- まえがき
- 第1章 一人ひとりのニーズに応じた指導の充実を願って
- 第2章 運動・行動・ソーシャルスキルの指導と教材・教具
- 1 「ソーシャルスキルトレーニング」(SST)を始めるために
- ・ソーシャルスキル・集団参加行動
- 1 協力―相手にペースを合わせて協力できない― ポーンキャッチ
- 2 集団参加―集団のゲームに参加できない― 王様と仲間たち
- 3 役割遂行―当番の活動ができない― おそうじキングを目指せ!
- ・ソーシャルスキル・情緒的行動
- 4 自己・他者の感情理解―人の気持ちが分からない― 気持ちセレクト
- 5 自己・他者の感情理解―自分の気持ちを言葉で伝えられない― 本日のお気持ちタ~イム♪
- ・ソーシャルスキル・自己・他者理解
- 6 対人意識―友だちのことにあまり興味がない― 「ぼくの○○」当てまショー
- 7 自己・他者の特徴理解―詳しく自己紹介ができない― プロフィール探偵
- 8 自己・他者の特徴理解―自分(他者)の性格がよく分からない― グッド・バッド・チョイス
- ・ソーシャルスキル・言語的コミュニケーション
- 9 聞き取り―全体指示の中で聞き落としが多い― 人旗ゲーム
- 10 表現―相手に分かるように伝えることができない― 目隠しリレー
- 11 質問・回答―知りたいことを質問できない,聞かれたことに回答できない― ヒント&ピンポーン
- 12 話し合い―自分の意見を伝えられない,一方的に自分の意見を言う― 本日のテーマ「○○」で話し合おう
- ・ソーシャルスキル・非言語的コミュニケーション
- 13 表情認知―表情の違いが分からない― 表情マスター
- 14 ジェスチャー:視線―相手の視線を読むことができない― 目からビーム
- 15 身体感覚:対人距離―相手との適切な距離が保てない― だーれと話す!?
- 2 「運動」の指導を始めるために
- ・運動・粗大運動
- 16 複合運動,タイミング―ボール投げが苦手― タイミングでボール投げ
- 17 複合運動―縄跳びがうまく跳べない― らくらく縄跳び
- 18 バランス,複合運動―自転車に乗れない― 自転車はおもしろい
- 19 姿勢の保持―人とぶつかりやすい― 人ゴミ,スイスイ
- ・運動・微細運動
- 20 道具操作―鉛筆がうまく持てない,筆圧の調整がむずかしい― これなら書けるよ
- 21 道具操作―ハサミがうまく使いこなせない― これで,はさみ名人
- 22 道具操作―定規で線がずれる― 定規をしっかり
- 23 道具操作―コンパスで○が描けない― めざせ,コンパスマスター
- ・運動・協調性
- 24 目と手の協応―折り紙の角が合わない― 折り紙の角合わせ
- 25 目と手の協応―枡や行の中に文字が入らない― 枡や行を意識して書こう
- 26 目と手の協応―ちょうちょ結びができない― ひも結び練習台
- 27 目と手の協応―ボタンの留めはずしができない― ボタンにチャレンジ
- ・運動・姿勢保持
- 28 姿勢保持―椅子の上にじっと座っていられない― ハートフリークッション
- 29 姿勢保持―片方の手を机の上に置けない,身体が横に傾く― カットアウトテーブル
- 3「行動」の指導を始めるために
- ・行動・不注意
- 30 選択的注意―忘れ物が多い― 忘れ物ゼロメモ
- 31 注意の持続―集中力が続かない― 机上にきらきらチャレンジカード
- 32 注意の持続―聞き洩らしが多い,聞いたことを忘れる― メモを活用して
- 33 外部刺激―周囲の視覚刺激に影響され,集中できない― どこでも遮蔽版
- 34 プランニング・実行機能―予想したり,見通しを立てたりするのが苦手― ミニホワイトボードで,安心,確認
- ・行動・多動
- 35 多動―授業中,身体の一部を常に動かしている― これで集中!感覚刺激コントロール・グッズ
- 36 授業中に離席する―授業中にフラフラと立ち歩く― しっかり座って,青シールいっぱい
- 37 授業中に離席する―授業中でも,やりたいことがあると離席してしまう― 座っていられたよ!学習ルールを教えるカード
- 38 落ち着かない―じっとしていられず,椅子や机をガタガタ動かす― 静かにしていられたよ!
- ・行動・衝動性
- 39 欲求・行動の統制―授業中に大声で話す― 手拍子で注意カード,個別に約束カード
- 40 欲求・行動の統制―集団行動ができない,活動の切り替えができない― 今は,何をする時かな?
