- 序章 「活用型スキル」は「生きる力」をはぐくむ言語行動力である /瀬川 榮志
- ――日本人形成の教育理念に基づく「活用型国語力」の習得法――
- はじめに /福田 信一
- T 「話すスキル」の習得
- 一 活用型「話すスキル」の学習
- 二 活用型「話すスキル」ステップワークの教育的効果
- U 活用型「話すスキル」の精選と指導の系統化
- 一 活用型「話すスキル」の精選構造化の観点
- 二 活用型「話すスキル」の低学年の系統表
- V 活用型「話すスキル」ステップワークの活用法
- 一 ステップワークの構造
- 二 ステップワークの効果的な活用法
- W 第一学年の活用型「話すスキル」ステップワークの展開
- 一 第一学年の活用型ステップワーク学習のために
- 二 豊かな感性をはぐくむ「必要な事柄スキル」の学習
- 1 【紹介・スピーチ】みんなに しらせたい 本
- 2 【発表・インタビュー】わたしの すきな あそび
- 3 【報告・説明】こまった ときでも あわてないで はなそう
- 三 考える力を育てる「順序スキル」の学習
- 1 【紹介・スピーチ】きいてほしいな ぼくの はなし
- 2 【発表・インタビュー】きゅうしょくを たべるまで
- 3 【報告・説明】そうじの しかたを つたえよう
- X 第二学年の活用型「話すスキル」ステップワークの展開
- 一 第二学年の活用型ステップワーク学習のために
- 二 豊かな感性をはぐくむ「必要な事柄スキル」の学習
- 1 【紹介・スピーチ】聞いてほしいな、自分の こと
- 2 【発表・インタビュー】聞いてみよう! 話してみよう!
- 3 【報告・説明】あったら いいな こんな もの
- 三 考える力を育てる「順序スキル」の学習
- 1 【紹介・スピーチ】たのしい ことを、おしえてあげる
- 2 【発表・インタビュー】花うえ名人に たずねよう
- 3 【報告・説明】みんなで あそぼう
- おわりに /福田 信一
はじめに
/福田 信一
「話すこと」の能力を磨くことは、人間と人間とのかかわりの中で、互いの立場や考えを尊重しながら、言語を通して適切に表現したり正確に理解したりする「伝え合う力」を獲得することであり、国語学力の向上を図るうえで重要な技能・能力である。「話すこと」の能力を身につけることは、身のまわりの出来事を自分ごととして実感しにくくなった現代社会において、豊かな人間関係を築いていくための基盤となる能力である。
しかし、学校での指導方法が曖昧だったり、子どもたちに学習方法が明確に示されなかったりしたことなどから、社会人になっても「話すこと」の力がついていないとの指摘がある。さらに、「話すこと」は評価方法にも難しい点が多くあり、観点や評価基準が必ずしも明確ではなかった。「大事なことを落とさないように中心をはっきりさせて話しなさい」と言われても、何が大事なのかが分からず、学ぶことの意義を実感しにくいままになっていたというのが現実だったのかもしれない。また、国語科の学習指導を振り返ってみると、「読むこと」「書くこと」などの文字言語の指導が中心になっていた側面が強いことに気付く。教科書自体も文字言語で編集されており、音声言語を扱うには難しい点が多かった。
文字言語に指導の系統があるように音声言語の指導においても、発声、姿勢や口形、声の大きさや速さ、抑揚や強弱、間などの基礎的技能を系統的に指導することが大切である。また、基本的能力の系統としての「順序」→「筋道」→「意図」、言語活動の系統「説明」・「報告」→「感想」・「意見」→「提案」・「討論」等をふまえることも重要である。
そこで、これからの「話すこと」についての指導は、子どもの発達段階を考慮して「話すことの能力を高めるための基礎・基本」の系統化を図り、「わかる・かわる・できる」のステップ学習で主体的に話すことの能力を獲得できる教材を開発したり、子どもがその大切さを感じる場や生きて働く場を意図的に設定するなどの方策を考えなければならない。たとえば、「スピーチ」を例に考えても、スピーチをするには、話題・主題に対する興味や関心に基づき、順序・要点・要約・段落・中心・心情・想像力という技能・能力を働かせることが必要になる。しかも、この活動は目的的な言語行動で一貫することが求められる。活用型スキルステップワークは、このような考え方を基にした、実用型国語力を習得する行動学習法である。
本書では、このような「行動学習法」を具体化していく方法として、「活用型ステップワーク」を開発し、学年ごとに紹介している。この学習方法は、易しい学習から難しい学習へと階段をのぼっていくようなステップを設定してあり、学習がステップアップしていくことによって、子どもたちは「伝え合う力」が向上していくことを意識し、成就感や達成感を味わえる仕組みになっている。子どもたちが自ら意欲的に自信をもって分かる喜びを味わいながら「話すこと」の能力を高めていくことをめざしている。話すスキルを獲得し、二十一世紀をしく生きる子どもを育てる一助となれば幸いである。
-
- 明治図書