- はじめに
- T.アセスメントを丁寧に行う
- 1.子どもの小さなサインを読みとる
- (1) 子どもを知るために何を大切にすればよいか
- エピソード@ じーっと,だけど活動に参加している子ども
- エピソードA 『ものの受け渡し』に子どもの姿が現れる
- エピソードB 活動になかなか乗れない子どもをみる
- エピソードC 楽器は身体で受け入れ,対人関係に結びつける
- (2) 行動の前後を読みとりながら子どもを知る
- エピソードD 指導者は子どもの視線の先を見る
- 2.発達年齢と音楽活動の関連を考える
- (1) 身体・粗大運動の発達と音楽活動
- (2) 手指の操作(微細運動)の発達と音楽活動
- (3) 認知の発達と音楽活動
- (4) コミュニケーション・言語の発達と音楽活動
- (5) 対人関係・社会性の発達と音楽活動
- [参考] 『いないいないばあ』遊びの経過
- [参考] 自我の拡大期(1歳後半〜3歳)の子どもとのかかわり方
- [参考] 「○○先生のこと好き?」への子どもの反応の変容
- 3.実際のアセスメント例
- 音楽活動のチェックリスト
- 個人アセスメント票1(行動観察)
- 個人アセスメント票2(保護者記入)
- [事例] ピアノと音つみきの協和音でコミュニケーション力アップ
- (活動)1 曲に合わせて動こう
- U.目標・プログラムを具体的に設定する
- 1.目標設定の留意点
- 2.長期目標を適切に設定する(具体例)
- 3.短期目標を適切に設定する(具体例)
- 4.プログラムの設定と活用における留意点
- 5.個人セッションと集団セッションについて
- (1) 個人セッションの意義
- (2) 集団セッションの意義
- (3) 集団的アプローチの留意点
- エピソードE 指導者同士の連携を大切にする(アシスタントの役割)
- (4) グルーピングについて考える
- (5) 個別から集団への発達過程
- V.子どもとの豊かな関係作りを行う
- 1.まずは子どもと一緒に過ごすことを楽しむ
- (1) 自然な気持ちで子どもと過ごす
- (2) 子どもに自分のいろいろな面を知ってもらう
- (3) 日頃のかかわりを丁寧に積み重ねていく
- 2.子どもに合わせることから始める
- (1) 重なり合うことの心地よさを味わわせる
- エピソードF 焦らずおおらかに!気になるけれど参加できない子ども
- (2) 肯定的にかかわることを心掛ける
- エピソードG 信頼関係を高める発音指導
- (3) 「合わせる」は子どものすべてを受け入れることではない
- エピソードH どちらがよい?リトミック活動での対応
- 3.子どもとのかけひきを工夫する
- (1) 調子が崩れてきたときだけかかわらない
- (2) 子どもとかかわった「あと」が大切である
- (3) 拒否の持つ意味を考える
- 4.さまざまな援助を有効に行う
- (1) 子どもとの距離感や身体接触に配慮する
- エピソードI くすぐり遊びでのやりとり
- (2) 援助はさりげなく行う
- エピソードJ ボールを回す活動でのさりげない援助
- エピソードK リトミック活動での手つなぎの配慮
- エピソードL 指さし理解が難しい子どもへのヒント
- (3) 援助は段階的に行っていく
- エピソードM リトミック活動で「寝る」ためには
- (4) やがて子ども同士の関係性に発展させる
- エピソードN 一つの楽器に二人でかかわる
- 5.保護者と共に子どもを育てる
- (1) 保護者の方もその場の雰囲気作りに一躍買う
- (2) 子どもが自分の活動を保護者に見てもらう
- [事例] 対極にある保護者の援助法
- (活動)2 独奏 トライアングル
- (活動)3 二人でトライアングル遊び
- ―軽度発達障害の子どものために―
- W.発達的視点に基づいて子どもを育てる
- 1.なぜ発達的視点か
- エピソードO 発達的視点で捉えるシンバルを叩く活動
- エピソードP 身体活動は算数と関係する
- 2.三項関係を大切にする(自閉症児に焦点を当てて)
- 3.模倣の力を育てる
- (1) なぜ模倣は大切か
- (2) 模倣と音楽の関係
- (3) 模倣が育つ条件とは
- 4.ことば・コミュニケーション能力を育てる
- (1) 適切なことばがけを行っていく
- エピソードQ 二語文の理解が難しい子どもへのことばがけ
- (2) 子どもが聞く姿勢を作り,小声で,ゆっくり,少なめに話しかけていく
- (3) 情報処理の仕方に応じて活動例を変えていく
- (4) 子どもを尊重した交互のやりとりを大切にする
- エピソードR 重度の子どもとのハンドドラムを通したやりとり
- (5) コミュニケーションは適切な指標を用いて評価する
- [事例] 曲あて遊びを通じた心地よいやりとり
- (活動)4 楽器の音あて遊び@
- ―楽器のマッチングー
- (活動)5 楽器の音あて遊びA
- ―音色の聴き分け・楽器選び―
- (活動)6 楽器の音あて遊びB
- ―音色の聴き分け・カード選び―
- (活動)7 楽器の音あて遊びC
- ―楽器あてクイズ(軽度発達障害の子どものために)―
- X.子どもを惹きつける音楽活動を考える
- 1.音・音楽を丁寧に提示していく
- エピソードS なかなかコンガ叩きを子どもに聴いてもらえない奏者
- [参考] 『沈黙の共有』とは
- 2.活動をわかりやすくする
- (1) セッションに参加しやすい場面設定
