- まえがき
- 第一章 小学生が楽しく学ぶ! 京女式古典学習法
- 1 古典の音読は子どもの心にこう響く
- 2 対話をキーワードに古典の学習を進めよう
- 第二章 対話でつくる! 新授業モデル18
- 低学年
- 1 むかしばなし「いっすんぼうし」と「うらしまたろう」
- 2 昔話の世界
- 3 枕草子「春はあけぼの」
- 4 いなばの白うさぎ
- 5 京の通り名
- 6 伊曾保物語とイソップ物語
- 中学年
- 1 竹取物語
- 2 枕草子「虫は」
- 3 俳句 季語さがし
- 4 落語「ぞろぞろ」
- 5 故事成語
- 6 昔話を読み合う
- 高学年
- 1 春望
- 2 論語「学びて時に之を習ふ」
- 3 短歌「清水へ」
- 4 花鏡「初心忘るべからず」
- 5 古今和歌集 仮名序
- 6 昔話「子そだてゆうれい」
- あとがき
まえがき
小学生が古典を学習する意味は、日本の伝統文化に親しむ基礎をつくることである。それは、音読を通して古典の響きに心を向けたり、語や語句の由来を知ったりすることである。理屈でなく体験的に習得していくので、年齢を重ねるごとに効果が表れる。また、昔の人のものの考え方を知ったり、伝統文化として継承されたことを理解することは、未来に向かって日本文化を大切にするという志を育てていく。
小学生に古典を指導する際は、大上段に構えてするのではなく、興味を持っているところを入り口にすると指導も平易であり、効果も上がる。少し前の世代では、保育園や幼稚園の頃から、百人一首を正月の遊びの一つにしていた。家族揃って文字札をとることを競っていた。また、母親や祖母からは、桃太郎や金太郎の話を膝に座って聞く時間があった。父親や祖父からも、昔の勇ましい話を聞くことがあった。その世代の人たちは、高校や大学の古典の勉強が、幼い時代と重なり合って、楽しみの一つになっていた。先生の朗々とした音読にしびれ、古典の解説に目を輝かせたものである。幼年期、少年期の体験が大きく響いていたからである。
小学生に古典を指導する意味は、古典の面白さを知りたいと思ったときに力を発揮させるようにするためのものである。つまり、今、効果を期待するというよりも、学びを支える基盤づくりなのである。だから、古典学習は面白いと思ってほしいし、もっと学びたいという気持ちを持ってほしいと強く願っている。このような考えの背景には、京都女子大学附属小学校の古典学習がある。
京都女子大学附属小学校の国語科授業は「今週の音読」から始まる。「今週の音読」は、毎週月曜日に行う全校音読集会の発表を目的にした活動である。(音読集会を始めてから6年を超える。)音読集会を始めた頃は、市販の音読詩集から発達段階に配慮して選んだり有名な古典の一部から選んでいた。
ところが、言葉の響きの快さから子どもたちの関心が古典に向いたので、低学年とか高学年という枠を超えて古典を選ぶことが多くなった。学校としては、古典の音読を中心にしているが、子どものエネルギーは音読を超えて、色々な古典を学びたいという方向に向かう。その意欲に応えて、新しい教材を見つけ、授業を展開する。古典学習の基盤に音読の積み上げがあるので学習活動は密度も濃いものになる。その実践事例を集約したのが本書である。
本書は、「対話で学び合う」ことを軸にして授業をどのように展開をすると効果があるかということに焦点を定めてまとめた。「対話」を通してということにポイントを置いて実践したものである。十分に熟したものではないが、日下知美さん呼びかけのもと、「京女式」古典学習として古典指導の実際を著したものである。
本書の発行には、明治図書の林知里さんにお世話になりました。心からお礼申し上げます。ありがとうございました。
平成23年11月 京都女子大学附属小学校長 /吉永 幸司
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- 明治図書