- まえがき
- 第1章 発達障害の子がいるクラスの授業・学級経営
- 1 教師の悩み
- 2 教育現場の現状
- 3 授業と学級経営
- 第2章 やる気と自信を育むために
- 1 悪循環を防ぐ
- 2 ほめるプラスの指示
- 3 所属感と活躍できる機会
- 第3章 子どものいまの実態を把握し,指導計画を立てる
- 教育的見立てのあり方
- 1 通常の学級の教師が実施すべきアセスメント
- 2 教室での気づきチェックリスト
- 3 教室環境のチェックリスト
- 4 心理検査の活用術
- 5 指導ポイントの設定
- 第4章 授業づくり・学級経営の実践事例
- キーワードで理解!主に授業と学級経営で効果をあげる方法
- 1 注意をひきつける
- 2 ルールの定着と気持ちの受け止め
- 3 授業のアドリブ
- 4 認知特性と授業づくり
- 5 授業の振り返り
- 6 学習の自己選択
- 7 学習ノートの活用
- 8 保護者と協力した「やる気」を生み出すかかわり
- 9 子ども間のトラブル予防と対応
- 10 社会性の集団指導
- 11 TT・支援員の活用
- 12 学習の個別指導
- 13 社会性の個別指導
- ※資料 オープンスペースのある学校でのユニバーサルデザインを目指した取り組み
- 第5章 発達障害のある子どもへの指導
- 困難さの理解から支援へ!主に個別指導で効果をあげる方法
- 1 ひらがなや漢字を読むことが苦手
- 2 書くことが苦手
- 3 計算することが苦手(くり上がりのつまずきに対して)
- 4 空間認識が苦手
- 5 算数の文章題が苦手
- 6 自分の考えを話すことが苦手
- 7 人の話を聴いて,理解することが苦手
- 8 集中力が続かず,授業に集中できない
- 9 順番を守るなどの基本的なルールを守ることができない
- 10 忘れ物が多い
- 11 相手を不快にさせる発言を多くする
- 12 気持ちのコントロールができず,すぐにキレる
- 13 対人関係がうまく築けない
- 14 個別指導を本人が嫌がって受けない
- 第6章 子どもを深く理解し,支援するための必須キーワード20
- 1 発達障害
- 2 LD
- 3 ADHD
- 4 高機能自閉症・アスペルガー症候群
- 5 知的障害
- 6 脳機能
- 7 実行機能
- 8 認知
- 9 社会的認知
- 10 心の理論
- 11 注意
- 12 記憶
- 13 行動抑制
- 14 社会的学習
- 15 動機づけ
- 16 ことばの4つの側面(音韻,統語,意味,語用)
- 17 自己概念,自尊感情,自己肯定感
- 18 行動分析学
- 19 発達的支援
- 20 ソーシャルスキル・トレーニング
- 参考・引用文献
- あとがき
まえがき
平成19年4月より特別支援教育がスタートした。通常の学級の担任教師にとって,LD,ADHD,高機能自閉症・アスペルガー症候群などの発達障害がある子どもの理解と指導法を知ることは必須である。ただ,学校教育現場にいる教師にとって,日々の授業と学級経営こそ真髄だ。だからこそ,発達障害のある子どもへの指導を考える際にも,授業と学級経営という視点から見つめる必要がある。
筆者は,これまで発達障害のある子どもへの支援について,数え切れないほどの学級を訪問してきた。そこで,たどり着いた学校教育現場での一つのキーワードは「やる気」と「自信」。どの子どももやる気を出して,また適度な自信をもって一生懸命取り組む姿。失敗しても諦めず,もっと知りたい! やってみたい! と思える授業。それは,発達障害のある子どもだけでなく,どの子どもたちにも見せて欲しい姿だ。子どもたちの素敵な笑顔あふれる教室に,是非ともなって欲しい。そういう願いを抱き,われわれ編著者と現場の教師が,“プロジェクトM”(詳細は,あとがきをご覧下さい)と称するチームを結成し,本書の執筆に携わった。
本書は,「やる気」と「自信」をキーワードに,実際に発達障害のある子どもがいるクラスで授業や学級経営を行っている教師の声を多く集めている。「理念」ではなく,教師自らの実践や体験に基づく「現場からの提言」が,盛り込まれている。したがって,特別なやり方ではなく,現場の多くの教師が,「これならできそうだ!」「やってみよう!」と感じてもらえるはずだ。また,主に個別的な指導でのポイントや子どもをより深く理解する手がかりとなる必携キーワードなども盛り込んだ。欲張りすぎかもしれないが,絶対に欠かせない内容。しかし,これ1冊あれば,可能なかぎりいまの授業と学級経営に対応できる書籍を目指した。
授業や学級経営は,これが正解といえるような,単純明快なものではない。発達障害のある子どもがいるクラスでの授業や学級経営の工夫も,もちろんその子どもやクラスの状況によって異なる。ただ,現場の教師にとって,情報を共有することは欠かせない。特に,始まったばかりの特別支援教育をすすめるなかで,困難もあろう。情報を得る手段はさまざまにあると思われるが,本書が現場の教師にとって少しでも役に立ち,子どもたちの笑顔につながることを願っている。
最後に,本書の企画を快くお引き受けいただいた明治図書の三橋由美子氏と全力で編集作業に取り組んで下さった川村千晶氏に心よりお礼申し上げる。
2008年1月 /小島 道生
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- 明治図書