- はじめに
- 1章 オープンアプローチとは
- 1 オープンアプローチとは
- 2 オープンアプローチの先行研究と分類
- 3 オープンアプローチ ―そのよさと3つの指導法―
- 4 オープンアプローチでない指導法
- おもしろ算数話 「ぞうさん」の歌を使った頭の体操
- 5 オープンアプローチの適用
- おもしろ算数話 歌って覚える! 大きな数の単位
- 6 オープンエンドアプローチの魅力と帰納法の見方・考え方
- おもしろ算数話 しんぶんしはいくつある?
- 7 オープンプロセスアプローチの魅力と演繹法の見方・考え方
- 8 オープンプロブレムアプローチの魅力と集合の見方・考え方
- おもしろ算数話 赤い計算 青い計算
- 2章 オープンアプローチの様相
- 1 オープンエンドアプローチの様相
- おもしろ算数話 わり算筆算・アルゴリズムの歌
- 2 オープンプロセスアプローチによる様相
- 3 オープンプロブレムアプローチの様相
- おもしろ算数話 算数好きになるわり算の教え方
- 3章 オープンアプローチの教材と授業例4
- 1 トライアングルダイヤづくり(3年 三角形)
- おもしろ算数話 ケーニヒスベルクの橋
- 2 2マス片を敷き詰めよう(5年 奇数と偶数)
- 3 0別筆算をしよう(4年 1億をこえる数)
- 4 みんなで陣取りゲームをしよう(4年 面積)
- 算数冊子を作るための表記事例資料@
- 4章 オープンエンドアプローチの教材開発16
- 教材のポイント・いろいろな答え(エンド)・授業の大まかな流れ
- 1 第1学年 □+□=10
- 2 第2学年 おりがみを4つに分けよう
- 3 第2学年 100をつくろう
- 4 第3学年 正8面体でサイコロづくり
- 5 第3学年 9でわったあまり
- 6 第3学年 99をかけてみよう
- 7 第3学年 2人で分けるとちがいはいくつ
- 8 第4学年 正三角形の敷き詰めから模様
- 9 第4学年 8でわってみよう
- 10 第4学年 垂で垂直
- 11 第4学年 サイコロ面で垂直と平行
- 12 第4学年 等しい分数
- 13 第4学年 周りが24cmの長方形の面積
- 14 第4学年 タングラムで,いろいろな四角形づくり
- 15 第4学年 今日はラッキー?
- 16 第5学年 小数のかけ算と正方形の面積
- 5章 オープンプロセスアプローチの教材開発4
- 教材のポイント・いろいろな解き方(プロセス)・授業の大まかな流れ
- 1 第4学年 奇数をたすといくつ
- 2 第4学年 「4つの4」で1づくり
- 3 第5学年 重なりの面積は?
- 4 第5学年 25を消したら負けです
- 6章 オープンプロブレムアプローチの教材開発7
- 教材のポイント・いろいろな問題(プロブレム)・授業の大まかな流れ
- 1 第3学年 9でわったあまり
- 2 第3学年 九九の表のたし算
- 3 第4学年 わり算スゴロク
- 4 第4学年 帯分数と仮分数
- 5 第4学年 スポーツ店で計算
- 6 第4学年 夕食調べをしよう
- 7 第4学年 1以上になる分数のたし算
- 算数冊子を作るための表記事例資料A
- 7章 オープンアプローチの授業技術を探る
- 1 オープンアプローチの課題の2面性
- おもしろ算数話 ガウス少年の解いた循環小数
- 2 オープンアプローチの問いのもたせ方
- 3 オープンアプローチのやる気のもたせ方―1,2でOK,3で「あれ?」―
- 4 オープンエンドアプローチにおける子どもの追究のさせ方
- 5 混沌の中にみる表現する価値
- 6 問題把握が活動を生む
- 7 オープンエンドアプローチとオープンプロセスアプローチのつながり
- おもしろ算数話 子どもと楽しんでみたい計算
- 8 オープンエンドの切り口の失敗と成功の例
- 9 オープンエンドアプローチの問題づくり
- 10 オープンプロセスアプローチの問題づくり
- 11 オープンプロブレムアプローチの教材づくり
- 12 オープンプロブレムアプローチの問題のさせ方
はじめに
算数の授業は,楽しくなければなりません。これは,教職に就いたときからの信念です。
算数の授業で子どもたちが,次々と算数に関する気づきを発表していくとき,違う場合はどうだろうと質問をするとき,変えてみてどうなるのかやってみようと取り組み始めたとき,算数を楽しんでいるんだなと思います。
算数が楽しければ,算数を使いたくなります。算数が楽しければ,追究したくなります。算数が楽しければ,算数の世界が広がります。算数が楽しければ,みんなに自分がわかったことを言いたくなります。算数が楽しければ,みんなが生き生きしてきます。算数が楽しければ,学校も楽しくなります。算数の楽しさが大きな作用をつくっていきます。
教職についた年,私にとってはタイムリーな教職員向けの算数科雑誌が創刊されました。『楽しい算数の授業』(明治図書)という本です。この雑誌名の言葉の響きのよさにうれしく思いました。算数の楽しさを後押しされました。我が意を得たりと心強く思いました。当時,楽しさが前面に出た雑誌は,この他にはありませんでした。
同年,筑波大学附属小学校におられた手島勝朗先生の「授業への挑戦シリーズ」第1巻『算数科問題解決の授業』(明治図書)という本が出版されました。この本は私の算数科授業のバイブルとなりました。問題の切り口が,1か所変わるだけで,こうも子どもの反応が変わるものかと思いました。通常では,1問で1つの解答しかできない問題ですが,問題の中に□を入れて自分でその中に数を入れてたくさんの答えが出てくるということが斬新でした。このとき,初めてオープンエンドという言葉を知ることになりました。この本の中の子どもたちは,問題に自ら働きかけ,自ら動き,自ら気づきを発し,自ら考えを広げていこうとしていました。
後でわかりましたが,オープンエンドは,1971年から既に研究が始まっていました。私が小学生のときには,すでにこの指導法が存在していたのです。しかし,このような授業で,自分が教えてもらったことはありません。まして,そのような研究が広がって1つのブームのように研究されたということも聞きません。多くの成果が望めるのに,その指導法が広まらないのは残念なことです。
私は,手島氏の著書を読んで,オープンエンドのよさに強く惹かれるようになりました。そして,その指導法を含めたものをオープンアプローチということもわかりました。この指導法なら,算数の本当の楽しさを子ども自らが見つけていくことができると,確信しました。私のめざす授業スタイルが見えてきました。
オープンエンドアプローチと出会って,随分と月日が流れてしまいました。今回長年にわたって追い続けてきた楽しいオープンアプローチのよさを,こうして少しでも紹介できることは,うれしいことです。
このような機会を与えてくださった明治図書編集部の木山麻衣子さん,校正していただいた三浦江利子さん,『楽しい算数の授業』を通して交流し,導いていただいた元明治図書編集部の石怏テ典さんに深く感謝しています。ありがとうございます。
少しでも,読者のみなさんにオープンアプローチのよさが伝われば,所期の目的が達成されます。なお,まだまだ研究の途上にある内容です。たくさんのご指導やご意見をいただければうれしく思います。
平成24年7月 /福永 敬
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- 明治図書