- はじめに
- Part1 読み取り表すことから始まる算数授業づくりのポイント
- @ 解釈する力・表現する力が弱い日本の小学生
- A 解釈問題を用いた授業で思考力・表現力を鍛える
- B 教科書を開いて,教科書の解き方を解釈させる指導
- C 解釈問題の与え方の工夫
- D 本書の使い方
- Part2 読み取り教材を使った授業事例25
- 読み取り教材のねらいと解答例
- 授業づくりのポイント
- 板書計画
- 展開
- 読み取り教材
- 1学年
- 1 ひきざん(1)
- のこりはいくつ?
- 2 ひきざん(1)・ちがいはいくつ
- いくつおおい?
- 3 大きさくらべ(1)・くらべてみよう
- 水のかさをくらべよう
- 2学年
- 4 かけ算(2)
- かけ算を使った問題をつくろう
- 5 かけ算(2)・九九のひょう
- シールの数を工夫して求めよう
- 6 かさ
- 水のかさをくらべよう
- 7 三角形と四角形
- 長方形と正方形を見つけよう
- 3学年
- 8 2けたをかけるかけ算の筆算
- 2けた×何十の計算の仕方を考えよう
- 9 時間と長さ
- 時間の計算の仕方を考えよう
- 10 重さ
- 重さくらべの方法を説明しよう
- 11 表とグラフ
- 表に整理しよう
- 4学年
- 12 式と計算の順序
- 買い方を説明しよう
- 13 式と計算の順序
- 式の意味を考えよう
- 14 概数とその計算
- 計算見積もりの方法を考えよう
- 15 垂直・平行と四角形
- ひし形のかき方を考えよう
- 5学年
- 16 小数÷小数
- 整数÷小数の計算の仕方を考えよう
- 17 分数
- 分母のちがうたし算の計算の仕方を考えよう
- 18 体積
- 体積の求め方を考えよう
- 19 単位量あたりの大きさ
- 混み具合を調べよう
- 20 合同な図形
- 合同な四角形のかき方を考えよう
- 21 割合
- 割合を使って買い物をしよう
- 6学年
- 22 分数×分数
- 分数×単位分数の計算の仕方を考えよう
- 23 比例と反比例
- 比例を使って問題を解こう
- 24 比とその利用
- 比を使って問題を解こう
- 25 場合を順序よく整理して
- 組み合わせや並べ方の問題を仲間分けしよう
はじめに
本書は,足場のある算数授業の本としては5冊目で,『伝え合い学び合う「足場」のある算数授業』(明治図書)に続くものである。この本では子どもの思考力や表現力を育てるための学習指導方法のポイントを7つの秘訣として述べたが,この中の1つに「読み取り表す活動を取り入れる」ことを挙げた。本書はこの「読み取り表す活動を取り入れる」ことに焦点をあてて,子どもの思考力・表現力を育てるための算数授業を実現するために書かれている。
さて,全国学力テストでは毎年,「解釈する力」や「表現する力」を問う問題がB問題で出題されている。この「解釈する力」や「表現する力」とは,それぞれ「言葉,式,図,表などを用いて数学的に表現されたものの意味や考え方を理解したり,特徴を読み取ったりする力」,「自分の考えを言葉,式,図,表,グラフなどを用いて数学的に表現したりする力」のことである。本書は,これらの力の育成に役立つ図や式などの資料から考えを読み取り,理解したことを的確に表すことが問われる「読み取り」教材(読解問題)を活用した足場のある授業実践をもとに作成されている。
算数の授業と言えば,子どもに問題を与え,問題を読んで理解し,式を立て,計算して答えを出すことが主流となっている。しかし,問題と式を最初から与え,どのような考え方で与えられた式を導いたかを読み取らせ,説明させる活動を最初に仕組んでみてはどうかと考えた。このような活動は,クラス全員が同じ「読み取り」教材を考察し,読み取った事柄を子どもの力量に応じて説明させるので,解釈する力や表現する力を育てることができる。
例えば,1時間の授業で2つの主問題を扱う時,問題1で本時の学習内容をこのような「読み取り」教材で学習すれば,全員の子どもが指導したい内容を習得できる。その後,通常タイプの問題2で「読み取り」教材で学んだことを自分の学習の理解を試すために取り組ませることで,子ども一人一人が考える,分かる,できる授業が実現できる。
本書が子どもの思考力・表現力を育てるための算数の授業改善に役立つことを願っている。
最後になりましたが,明治図書の木山麻衣子課長には,本書の企画構想段階から支えていただきました。厚く感謝申し上げます。
2010年12月18日 横浜国立大学教育人間科学部 /石田 淳一
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