2 漢字がなかなか覚えられない子への対応
- 指書きで覚えさせ、なぞらせて丸をして自信を育む
- 3 作文で何を書いていいかわからなくなる子への対応
- 書く場面を限定し、書き方を教える
- 4 発表することに抵抗のある子への対応
- 発表が苦手な子が代表委員に立候補するまでのドラマ
- 算数に関する問題への対応
- 1 足し算・引き算の間違いが多い子への対応
- ノートを丁寧に書かせ、できた経験を積み重ねる
- 2 九九がまだ定着していない子への対応
- 九九が不完全でも計算ができる手立てをうつ
- 3 コンパスや分度器をうまく使えない子への対応
- 「丁寧に」「細分化して」「繰り返す」ことで、使い方のコツを習得させる
- 4 ノートに×をつけるとパニックになる子への対応
- ×をもらって、にこにこして自分の席に戻らせるには
- 社会に関する問題への対応
- 1 地図帳の地名がなかなか見つけられない子への対応
- たまには花をもたせてあげる手立てをうつ
- 2 都道府県名をなかなか覚えられない子への対応
- 優れた教材教具で、繰り返し覚えさせる!
- 3 写真・グラフの読み取りが苦手な子への対応
- 優れた発問指示と読み取りやすい資料を用意する
- 4 調べ学習で何をやっていいかわからなくなる子への対応
- 型を示し、調べ方の順序を教えてノートにまとめる
- 理科に関する問題への対応
- 1 観察で描く絵がうまく描けない子への対応
- 七割主義で笑顔で対応 できている子をほめ続ける
- 2 教材のキットがうまく組み立てられない子への対応
- 完成までのストレスをできるだけ取りのぞく
- 3 実験のとき、何をすればいいかわからなくなる子への対応
- 教師実験の助手をさせるなど、役割を決めてしまおう
- 4 実験中、すぐ立ち歩いてしまう子への対応
- ものを多めに用意し、立ち歩かせない状況をつくる
- 音楽に関する問題への対応
- 1 リズム打ちのタイミングが合わない子への対応
- 様々な場面で供応動作を繰り返し鍛える!
- 2 リコーダーをうまく吹けない子への対応
- スモールステップで挑戦させ、達成感をもたせる
- 3 歌うとき、音程がうまくとれない子への対応
- よく聴かせ、変化のある繰り返しで何度も歌う
- 4 楽譜のどこを見ればよいかすぐわからなくなってしまう子への対応
- 「指で押さえて確認する」「できたらほめる」
- 図工に関する問題への対応
- 1 かたつむりの線が速くなってしまう子への対応
- 基本をしっかり教え、ほめ続けて自信をもたせる
- 2 はさみやのりがうまく使えない子への対応
- どの子にもやさしい方法で、継続した支援を
- 3 筆で細かいところが塗れず、線からはみ出してしまう子への対応
- 一つ一つの手順を踏まえ、手本を示して教える
- 4 自分の絵や工作になかなか自信をもてない子への対応
- 教えて、ほめて、自信をつけさせるのが教師の仕事である
- 家庭科に関する問題への対応
- 1 裁縫がうまくできない子への対応
- 針に糸を通すのは糸通しの活用、玉結びは簡便法で練習
- 2 調理実習のとき、何をしてよいかわからなくなる子への対応
- 調理の流れがシミュレーションできるように仕事を細分化せよ
- 体育に関する問題への対応
- 1 集合や整列が素早くできない子への対応
- ゲーム感覚を取り入れて、楽しく集まり整列させる
- 2 縄跳びがうまくできない子への対応
- 一回も跳べない子が七〇回跳んだ!
- 3 ボールをうまく扱えない子への対応
- あらゆる手段を使ってボールに楽しくふれさせる
- その他の問題への対応
- 1 勝ち負けにこだわり、パニックを起こす子への対応
- 一〇〇回の壁を越えさせる
- 2 授業の準備がなかなかできない子への対応
- 教師の配慮で授業の準備を素早くさせることができる
- 3 忘れものが非常に多い子への対応
- 忘れることを想定内に入れて次の手段を考える
- 4 ノートを書くのが非常に遅い子への対応
- できていること、できつつあることを見つけ、やさしい言葉かけでほめ続けよ
- 5 宿題をほとんどやってこない子への対応
- 宿題に熱中し、テストでもいい点がとれる方法
- 6 板書をノートに写すのが困難な子への対応
- 赤鉛筆指導を行い、書く時間を確保する手立てをうて
- 7 指示が一度に入らない子への対応
- 一時に一事で確認しながら進める
- 8 発問の答えをすぐに言ってしまう子への対応
- 「はい」は一回だけ、そして皆に当てるからね!
- 9 自分が当てられないとすねてしまう子への対応
- 原因を見つけ、満足感を与えよう!
- 10 授業中、ずっと落書きしている子への対応
- 個別の対応と、全体での対応を何度も繰り返す
- 11 授業中、すぐに立ち歩いてしまう子への対応
- 全体指導を優先し、授業で活躍する場面をつくる
- U 学校生活で使える微細技術
- 1 友達に暴言を言ってしまう子への対応
- 暴言を一旦受け入れる
- 2 ちょっとしたことで切れて、暴力をふるってしまう子への対応
- 早急に成果を期待せず、指導を続ける
- 3 遊びのルールがなかなか守れない子への対応
- 一緒に遊んで守れない原因を探そう!
