- はじめに
- Part1 まるごと早分かり ! フォニックス指導入門
- 1 なぜフォニックスか? その必要性とは?
- 2 フォニックスとは何か?
- (1) フォニックスの定義
- (2) フォニックスルールとは? また,その数は?
- (3) フォニックス指導の原理
- (4) フォニックスの指導手順
- (5) フォニックス指導のメリット
- 3 武田流・フォニックス指導法
- (1) 教科書の単語分析について
- (2) どの学年で行うか? いつから指導を開始するか?
- (3) 授業のどこで,どのようにフォニックス指導を行うか?
- (4) フォニックスの指導計画は? いつまで続けるのか?
- Part2 授業ですぐ使える ! フォニックスワーク
- 1 ワークシート活用のポイント
- 2 ワークシートの使い方 (例)15 組合せ文字sh
- 3 フォニックスワーク35
- 音のアルファベット
- 1 音のアルファベット
- 2 音のアルファベットだけで読める単語@
- 3 音のアルファベットだけで読める単語A
- 4 音のアルファベットだけで読める単語B
- マジックe
- 5 マジックe(a−e)
- 6 マジックe(i−e)
- 7 マジックe(o−e)
- 8 マジックe(u−e)
- 礼儀正しい母音
- 9 礼儀正しい母音ea
- 10 礼儀正しい母音ee
- 11 礼儀正しい母音ai
- 12 礼儀正しい母音ay
- 13 礼儀正しい母音ow
- 14 礼儀正しい母音oa
- 組合せ文字
- 15 組合せ文字sh
- 16 組合せ文字ch
- 17 組合せ文字ck
- 18 組合せ文字ph
- 19 組合せ文字wh
- 20 組合せ文字th〈息のth〉
- 21 組合せ文字th〈声のth〉
- 22 組合せ文字oo〈短いoo〉
- 23 組合せ文字oo〈長いoo〉
- 24 組合せ文字ew
- 25 組合せ文字ow
- 26 組合せ文字ou
- 27 組合せ文字au
- 28 組合せ文字all/al
- 組合せ文字(rの付いた母音)
- 29 組合せ文字(rの付いた母音)ar
- 30 組合せ文字(rの付いた母音)or〈forのor〉
- 31 組合せ文字(rの付いた母音)or〈workのor〉
- 32 組合せ文字(rの付いた母音)er
- 33 組合せ文字(rの付いた母音)ur
- 34 組合せ文字(rの付いた母音)ir
- 35 組合せ文字(rの付いた母音)air
- コーヒー・ブレーク
- 自作のフォニックステキスト
- フォニックスと訳読
- フォニックスの論文
- フォニックスのプレゼン
- フォニックスのワークショップ
- フォニックス指導の副産物
- フォニックス指導必携書
- フォニックス指導ができない校内事情
- 参考文献
はじめに
私とフォニックスの出会いはかつて親友であったアメリカ人ALT(英語指導助手)のカルロスが「自分は幼いときにフォニックスを習って英語が読めるようになった。日本の生徒たちにもぜひ教えよう。」と私を誘ったのがきっかけでした。フォニックスについての知識がまったくなかった私は松香フォニックスの書籍を読んだりそのワークショップに参加したりしながら,彼とフォニックスの指導を少しずつ開始しました。その後,愛媛県総合教育センターや愛媛大学大学院でフォニックスについて勉強しました。そして,フォニックスを授業に本格的に取り入れるようになって今年で17年目になります。その間,愛媛県の喜多郡,松山市,大洲市,八幡浜市と地域の異なる6つの公立中学校に勤めてきましたが,どこの学校においてもフォニックス指導は生徒たちにとってまったく斬新であると同時にたいへん好評でした。もちろん今でもそれは変わりません。ほとんどの生徒が「フォニックスの学習はとても役に立った。英語が自分で読めるようになった。単語が覚えられるようになった。」などと高い評価をしてくれます。
以下にフォニックス学習に対する生徒のコメントの代表的なものを載せます。
○「最初は英語の読み方が全然分からなかったけど,フォニックスの勉強を通して単語や文が自分の力でだんだん読めるようになりました。そのことがとてもうれしくて今では英語が大好きになりました。」
○「それぞれの文字の音がよく分かったので,単語がスラスラ読めるし,難しいつづりも書きやすくなった。フォニックスはすごく役に立っています。」
