- 監修のことば
- はじめに
- A 月々の題材
- 4月・新入生歓迎の飾り付けをする
- 自分で絵の具を作る
- 絵日記をつける
- 5月・ツツジの壁飾りを作る
- みんなでビニール袋製のこいのぼりを作ろう
- みんなで紙粘土製の大きなカメを作ろう
- 6月・藍染めで夏空色のプチスカーフを作る
- みんなでウエーブメーカーを作る
- 手びねりで作って焼成する
- 7月・収穫した野菜でスパゲッティを作る
- みんなで七夕飾りを作ろう
- 焼き物でコーヒーカップを作る
- コラム1 あっと思ったとき,あわてないための処置〈その1〉
- 9月・砂場に池,川,山を作る
- ろうけつ染めでスカーフを作る
- 旅の思い出フォトフレーム
- 10月・ストローでイカを作る
- ビニール袋を使って食べ物を作る
- モビールを作る
- 11月・とんとんとん
- みんなで友達の全身像を描こう
- ステージ用に鬼の面を作る
- 12月・味なことやるハンバーガー
- 起き上がりこぼしを作る
- クリスマスのリースを作る
- コラム2 あっと思ったとき,あわてないための処置〈その2〉
- 1月・今年のカレンダーを作る
- 気分は庭師 日本庭園のジオラマ作り
- 見つけよう! ステキな世界
- 2月・王子様へのプレゼント〜パネルシアターを使用した鑑賞〜
- 自画像を描く
- 紙を浴びる
- 3月・革を使ってブックカバーを作る
- 卒業式の会場をみんなの作品で飾ろう
- 卒業生へのプレゼントを作る
- コラム3 お母さんとともに歩んだ青年画家坂間弘康さんの5年間
- ――それぞれの子どもにある可能性の芽の発見と開発――
- B 体験・交流活動に関する題材
- 水の惑星“地球”をイメージして地球儀を作る
- 割れ門を作る
- フラワーアレンジメント(フォトコラージュ)
- 腰布を作る(アクリル絵の具による染色)
- 冠を作る
- バリ舞踊家へプレゼントを作る
- パフォーマンス in あーす ぷらざ
- コラム4 27年前の母子像
- ――その視線の先にあるもの――
- C とっておきの題材
- 教室をロケット発射台にする
- 不要のCD-Rで写真立てを作る
- 周辺の森にある枝を使ってマリオネットを作る
- ツクシのつくだ煮作りと自然物で描く絵画
- ふしぎな町の住人を作ろう!
- カラフルなキャンバス
- ケーキを白いキャンバスに見立てて描く
- チャンバラ遊びのためのカツラを作る
- おわりに
- 執筆者及びアドバイザー一覧表
監修のことば
奈良峰博氏は精鋭の画家である。アクリル絵の具などを積極的に使用したその斬新な表現は水彩画の豊かな可能性を示し,新たな地平を拓いた。美術家としての軌跡は,個展活動や出版物として公表されており,それらは確固たる評価を受けている。
氏が多摩美術大学を卒業し教師となって27年,これまで在籍した学校は中学校,高等学校と養護学校であった。氏のキャリアの中で特に強い影響を与えたのは養護学校での経験ではなかろうか。養護学校には知的発達の遅れや運動機能に制限のある児童生徒が在籍している。表現者としての美術家が教育現場に入っていくことには大きな葛藤があったであろう。表現する力そのものに大きな限界があると考えられる子どもらを前にして,その道の最前線で活躍している美術家が学校の教科である図画工作や美術を教えなければならないのである。
まったく専門外の場に身を置いたのだから,養護学校での教育は適当にやり過ごし,美術家としての活動に集中することもできた。しかし,氏はそのようにしなかった。障害児教育畑出身ではない氏は,言葉に限らず,考え方,指導方法まで幅広い特有の文化がある障害児教育に対し,表現者ということを武器にして真正面から取り組み格闘したのである。
この本の面白さは,障害児に関する造形教育方法について生粋の障害児教育者が作った本ではない,ところにある。確かな技法と表現力と柔軟な感性を持った美術家が自らの自作は堅持しながら,障害児教育というものに真正面から取り組んだ成果なのである。しかも,個人でまとめ上げたのではなく,たくさんの職場を中心とする仲間たちが積極的に協力してできたものである。
奈良峰博氏と私の関係は,氏が2002年度に神奈川県自己啓発研修教員として文教大学教育学部特殊教育研究室の星野研究室に所属したことに始まる。その1年間の研修で,養護学校における美術教育方法史に関する実証的な研究を行い論文としてまとめ上げた。ここでも,氏の新しいことに精力的に取り組む姿勢が発揮された。
戦後60年を経て,これまでの特殊教育から特別支援教育へと移行する大きな流れの中で,この本が出版された意義は大きい。
2006年9月 文教大学教育学部教授 /星野 常夫
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- 明治図書