- 41 欲求・行動の統制―授業中に勝手に発言する― ルールを守ってニコニコ発言
- 42 欲求・行動の統制―並んで待つことが苦手― ケンステップ
- ・行動・情緒
- 43 感情の統制:イライラ―ちょっとしたことにすぐイライラする― なかよしノートで心も安全運転しよう
- 44 感情の統制:パニック―パニックを起こしたり,相手に手を出してしまう― 暴走ストップ大作戦
- 45 感情の統制:怒り―すぐに怒って暴言をはく,乱暴な行動をする― 火山爆発グラフと「レッツゴー」カード
- 46 感情の統制:不安―教室に入ることができない,学校では一切話せない― だいじょうぶだよブック
- 47 感情の統制:トラブル―状況の理解ができず,周囲とトラブルになる― 「まんがシート」で確かめて,「お守りカード」でトライ!
- ここで紹介している教材のまとめ
- 資料
- 1 手順表一覧&アドバイスカード
- 2 気持ちセレクトシート
- 3 気持ちシート
- 4 <好きなもの>アンケート
- 5 プロフィールシート&お助けメモ
- 6 伝え方のポイント
- 7 話し方・聞き方チェックシート
- 8 ヒントシート
- 9 やりとりのモデル&出題者と回答者の声かけの例
- 10 「アイスクリーム工房」について話し合おう
- 11 話し合いチェックシート
- 12 表情カード&感情カード
- 13 付箋メモつき連絡帳
- 14 きらきらチャレンジカード&チャレンジ日記
- 15 しっかり座って!がんばり表
- 16 注意カード&約束カード
- 17 心の安全運転カード
- 18 火山噴火グラフ&「レッツゴー」カード
- 19 だいじょうぶだよブック
- 20 まんがシート&お守りカード
- あとがき
まえがき
本書は,2010年9月に第1巻を刊行した「発達障害のある子への最適サポート&ツール」シリーズの第2巻として刊行するものである。第1巻は,学習面の困難の中心である「国語・算数」を対象としたが,第2巻では,行動面の困難に焦点をあて,「ソーシャルスキル・運動・行動」を取り上げた。
2001年に,「21世紀の特殊教育の在り方について」(文部科学省の協力者会議報告書)で,LD,ADHD,高機能自閉症等の発達障害のある児童・生徒に対する教育的支援の必要性が提言されてから10年以上が経過した。この間,2005年には発達障害者支援法が施行され,2007年には特別支援教育が制度としてスタートし,発達障害のある児童・生徒に対する支援体制は格段に進展した。一方,発達障害のある児童・生徒が持つ学習上・行動上の困難は多様であり,個々のニーズに応じた支援が必要とされているが,教員の方からも,保護者・当事者からも,まだまだ実現に至っていないという声が聞かれる。
本シリーズは,そのような声に応え,発達障害のある個々の児童・生徒が示す困難を体系的に整理し,個々の困難と困難の要因に合わせた指導法や教材・教具をご紹介することを目指し企画したものである。
本書では,行動面の困難の中核症状であるソーシャルスキル・運動・行動に焦点を当てた。発達障害のある子どもたちの多くは,行動面の困難を抱えており,学齢期に主症状として問題になる場合もあるが,むしろ就労・自立の段階で大きな問題となるケースが多い。発達障害のある子どもたちは,行動面のスキルを自然と身につけることが難しい場合があるが,子どもたちの認知特性や行動特性に合わせて,適切に支援・指導することにより体得したりこなしたりすることが可能である。本書では,現場経験が豊富で実績のある先生方にお願いして,実践の中から生まれた指導法や教材・教具に加えて秘伝の技(コツ)を紹介していただいた。
子どもたちが持つ困難を体系化し,それに合わせた指導法や教材・教具を整備すれば,指導法の確立につながるのではないかと本書を企画したが,指導法や教材・教具は,決して「万能薬」ではないので,どのような子どもに,どのように使うかにより,指導効果が違ってくる。まずは,子どもが示す表面的な困難だけでなく,困難の要因を把握し,それに合わせ,教材・教具を選んだり,指導法を工夫したりすることが必要である。また,教材・教具が持つ意図を理解し,指導技術を高め,工夫を加える事により,より高い指導効果が得られるのである。
最後に,本書を出版するにあたり,ご協力・ご指導をしていただきました小貫悟先生,辻薫先生,武藏博文先生,柘植雅義先生,お忙しい中執筆をした下さった先生方,わがままな注文を受け止めしっかりとまとめて下さった明治図書の佐藤智恵氏に深謝したい。
編著者を代表して /山岡 修
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- 明治図書