○「フォニックス学習のおかげで,私の英語の発音が前よりずっとよくなりました。そして,習ってない単語でも読んでやろうという意欲がわいてきました。これは本当にすごいことだと思います。」
○「フォニックスを習う前と習った後では単語のつづりを覚えるスピードが全然違うことにたいへん驚きました。また,CDなどの単語もよく聞き取れるようになりました。私はフォニックスを勉強することができて,とてもラッキーでした。」
○「以前はローマ字読みで単語を読んだり覚えたりしていたけど,今では英語の読み方で読めるようになったし,英語のまま覚えられるようになりました。フォニックスを指導してくださり,ありがとうございました。」
○「フォニックスのおかげで読めなかった単語や読みにくい単語が楽に読めるようになった。また,フォニックスは英語の教科書を読むときだけでなく,日常生活の英語を読むときにも役に立っている。」
○「フォニックスのおかげで身近な単語が読めるようになりました。歌詞なども簡単なものなら,読めていると思います。これからも家庭や外に出て英語を積極的に読んでいきたいです。」
このような喜びや感動の体験をできるだけ多くの生徒たちにしてもらいたいと思っています。現場の先生方が日々の英語授業の中にフォニックス指導を取り入れ,英語好きな生徒が増えることを祈ります。
英語はドイツ語やスペイン語など他の多くのヨーロッパ語に比べ,文字と音の関係が複雑でつづり字通りに読めないことが多く,ネイティブの子供たちでも最初からは正しく読めないと聞いています。英語国民でない私たち日本人にとってはなおさらのことだと思います。アルファベット26文字の名前を教えた後,すぐに教科書の本文を読ませ,単語の書き取りテストで引っぱっていくやり方では授業についていけない生徒が出てくるのも無理はないと思われます。先日,市内の英語科の授業研があり1年生の英語授業を参観しました。そこで私が少なからず気になったことがありました。それは生徒たちの話すfirst,second,third,doesn'tなどの単語が,それぞれ「ファースト」「セカンド」「サード」「ダズント」のように,語尾に不必要な母音の「オ」を加えた典型的な“カタカナ発音”になっていたという点です。私は“カタカナ発音”の定着は極力避けるべきだと考えています。入門期に適切なフォニックス指導がなされていれば,tの文字が表す音は【t】,dの文字が表す音は【d】と教え,毎時間の単語の“当て読み”練習の中で継続指導していくのでこのようなことは防げたと思われます。
発音は語学の生命だと私は考えています。そして,我々英語教師の大きな役割の一つは,生徒に文字と音の関係を教えて,自分の力で英語が正しく読めるように導くことだと思っています。フォニックス学習を通して,生徒たちは自分の発音に自信を持つようになります。それは,彼らが文字や文字の組合せが表す音を正しく言えるようになり,それらをつないで単語が正しく発音できるようになるからです。したがって,学習意欲を喪失する“カタカナ発音”や単語の丸暗記はしなくてもすむようになります。つまり,生徒たちはフォニックスを学ぶことによって英語のコミュニケーション能力の土台の部分を固めることができるのです。
私はこれまでにフォニックス指導の有効性に関する7つの研究論文を学会誌などに書いてきました。そして今回,毎年改良の手を加えながらフォニックス指導に使ってきた自作の生徒用テキストをワークシート形式にしてその使用法と共に本書で紹介することになりました。この上ない喜びです。また,フォニックスを授業の中で必要に応じて部分的に使っておられる先生は多いと思いますが,私のようにフォニックス指導の時間を日々の英語授業の中に位置付けて計画的に指導することはあまりないのではないかと思います。本書では中学3年間を通して毎日の英語授業の中でフォニックスを継続指導していく方法を提示しています。本書がフォニックス指導の入門書であると同時に明日からの指導に直結した実用書となって,現場の先生方のお役に立てることを願っています。
最後になりましたが,この本の出版を企画していただいた上に,歩みののろい私の原稿書きを温かく応援し続けてくださった明治図書教育書編集部の木山麻衣子さまに厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。
平成23年7月 /武田 千代城
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- 明治図書
- よかった2021/11/1240代・中学校教員