- はじめに
- T
- 1 ことばを育てる
- 2 ことばを育てるためには…
- 3 発音について
- U
- 1 発音の力を育てるおもちゃ
- (吹いて遊ぼう)
- ◆いろいろな息の使い方◆
- 1 ベロベロへび〈へびの舌の動きでわかる息の流れ〉
- 2 パクパクぞう〈鼻の動きで安定した長い息ができる〉
- 3 パクパクかば〈かばの大きな口を一気に上げて強い息〉
- 4 パクパクわに〈わにの口の細かい動きで短い息の習熟〉
- 5 パクパクらいおん〈吠えているように動いて強い息の練習〉
- 6 ビヨヨンきりん〈首を伸ばしたり縮めたりして肺活量を上げる〉
- ◆息のコントロールの習熟◆
- 7 花車〈息の微妙なコントロールから強化までできる〉
- 8 花笛〈笛を鳴らして息の強さを一定にできる〉
- ◆子音の練習◆
- 9 単音の基礎[p]吹き矢〈遠くに飛ばすことで破裂音「パ」の練習〉
- 10 単音の基礎[t]トコトコたこ〈たこの動きで「タテト」の息の練習ができる〉
- 11 単音の基礎[F]コロコロ自動車〈車のスピードでわかる「フ」の練習〉
- (声で遊ぼう)
- ◆発声の基礎◆
- 12 ブルブル電話〈手で振動を感じて声を出すことを楽しむ〉
- 13 あいうえおカード〈絵を見て母音口形がわかるカード〉
- 2 ことばの力を育てるおもちゃ
- (考えて遊ぼう)
- 14 合成カード〈発音要領を理解するための知育カード〉
- 15 かるた〈語彙を増やし思考力を高める〉
- 16 神経衰弱〈カードで遊んで記憶力や集中力を高める〉
- 17 六面パズル〈ものの特徴をしっかり考えて構成する〉
- 18 文字パズル〈文字への興味や音韻意識を育てる〉
- (動かして遊ぼう)
- 19 ブラブラペープサート〈だれでも簡単に動かせて楽しいペープサート〉
- 20 パクパク人形〈手指機能も高めながら親子で人形遊び〉
はじめに
平成19(2007)年度の1学期,聾学校の保護者(幼稚部3歳児)に聴覚障害のある子どもの理解のための講座を行いました。基本的生活習慣の大切さや,聴覚活用,言語指導,発音指導について話をしました。発音の基礎を理解してもらうために親子で楽しめる発音教材も考えて,その作り方を教えて保護者に作ってもらいました。親子で遊びながら,息のコントロールが上手になりました。その中の教材の1つである「パクパクぞう」は,財団法人障害児教育財団主催の平成19年度教材教具展示会で文部科学大臣賞をとり,新聞でも紹介されました。
障害のある子どもたちにとって大切なことは,一般の子どもたちにとっても大切なことだと考えています。障害児教育と言っても特別なことはしているつもりはなく,個々の子どもに合わせて課題内容やペースを配慮しているだけです。障害のあるなしにかかわらず,子どもたちの成長にとって大事なことは,生き生きとした生きる力を身につけることです。
大阪教育大学のときに教えていただき,その後,京都大学の教授になられた今は亡き村井潤一先生とお会いしたとき,先生からこう尋ねられました。「梅崎君,子どもはどうしてことばを覚えると思う?」「……」村井先生は「子どもにとっては遊びだからだよ」と笑って言われました。あまりにも明快な答えであり,今でも大切にそのことばを心に刻んでいます。
言語訓練や言語指導ではなく,ことばの獲得は子どもにとっては,遊びでなければなりません。楽しくないと,おもしろくないと子どもは本気でやってくれないのです。そのために遊んで学べるような教材を考えてきました。あまり凝り過ぎて時間ばかりかかるようでは,子どもの発達や成長のタイミングには間に合いません。簡単で楽しく遊びながらできるものがいいはずです。家庭でも学校でも,幼稚園,保育園でも大人と子どもの会話,子どもと子どもの会話がずいぶん減っているように思います。コミュニケーション豊かな子どもに育てるためには,大人たちが子どもとの会話を楽しめることが大切です。家庭でも学校でも,きちんと向かい合い,目と目を合わせて,子どもとのやりとりを小さい頃からしないと,決してバランスのとれた人間としては成長しないでしょう。
「遊びながら学ぶ発音・発声,ことばの指導」では,簡単に作れるおもちゃを通して,大人と子どもがやりとりする中で発音やことばの指導が楽しくできるようにと考えました。多くの方に作っていただければと思います。
30年間障害児教育にたずさわってきて,自分のこうした考え方に共感していただいた明治図書編集部の三橋様,橘様には感謝しています。私の実践が多くの方の参考になればと思います。
2009年3月 著者 /梅崎 祐司
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- 明治図書
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