- はじめに
- 第T章 「からだづくり」の意義
- 1 はじめに
- 2 子どもたちの体力
- 3 障害のある子の運動
- 4 脳の発達と運動
- 第U章 知的障害のある子の実態と「からだづくり」
- 1 知的障害のある子の実態
- @本校児童生徒の障害別人数/A児童生徒の休み時間の様子/B放課後の様子/C本校における肥満児について
- 2 「からだづくり」の考え方
- @栄養/A運動/B休養
- 第V章 「からだづくり」の実践
- 1 リトミック
- 1 はじめに
- @リトミックとは?/Aリトミックの方法及び効果/B身体活動,運動の必要性
- 2 金沢大学教育学部附属養護学校におけるリトミック
- @方法とねらい/A25年のあゆみ/Bリトミックの運動強度
- 3 児童生徒の様子
- @A男―微細脳損傷,運動機能障害/AY子―軽度脳性マヒ
- 2 トランポリン
- 1 トランポリンの歴史と特徴
- 2 本校のトランポリン
- @授業での取り組み/A課外活動での取り組み/B卒業生との活動/C子どもの様子
- 3 まとめと今後の課題
- 3 エアロビクス体操
- 1 エアロビクス体操について
- 2 本校での取り組み
- [エアロビクス体操の構成]
- 3 指導の経過
- 4 まとめ
- [附養エアロビクス体操の構成]
- 4 ストレッチ体操
- 1 ストレッチ体操とは
- 2 本校のストレッチ体操
- 5 Gボールを使ったボールエクササイズ
- 1 Gボールとは?
- 2 今なぜGボール?
- 3 小学部での取り組み
- 4 小学部「元気タイム」の実践
- @児童の様子/A実践/Bまとめ
- 5 高等部「体力づくり」の取り組み
- @生徒の様子/A実践/Bまとめ
- 6 親子で取り組む課外活動
- 7 まとめと今後の課題
- 6 陸上競技
- 1 はじめに
- 2 前半の陸上部
- @活動の様子/A活動内容
- 3 後半の陸上部
- @活動の様子/A活動内容
- 4 生涯学習の活動として
- 7 水泳
- 1 小学部の水泳指導
- @はじめに/A指導のポイント/B子どもの様子
- 2 中学部・高等部の水泳指導
- @生徒の様子/A失敗の事例
- 8 自転車
- 1 はじめに
- 2 小学部での自転車指導
- @自転車指導の手順/A子どもの事例
- 3 中学部の自転車指導
- 第W章 まとめ
- 1 生活にいきる「からだづくり」
- 2 「からだづくり」実践と今後の課題
はじめに
今,日本ではLDやアスペルガー症候群,高機能自閉症,ADHDなど,いわゆる軽度発達障害と言われる子どもが約6%の割合で普通学級に在籍していると言われています。そのため障害児教育は「場」による特殊教育から「ニーズ」による特別支援教育へと大きな変革期に入っています。そして養護学校では子どもたちへの教育という今までの仕事に加えて地域の「センター的機能」を果たすことが求められるようになりました。また子どもを就学前から卒業後までという長いスパンで捉えることの必要性が唱えられ,個別の教育支援計画に基づいて個別の指導計画を立てることが義務付けられました。それに関係機関と連携をとりながら教育をしていくということが当たり前になり,そのためのコーディネーターが各養護学校に配置されています。このように大きく時代がうねり,何もかも変わってしまうように見えますが,その中でも昔と全く変わらず大切なことがいくつかあると思います。その1つが「からだづくり」と言えるでしょう。
知的発達障害のある子どもは何のために運動するのかという目的意識がもちにくかったりルールの理解が困難で集団でのゲームに参加しにくかったりして,運動によるからだづくりはそれほど容易ではありません。しかし高等部を卒業してわずか1年くらいで見事に肥満体型になっている人たちを見ると運動習慣の必要性を強く感じざるを得ません。運動不足による肥満そして生活習慣病へとつながらないように,その予防については学校時代から考えなければならないと思っています。
私たち金沢大学教育学部附属養護学校では30年ほど前から始めたリトミックを初めとして課外活動としての陸上部やトランポリン教室,実践研究としてのエアロビクス体操やストレッチ体操,ボールエクササイズ等,子どもたちの「からだづくり」の取り組みを継続的に行ってきました。取り組みの形態はリトミックのように学校全体で行ったもの,エアロビクス体操やストレッチ体操のように「からだづくり」研究グループとして行ったもの,陸上部やトランポリン教室のように課外活動として行ったもの,水泳のように授業の中身として行ったもの等いろいろあります。そしてその中で本校独自のプログラムを考案・指導実践し,そのつど研究紀要の形で発表してきました。今回それらの実践を1冊の本にまとめる機会をいただいたというわけです。
保護者を初めとして子どもたちのからだづくりに関心をもっておられる教員,作業所等の指導員,生涯教育関係者,福祉関係の方々そして一般の方々に読んでいただき,何かの参考になれば幸甚です。
2006年6月
金沢大学教育学部附属養護学校 /「からだづくり」研究グループ
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- 明治図書