- はじめに
- 第1章 いま,なぜ,「ダンスムーブメント」か?
- ――ダンスムーブメントの背景と目的――
- 1 ムーブメント教育の今日的役割
- (1) ムーブメント教育とは
- (2) 特別支援教育におけるムーブメント教育の活用
- 特別支援教育への転換の中で〜一人ひとりのニーズに応じた支援〜/ ICF〜「障害」を個人と環境の相互関係で考える〜/ 早期療育における家族支援〜子どもを含んだ家族全体を支援する〜/ ムーブメント教育が特別支援教育にできること
- (3) 体育におけるムーブメント教育の活用
- 遊びの消失と子どもの体力低下/ 求められる新しい体育の役割/ ムーブメント教育が体育にできること
- 2 ダンスの力
- (1) ダンスはみんなのものである
- 昔も今も私たちは踊っている/ 人はなぜ踊るのか〜コミュニケーションの欲求〜
- (2) 療育におけるダンスの可能性
- 欧米における療育的活動〜ダンス・セラピー,アダプテッド・ダンス,コミュニティ・ダンス〜/ 日本の現状/ ダンスの療育的活用と意義
- (3) 新しい学習指導要領とダンス教育
- ダンスによせられてきた期待〜「体ほぐしの運動」とのかかわりから〜/ ダンスの学びのプロセスは,もともと「習得」「活用」「探究」の連動/ 男女必修への転換
- 3 「共創力」を育み合う「ダンスムーブメント」
- (1) 共創とは
- 「共に場を創る」ことの意義/ 共創の快感が生む好循環/ 「共創の演出家」の必要性
- (2) 「ダンスムーブメント」がめざすこと
- ダンスムーブメントのねらい/ 共創力の土台となる三つの力〜身体意識能力・コミュニケーション能力・創造力〜/ ダンスムーブメントにおけるリーダーの役割
- 第2章 ダンスムーブメントの基礎理論
- 1 ダンスムーブメントをはじめる前に読むムーブメント教育の7つのキーワード
- (1) 人は動くことによって自分を知り,世界を知る
- (2) 「遊び」が原点
- (3) 「からだ・あたま・こころ」
- (4) 自発性・自主性
- (5) 「環境」の力
- (6) 変化のある繰り返し
- (7) 健康と幸福感の達成
- 2 「共創力」の基礎を育むムーブメント教育
- (1) 身体意識能力を育む
- (2) コミュニケーション能力を育む
- (3) 創造力を育む
- 3 ダンスムーブメントの基本構造
- (1) 動きを体験する〜動きの探求〜
- (2) 動きで表現する〜表現の探求〜
- (3) 創る〜動きと表現の構造化〜
- (4) 分かち合う〜発表・鑑賞〜
- 第3章 ダンスムーブメント実践のための基本ワーク
- 1 自分の身体でできることを知ろう
- (1) 空間を意識して動いてみよう
- 個人空間と共同空間/ 方向性/ 高さ/ パターン(通り道)
- (2) 身体でいろいろな姿を表現してみよう
- いろいろな姿勢に挑戦/ 身体のどの部分を使うのか/ 身体を支える
- (3) 基礎となる「運動」を活用してみよう
- 基礎となる「運動」を体験しよう/ 「運動」を組み合わせてデザインする
- 2 「動きの質」をアレンジしてみよう
- (1) 「動きの質」とは
- (2) 空間・力性・時間・流れのアレンジ
- 空間/ 力性/ 時間/ 流れ
- 3 「環境とかかわり」をアレンジしてみよう
- (1) 音とのかかわり
- (2) 遊具とのかかわり
- (3) 他者とのかかわり
- (4) 他の分野とのかかわり
- (5) 活動空間とのかかわり
- 第4章 ダンスムーブメントの展開T
- ――ダンスからファミリームーブメントへ――
- 1 家族支援におけるムーブメント教育の活用
- (1) 個別の家族支援とは
- 障害児とその家族をめぐる支援の課題/ 米国における障害児の家族支援とIFSP(個別家族支援計画)
- (2) 家族支援を目指したムーブメント教育の実践
- 家族支援アセスメントとしてのMEPAの活用/ 自閉症児とその家族に対する断続的な調査/ 親子ムーブメント教室の実践〜個別ファイルの活用〜
- 2 家族支援をめざしたダンスムーブメントの実践
- (1) 親子教室におけるダンスムーブメントプログラム
- 親子教室におけるダンスムーブメントプログラムの実際/ ファミリームーブメントへの展開
- (2) 家族の力を支援するダンスムーブメント
- 家族支援プログラムとしての適用性/ 早期介入におけるダンスムーブメントの新たな役割
- コラム1 「からだ」から「障害児・家族・地域」の支援を考える
- 第5章 ダンスムーブメントの展開U
- ――ダンスからドラマ・ファンタジーへ――
- 1 ドラマムーブメントの魅力
- 〜和光ムーブメント教室の実践〜
- (1) 学生たちの参加とドラマ性の芽生え
- 親子で遊ぼう!和光ムーブメント教室/ 人も環境!〜「役」を演じる学生たち〜/ ファンタジー遊具「コクーン」の魅力/ 初のオリジナル遊具「シンデレラポンチョ」
- (2) 環境の力を再確認!〜「ボルダリングペッタン」の誕生〜
- (3) 季節感あふれるドラマムーブメントプログラム
- 空を泳ぐこいのぼりにのりたい!「端午の節句」/ 童謡「あめふりくまのこ」の世界を演出/ 出店方式ムーブメント「夏祭り」/ ネコバスの魅力!「トトロの森に秋の遠足に行こう!」/ クリスマスムーブメント「サンタさんに会いに行こう!」/ 教室全体がキャンパス!「雪の世界に春を呼ぼう!」
- 2 誘引力のある環境づくり
- 〜共に場を創るために〜
- (1) ファンタジーの魅力と日常とのつながり
- (2) 「本気で遊ぶ大人」という環境
- (3) 余白を想像する楽しみ
- コラム2 オムライスなったショウちゃん
- 第6章 ダンスムーブメントの展開V
- ――舞台づくりにおける「共創の場」としての遊び――
- 1 本当に楽しいことは楽(ラク) じゃない!?