- 4 休み時間、ずっと一人でいる子への対応
- 教師が遊びの場を設け、その子の居場所をつくる
- 5 場にそぐわない発言をしてしまう子への対応
- 状況に応じて、ほめる・叱る・見逃すを使い分ける
- 6 学校にもってきてはいけないものを教室にもち込む子への対応
- 学校のルールが基本 それ以外は目くじらを立てない
- 7 机やロッカーの整理整頓ができない子への対応
- 一年かけて変える覚悟で教師が直す
- 8 偏食のため、給食をほとんど食べない子への対応
- 無理に食べさせる必要はない
- 9 掃除のとき、すぐに遊んでしまう子への対応
- 教え、ほめ、一緒にやる
- 10 校外学習でグループ行動がとれない子への対応
- あらゆる場面をシミュレーションして対応を考える
- 11 時間割の変更があったときはこうする
- 前日までに知らせるのが原則 もし急な変更があったときには二つの対応で
- 12 パニックを起こしたとき、やるべきこと・やってはいけないこと
- 下手な声かけは逆効果 落ち着く場所に移動させるのが原則
- 13 発達障害をもつ子へのいじめを起こさないために
- 教師がその子を認めると子どもも認める
- V 診断名別 微細技術
- 1 高学年・ADHD児童への対応の原則と微細技術
- 叱るよりほめること、シンプルな学習環境をつくる
- 2 高学年・アスペルガー障害児童への対応の原則と微細技術
- 三つの基本的な対応原則と具体例
- 3 高学年・反抗挑戦性障害児童への対応の原則と微細技術
- 一点突破で指導する 他の先生と共有する
- W 保護者・学校対応で使える微細技術
- 1 校内の支援体制をつくるときのポイント
- 情報を共有すること、そして担任としてできる限りのことをすることが必要だ
- 2 発達障害をもつ子を中学校につなげるために
- 小学校・中学校・保護者が連携する
- 3 医療へつなげたいときの保護者への対応
- 保護者との信頼関係をつくることが第一歩
- 4 保護者とともに発達障害に向き合う
- 学校での様子を詳細に把握し、共通の指導方針を立てる
- あとがき
まえがき
向山洋一氏によって、「新型学級崩壊」ということばが使われるようになった。原因は多重的だ。
新任の教師の学級は、その多くが荒れる。若い教師の未熟さゆえ、うまくいかないことがいくつも出てくるためだ。それは皆が通ってくる道である。
しかし、近年はベテラン教師の学級が荒れ、つぎつぎと倒れていく。
特別支援を要する子どもたちが増えたことも一つの要因だ。それぞれの子どもに合った指導を必要としているのに、「叱って聞かせる」という一辺倒の指導しかできない教師は、子どもたちにそっぽを向かれ、立ち行かなくなる。
注意することにやっきになると、真面目にしようとがんばってきた子どもたちもばかばかしくなり、やがて学級の皆が反乱を起こすようになる。
子どもを動かすための様々な方策を教師がもっていることが必要だ。
作文を書かせたいときに、ただ作文を書きなさいと言っても、「えーっ」という声が返ってくるだけだ。
教師がしたことを作文に書きなさいと言って、「外からドアを開け、教室の中に入ってポンと手を叩く」という向山氏の実践がある。数分後、数名の子どもたちに発表させる。「A君、Bさんの発表には違いがありました」と言って、事実だけを書くのと、自分がその様子を見て、考えたことをつけたすのとでは、全く作文の内容が変わってくることに気づかせる。そして、再度同じ行為をして、作文を書かせる。どの子の作文も長くなり、おもしろくなる。
教師は何も教えないのに、子どもたちができるようになっていく。しかも、知的な楽しさをいっぱい含みながら。そんな授業ができるようになりたいと切に思う。
教師が「〜をしなさい」という指示だけで子どもを動かそうとすると、頭から反抗的になってしまう子どもがいる。そんなとき、「先生と一緒にしようか?」「AとBのやり方があるけれども、どちらにしますか?」「今しますか? 中休みにしますか?」というように、その子が動き始めるような指示がいくつも教師のプランとして準備されていることが大切だ。
また、それが無意識のうちに取り出せるようになるには、多くの先生たちから学び続けるしかない。
本書では、学校生活で日常的に起こりうる具体的な場面をとりあげ、その対応について述べた。これがベストではない。よりよい対応の仕方がたくさんあることだろう。サークルの仲間が自分の実践をもとに特別な支援の必要な子どもたちにどう対応したかを記した。
かつて岩下修氏が「AさせたいならBと言え」ということばを教えてくれた。私たちはこれからもBだけでなく、CもDもEも、その子に合った方策が見つかるまで、探し続けていく気概をもたねばならない。
できなかったことができるようになる。どんなに小さな一歩でも、そんな一ミリほどの前進でも見逃さずに見つけ、認め、励まし、そしてほめ続けることが私たちの仕事だ。
そんな目をもてる教師になりたいと思う。若い先生たちが一人でも多く育ってほしいと思う。
私たちの実践が、そんな評価し続ける教師たちにとって、ほんの少しでもお役に立てたら幸いである。
TOSS大阪なみはやサークル代表 /奥 清二郎
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- 明治図書