- はじめに
- 本書がめざしたもの
- みたて・つもり活動
- 1 劇遊び「桃太郎」
- 2 エプロンシアターで遊ぼう
- 3 走れ! SL号 ルールを守って,切符を買おう
- 【コラム】算数は「みたて・つもり」の連続だ
- いろ・かたち
- 4 ドミノを使って『仲間分け』
- 5 色つきパスタを使ってフォトスタンドを作ろう
- 6 ガラス玉とストローで『のれん作り』
- 7 魚の『色分け』と池の『選択』
- 8 パーティーで飾りつけをしよう
- 9 魚釣り@ 色・形に注目して
- 【コラム】「黒です」何と言っても「黒」
- ながさ・おもさ
- 10 魚釣りA 竿の長さを意識して
- 11 任意単位による測定@ プラレールを使って
- 12 任意単位による測定A 僕の身長は何個分?
- 13 長さと重さ『重さの量感』
- 14 ペットボトルと自作ばかりで『重さ』を比較しよう
- 【コラム】ブルーシートは素晴らしい
- 量の概念
- 15 目と指先を使ってサイコロ落とし
- 16 製氷皿とのれん玉を使って
- 17 割り箸を使って
- 18 お弁当を作ろう
- 19 お皿とスプーンとデザートで
- 20 レストランごっこをしよう
- 【コラム】附小交流より
- 数量概念(前期)
- 21 じゃんけんマンと「じゃん・けん・ぽん」
- 22 ひと工夫すれば楽しく学べる『ボーリングゲーム』をしよう
- 23 斜面台を使って大当たり!! 大型教材での『1対1対応』
- 24 わなを仕掛けてゴキブリを捕獲しよう
- 25 スクールバスが動きます 量の保存・加法性・減法性
- 26 人数分のお茶セットを用意しよう 「3」までの量把握
- 27 「10」の小単位「5」の把握 全部で「3」個と「2」個あります
- 28 5-2進法 数えうた 「1」から「5」までの把握・読み
- 29 5-2進法 数えうた 「5」から「1」までの把握・読み
- 30 「5」の合成・分解をしてみよう
- 【コラム】「先生。俺,久しぶりに“頭”使ったわ」
- 数量概念(後期)
- 31 5-2進法 数えうた 「6」から「10」までの把握・読み
- 32 5-2進法 数えうた 「10」から「6」までの把握・読み
- 33 ばらタイルカード@ 「5」のタイルカードを使う編
- 34 数タイルBOX@ 「5」のBOXを使う編
- 35 ばらタイルカードA 「5」のタイルカードを使わない編
- 36 数タイルBOXA 「5」のBOXを使わない編
- 37 「10」までの合成・分解 プリントやキューブを活用して
- 38 机上ボーリングで「10」の補数
- 39 理科教材を応用して「10」までの合成・分解
- 40 自作カードを使って@ 数えてみよう20以上の数
- 41 『すごろく』でカレーを作ろう
- 【コラム】「10までの合成・分解」が確実にできること(進路)
- 計算
- 42 自作カードを使ってA 「九九」にチャレンジしよう
- 43 自作カードを使ってB 「式カード」と「答えカード」で四則演算
- 44 立体キューブを使った『たし算』
- 45 立体キューブを使わない『たし算』
- 46 立体キューブを使った『ひき算』
- 47 立体キューブを使わない超難関の『ひき算』
- 48 具体物を使った簡単な『かけ算』
- 49 具体物を使った簡単な『わり算』 等分除の場合
- 50 具体物を使った簡単な『わり算』 包含除の場合
- 【コラム】「先生,11点しか取れんかった」
- お金
- 51 魚釣りB 釣った魚を品物と交換
- 52 魚釣りC 社会自立に向けて稼いだお金で品物を買おう
- 53 買い物学習 「3桁」の合計金額を出そう
- 54 実際の広告を見て買い物の計画を立てよう(概算)
- 【コラム】教材・教具のススメ
- 時計・位置・分数・日常生活
- 55 時刻を読む『時間時計』『分時計』
- 56 時間の概念 帰宅後の過ごし方をタイムテーブルに整理しよう
- 57 任意の基準点から位置を表そう
- 58 量としての分数の理解(等分)『喧嘩しないように分けられるかな?』
- 59 日常生活の指導場面で『スケジュール・ボード』を利用して
- 60 毎朝の日付の確認は「31」の数字カードの組み合わせで
- 【コラム】視覚支援ツールを応用して
- 編集協力者 参考文献
はじめに
この書を多くの特別支援教育の現場に贈る……。
障害のある子どもたちの「かず(算数)」に心魅かれてから,長い年月が流れました。その間にたくさんの子どもたちから,多くのことを学ばせていただきました。新任教師だった私は「この子はどうして,このように考えたのだろう。」「あの子は,なぜ教室を出て行ってしまったのだろう。」「教科書もないのに,どうやって教えていけばいいのだろう。」と日々悩んでいました。毎日のように雑務に追われ,「こればかりやっていられない」と背を向け,ついには「かず(算数)」から遠のくようになっていました。ところがある日,保護者の方から,以下のようなお話をいただきました。「この子は,家に帰ると押入れの中にいるんですよ。何かブツブツ言っているなと思い耳を澄ますと,いち,に,さん,……と先生に習ったことをよく言っています。」という内容でした。私は胸が張り裂けそうになりました。私は深夜じっと考えました。そして,気づいたのです。「私は皆と同じスタートラインにも立っていない……。」
子どもたちが,「わかった」「面白い」「また,やりたい」と思える学習とは何かを考え続けました。私における最優先課題は何か。今の私に何ができるのか。一からの出直しでした。私は,これまで,多くの自閉症の子どもたちと出会ってきました。「人との信頼関係」「場の構造化」そして「わかりやすく,見通しをつける」など,自閉症の子どもたちからは学ぶべきことが多く,苦労が多い分,喜びや感動もさらに大きかったように思われます。そこで私がたどり着いた,ひとつの決意があります。それは,「学習の必然性」です。発達が幼く,まだ学習の構えができていない子どもたちは,長々と説明を繰り返されても退屈なだけです。説明が必要な学習は理解もままならないでしょう。それより,教材をパッと見せるだけで,「あれ?」「何かな?」「どうするの?」「あっ! わかった!」「先生,知ってる。やらせて!」と言わせる学習がしたいと思いました。そのために大切なのが「学習の必然性」でした。そして必然性のある学習をするために私はもっと子どもたちのことを知らなければなりません。これは,重度と言われる自閉症の子どもたちであっても同じようなことが言えます。自閉症の子どもたちから学んだ多くのことを今後も「かず(算数)」教育の中に,しっかり根づかせていきたいと思います。本書は,普段着の実践の足あとです。どうか,同じ悩みを持たれる方々にご活用いただけますことを切望します。
平成18年3月 /松村 齋
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- 明治図書
- 教材作りの参考にしやすい内容だった。2018/4/2850代・小学校管理職