- 〜和光大学「身体表現とパフォーマンス」の授業〜
- (1) 学生が創る授業「身体表現とパフォーマンス」
- 舞台づくりの裏も表もすべてが課題/ 授業内容と学生たちの様子/ 主体性を引き出す授業とは
- (2) 大学生の共創力を育む活動案
- 身体画で私を語る/ お気に召すまま〜人形あそび〜/ 立ちあがれ!ロボット/ ブラインド・ウォーク/ 新聞紙で遊ぶ/ ビニール袋で遊ぶ/ トラスト・フォール/ 12321/ 名前ポーズ遊び/ 癇癪(かんしゃく) 玉/ 見えないボール
- 2 共創をめざした舞台づくりを重ねて見えてきたこと
- (1) 「共創の場」としての遊び 〜舞台づくりを楽しむ学生たちに想う〜
- 遊びの主体性と「場」/ 「共創の場」:もうひとつの舞台
- (2) 「自分の物語」を生きていく場としての舞台
- 自閉症の中学生やっちゃんが参加した舞台づくり〜MerryZome00∞「棘の紡ぎ」の挑戦〜/ 物語を創り,語り続けるやっちゃん〜「関係づける」ことへのこだわり〜/ 自分の人生を「物語る」ことの意義
- (3) ダンスムーブメントにおけるリーダーのさらなる役割
- 「いまを生きる」ダンスの特徴を活かす/ 共創における競争を支援する/ 孤独に耐える
- コラム3 インクルーシブダンスはすべての人のために 〜みやぎダンスの挑戦〜
- 参考引用文献一覧
- あとがき
はじめに
この本は,特別支援教育や体育を中心としたさまざまな育み合いの場において,『ダンスムーブメント』(=ダンスの特性を活かしたムーブメント教育の活動)を行うために役立つエッセンスを紹介するものです。ムーブメント教育について初めて触れる方にも,ダンスに携わったことのない方にも,わかりやすく読んでいただけるように心がけました。また,学校教育に携わる方はもちろん,療育機関や幼稚園,保育所,地域のさまざまな活動,家庭の中の実践にも活かしていただけるように,具体的な活動案や事例をたくさん紹介してあります。
ムーブメント教育研究の先駆者であるマリアンヌ・フロスティッグ(Frostig, M)は,他の研究者の業績,発見を自分の研究の参考にすることを恥とせず,子どもたちの支援のためによいと思うことはどんどん取り入れ,積極的に「折衷主義」を貫いたと言われています。この本は,尊敬するフロスティッグの精神に習い,これまで,私自身が,教えていただいたり,体験させていただいたりしてきたものの中から,「これはいい!」と感じたものをどんどん取り入れ実践しているうちに少しずつ見えてきた『ダンスムーブメント』についてまとめたものです。まだまだ模索中ではありますが,「共創」というテーマのもとに,これまでの実践やそれらを通じて考えてきたことを皆さんにお伝えし,一緒に考えていただけたら……と願ってこの本を書きました。
まず,第1章で,ムーブメント教育の今日的役割やダンスによせられている期待,そして,「共創」という考え方などの背景をもとに,ダンスムーブメントの目的についてまとめてあります。第2章では,ダンスムーブメントを実践するための土台となる基礎理論を,そして,第3章では,ダンスムーブメントの構成要素を理解し,活動を発展させていくための基本ワークを紹介しています。第4章では,「家族支援」という考え方を軸にした活動を,第5章では,ドラマ性やファンタジーの要素の高い活動,そして,第6章では,舞台づくりを通した活動について,具体的な実践例を紹介しながら,「共創」に関わるダンスムーブメントの意義と広がりについて論じてあります。
たくさんの本の中から,この本を手にとっていただきありがとうございます。この本が,ダンスムーブメントの輪を広げ,あなたと誰かが共に創る場に少しでもお役に立てれば幸いです。
2008年7月 /大橋 さつき
-
- 明治図書