- まえがき
- 1章・学習指導案作成上の留意事項
- 1 面倒な学習指導案書き
- 2 学習指導案の種類と様式
- (1) 種類
- 3 学習指導案(細案)
- (1) 1年に1回細案を
- (2) 様式
- (3) 単元(題材)名
- (4) 単元設定の理由
- (5) 単元の目標
- (6) 児童(生徒)の実態
- (7) 指導計画
- 4 本時の指導
- (1) 表題
- (2) 目標
- (3) 展開の基本
- (4) 縦軸欄
- (5) 横軸欄
- 5 通常の学級に障害をもつ子どもが在籍している場合の本時の展開例
- 2章・知的障害特殊学級の新しい学習指導案
- 日常生活の指導 おはよう! 朝の会をしよう
- 遊び学習 「ふうせんバスケットボールをしよう」の実践から
- 生活単元学習 友達と豊かにかかわる生活単元学習
- 作業学習 作業学習を学校全体へ
- 総合的な学習 「みんなでそばをつくろう!」の実践から学習活動のつながりを図式化し,指導内容等を整理する
- 国語 ITを使った自己実現
- 算数 「やかんカーリングをしよう!」の実践から学習の重点化と評価の活用
- 図工 通常学級で行う授業・学級独自で行う授業
- ◇コメント◇創造的な学習活動を促す授業づくり
- 3章・知的障害養護学校の新しい学習指導案
- 日常生活の指導 「給食」学習指導案
- 遊び学習 さるかにごっこ遊び
- 生活単元学習 チケットを買って「なかよしパーク」で遊ぼう
- 作業学習 一人でできる喜びを自信につなげる,ジグを活用した作業学習
- 総合的な学習 外国語指導助手(ALT)との交流を中心に
- 自立活動 おはなし しよう
- 音楽 音楽科学習指導案「小学部さくら学級」(1,2年)
- 体育 個の教育的ニーズに応えた体育の授業作り「ドリブルシュートリレーがんばろう」
- ◇コメント◇子どものニーズと形式の多様化
- 4章・多様化を考慮した学習指導案
- 肢体不自由の子の場合 肢体不自由に他の障害を併せ有する重複障害児を対象とした授業実践を中心とした学習指導案の作成について
- 自閉症をもつ子の場合 マナーやルールについて知ろう!
- 学習障害(LD)をもつ子の場合 好き(得意)な活動を活かしたカタカナの指導
- ADHDをもつ子の場合 ちがいを知ること,認め合うこと
- ◇コメント◇〈場〉と〈文脈〉を共有するということ
まえがき
知的障害教育は,戦後一貫して子ども中心の教育や生活中心の教育をしてきました。このような場合,学習指導案は,教科指導に比べて書きにくいと言われてきました。昭和30年代に入り通常の教育では,授業研究が始まり子どもたちの思考のプロセス,認識のプロセス,コミュニケーションのプロセスなどの科学的な研究が進められました。
知的障害教育では,昭和40年代に入り授業研究に着手した方がおりましたが,生活中心の教育にはなじまないということで非難されました。
昭和60年代の初頭,私たちは,「障害児の授業研究」誌を創刊しました。当時,授業研究は,生活中心の教育や子ども中心の教育に傾倒している先生方には,理解されにくく軌道に乗せるのにだいぶ苦労しましたが,現在は,多くの先生方に支えられています。なお,期間を隔月にしてほしいと希望も耳にしています。
編著者は,平成7年3月に『障害児教育で効果的な指導案の作り方』を刊行しました。この本は,昭和40年度あたりから平成6年度までの約30年間の文部省特殊教育教育課程研究指定校約70校の発表会当日の学習指導案(細案)約700ぐらいを分析しまとめたものです。この間の学習指導案(細案)は,「指導上の留意点」は「支援」に変わり,「指導上の留意点」の文末は,「〜させる」が圧倒的に多かったのですが,あれから約10年の移り変わりの学習指導案を見ますと「〜させる」が激減して「〜する」に変わっています。
通常の教育では,平成の時代に入ると,一層,子どもたちの興味・関心,意欲・態度が重要視され,生活科が新設されました。平成10年度からは,総合的な学習が新設され「生きる力」「主体性」「判断力」「計画性」などが声高に言われるようになりました。この面では,知的障害教育のめざす方向と同じです。
学校教育は,限られた年限ですから,意図的・計画的であることが必要です。意図的・計画的である授業は,子ども理解がしっかりとでき,子どもの興味・関心,意欲・態度などを踏まえた計画でなければなりません。このためには,授業にあたって子ども理解と教材研究が不可欠です。
子ども理解は,心理学の研究も大切ですが学習指導案を書くと子ども一人一人が見えてきます。子ども一人一人が見えてきますと,一人一人に対し何をすればよいかが分かります。
学習指導案は,書きつけないと書くのがおっくうなものです。初めから細案を書こうと思うからおっくうになるのです。初めは,メモでいいのです。次に細案を書く癖をつけることです。
細案は,研究会がなくても授業力をつけるために自主的に書くことです。次に学期に1回程度細案を書くように努力することです。教師生活35年で約100回書くことになります。実際には,教師生活35年で細案を100回書く教師は極めて少ないでしょう。研究会があるから細案を書くのでなく,プロ教師としての授業力をつけるために,せめて,自主的に毎年1回程度は書きたいものです。このときは,学校から指定される学習指導案の様式こだわることなく自分の教育理念がみえるように様式を工夫してみるのも楽しいものです。
現在,知的障害教育の場で学習指導案に関して要求され期待されている事柄は,@学習指導案の多様な様式 A学習指導案の作り方 B授業の展開の仕方 C子ども理解 D教材の順序性の理解などです。本書は,それらに応えるために編集・作成しました。きっとお役に立つと思います。ご活用いただけたら幸いです。
最後になりましたが,本書を作成するにあたり,お忙しいにもかかわらずご執筆いただきましたこの道のベテランの諸先生,本書の企画・作成に特別のご高配をいただきました明治図書株式会社並びに編集部の三橋由美子氏に心からお礼を申し上げます。
平成17年7月 編 著 者
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- 明治図書