- エピソード わかりやすい楽器活動
- エピソード 複数の指導者が一人の子どもにかかわってしまう
- エピソード 一つの活動でいくつものことを求めてしまう
- (2) 音楽的に予告していく
- (3) 活動の流れを意図的に作っていく
- エピソード バルーンの活動が盛り上がるまで
- 3.心地よく参加できるようにする
- (1) 活動中は何よりも安心感を大切にする
- (2) 各活動で「終わり」を意図的に設けていく
- (3) 適度に「枠組み」を設けていく
- 4.子どもの豊かな表現を音楽的に支えていく
- (1) 子どもの表現に合わせ,広げていく
- (2) 音楽場面における即興の大切さ
- エピソード スネアドラムを叩く活動
- エピソード 集団場面での即興
- (3) 歌の場面での演出方法
- (活動)8 ペンタトニック音階の合奏
- Y.音楽活動を適正に評価する
- 1.評価を行う目的を考える
- (1) 子ども自身の変容の過程を知るため
- (2) セッションの活動内容が適切であったかを知るため
- (3) 指導者自身のかかわり方が適切であったかを知るため
- (4) 保護者に指導内容や指導過程を説明するため
- 2.評価を行う際の留意点を考える
- (1) 評価は観察者の経験や力量によって見方が違ってくる
- (2) チェックリストや行動観察によって集めた情報が実践につながらない
- (3) 身につけた力を生活場面に般化させるという視点を持つ
- (4) 文脈や関係性の中で子どもを丁寧に見ていく
- 3.音楽活動全般の評価例
- 4.各活動の評価
- 個人観察記録
- 音楽活動の評価表
- [事例] 音楽療法士による養護学校での授業風景
- (提言) 本当に子どものために行っているか
- CDガイド
- 引用・参考文献
- おわりに
はじめに
私たちは,音楽場面で障害のある子どもたちを目の前にしたときに,どのように子どもと向き合い,関係を作り,活動を行っていけばよいのでしょうか。このことは,私自身,長年の課題となっていました(今でも大きな課題となっています)。しかし,悩んでばかりはいられません。今の段階で,子どもたちから得た知見を総合し,考え得る最大公約数的な自分自身の目標を,以下の5点にまとめてみました。
1.まずは子どもを受け入れること
2.やりとりの中で子どもをよく知ろうとすること
3.子どもと柔軟にかかわること
4.謙虚さと自信をよいバランスで兼ね備えること
5.音楽の持つ力を最大限に活用すること
これらは,音楽療法や音楽教育の場面に限ったことではなく(特に1〜4),どのような臨床・教育場面についても言えることでしょう。そこに子どもがいれば,音楽場面であれ,他の教育場面であれ,私たちが子どもと向き合う姿勢は,基本的に変わりはないのです。
ところで,2005年に拙著『子どもの豊かな世界と音楽療法』を出版しました。そこでは,今まさに子どもとかかわっている方々に対し,「すぐに使える音楽活動」をモットーに具体例や活動の意味について,提案しています。出版以来,音楽療法や教育関係者など,数多くの方から感想や意見をいただきました。それらを総合すると,現場の意見として,特に以下の内容を知りたいということがわかってきました。
「アセスメントの方法・具体例」
「目標設定の仕方・具体例」
「子どもとの関係作りの考え方・具体例」
「発達的視点を音楽療法場面にどう取り入れるか」
「音楽の持つ力をどう活用するか」
「評価の方法・具体例」
これらは,音楽活動を行うための土台として,子ども全体を詳しく知りたいということに他なりません。よく考えてみると,前述の5つの目標とも重なる部分が多く,まさに私自身が日頃から最も知りたいと頭を悩ませていたことだったのです。
本著は,このような背景の元,地道な執筆活動に取り掛かることになりました。まずは,私が常日頃,音楽活動の中で考えていること,子どもたちから教えてもらっていること,セッション後のフィードバックで皆と話し合っている内容を,ノートに何冊にも書きためてみました。そこに記された雑然とした情報を,できるだけわかりやすく,項目ごとにまとめたものが本著となっています。
本著が障害のある子どもたちと音楽を通じてかかわる際の一助となり,あるいは一人ひとりの子どもを丁寧に見ていく際(事例研究など)の参考になれば,と考えています。私の一番の思いは,目の前の子どもたちと共に充実した時間を過ごし,いろいろなやりとりの中で,子どもが自分らしさを発揮できるようになることです。そのためには,私自身まだまだ勉強する必要があると思っています。
最後に,前著に引き続き,執筆にあたりさまざまなアドバイスをいただいた音楽療法士の藤江美香さんに心より感謝申し上げます。また,続編の出版を勧めていただき,熱意あるご援助をくださった明治図書出版の佐藤智恵さんに心から感謝の意を表します。
2007年1月 /加藤 博之
<http://ameblo.jp/creative−conduct/entry−10032570870.html>
1.発達の視点に基づいて、それぞれのレベルでの効果的な音楽の用い方が書かれている。
2.アセスメント票、評価表がついている。
3.特別支援教育の現場に即している。
4.CDがついている。
5.音楽活動が、身体や脳の発達にいかに必要なものであるかが、よく書かれている。
と紹介されていました。
すごく読みやすく使いやすいです。
CDにある指導場面の動画はセッションの雰囲気を実際に感じることができてオススメ。