活用型「漢詩暗唱スキル」ステップワーク 低学年

活用型「漢詩暗唱スキル」ステップワーク 低学年

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漢詩を自ら暗唱・活用し始める子を育てる実践的ワーク集。

本書全3巻は小学校児童の漢詩指導のあり方に焦点化した漢詩暗唱スキルワーク集。児童が漢詩に出会い、漢詩の読みを知り、漢詩に書かれている作者の人間観、社会観、自然観などにふれ、共鳴、共感しながら楽しく暗唱活動を行う具体的な活用型学力育成の実践提案。


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ISBN:
978-4-18-083812-7
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小学校
仕様:
B5判 152頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

序章 「活用型スキル」は「生きる力」を育む言語行動力である
―日本人形成の教育理念に基づく「活用型国語力」の習得法― 中京女子大学名誉教授 /瀬川 榮志
はじめに 統括責任者 /金久 愼一
T 古典教育の変遷と漢詩
一 古典教材の読みを楽しむ
1 漢詩に興味を示す児童たち
2 古人の思いにふれる漢詩ブーム
二 古典教育の変遷
1 古典に対する学習指導要領の変遷
2 音読と暗唱重視の古典指導
三 時代を超えて生き続けている漢詩
1 漢詩を読むことの価値
2 漢詩指導の系統
U 活用型国語学力を育成する漢詩指導
一 古典教材「漢詩」授業の増大
1 日本の古典としての漢文
2 漢詩集作成の意義
3 漢詩の刺激付けと児童の反応
二 新しい視点に立つ漢詩の授業
1 活用型学力の育成
2 「習得」と「活用」の視点に立った国語科教育の体系
V 活用型「漢詩暗唱スキル」授業の構想
一 漢詩スキル指導で大切にしたい力
1 スキル指導の精選・統合・構造化の必要性
2 漢詩暗唱スキルの授業構想
W 活用型「漢詩暗唱スキル」ステップワークの展開
一 低学年の学習指導のねらい
1 低学年児童の姿
2 低学年の漢詩暗唱のねらい
【ことばのひびきやリズムを体で楽しむ例】
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもう@】〈白鷺鸞〉
★ 漢詩の読み聞かせを聞こう
★ 読み聞かせを聞いて、感じたことをはっぴょうしよう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうA】〈絶句〉
★ 声に出して、漢詩を読もう
★ 声に出して、読んだときの気もちをはっぴょうしよう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうB】〈胡隠君を尋ぬ〉
★ 声に出して、漢詩を読もう
★ 声に出して、読んだときの気もちをつたえ合おう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうC】〈春暁〉
★ 漢詩を読んで、気に入ったところを見つけよう
★ じぶんの気に入ったところを はっぴょうしよう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうD】〈江雪〉
★ 漢詩を読んで、気に入ったところを見つけよう
★ じぶんの気に入ったところを 友だちにつたえよう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうE】〈鹿柴〉
★ 二人組になって、漢詩の音読を楽しもう
★ 二人でれんしゅうして、楽しかったことをつたえ合おう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうF】〈秋風引〉
★ 二人組になって、漢詩の暗しょうに ちょうせんしよう
★ 二人でれんしゅうして、楽しかったことをつたえ合おう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうG】〈春早〉
★ 漢詩の中から、春を見つけよう
★ 漢詩の世界で 春を楽しもう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうH】〈夏日山中〉
★ 漢詩の中から、夏を見つけよう
★ 漢詩の世界で 夏を楽しもう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうI】〈秋夜丘二十二員外に寄す〉
★ 漢詩の中から、秋を見つけよう
★ 漢詩の世界で 秋を楽しもう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうJ】〈夜雪〉
★ 漢詩の中から、冬を見つけよう
★ 漢詩の世界で 冬を楽しもう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうK】〈四時の歌〉
★ 漢詩の世界で 四季を楽しもう @
★ 漢詩の世界で 四季を楽しもう A
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうL】〈農を憫れむ〉
★ 作中人物の気もちを 想像しよう
★ 作者の気もちを 想像しよう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうM】〈齊安の壁に題す〉
★ 漢詩を暗唱して、漢詩で遊ぼう
【ことばのひびきやリズムを体で楽しもうN】〈江南の春〉
★ 漢詩の世界を絵にあらわそう
★ 自分のかいた絵のせつめいをしよう
X その他、低学年児童に読ませたい漢詩
人日立春/ 山中雑詩/ 村夜/ 辛夷塢/ 楽遊原/ 汪倫に贈る/ 霊Kを送る/ 西林の壁に題す/ 夏夜/ 鸛鵲楼に登る/ 独り敬亭山に座す/ 秋思/ 君子行/ 秋浦の歌(其の十五)/ 初夏/ 辺詞/ 偶成/ 十五夜 月を望む/ 山間秋夜
おわりに /金久 愼一

はじめに

 古典教育に関わる「伝統的な言語文化教育」は、今回の学習指導要領の改訂で新しく設けられた事項である。小学校では、低学年で「昔話や神話、伝承」、中学年では「短歌、俳句」、高学年では「古文、漢文、近代以降の文語調の文章」などにふれるように示されている。そして、音読・朗読・暗唱を行うことが指導事項として取り上げられている。

 今回の改訂は平成二十年に中央教育審議会から出された「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」に基づいているのであるが、答申には次のように述べられている。


 ○ 国際社会で活躍する日本人の育成を図る上で、我が国や郷土の伝統や文化を受け止め、そのよさを継承・発展させるための教育を充実することが必要である。世界に貢献するものとして自らの国や郷土の伝統や文化について理解を深め、尊重する態度を身につけてこそ、グローバル化社会の中で、自分とは異なる文化や歴史に敬意を払い、これらに立脚する人々と共存することができる。また、伝統や文化についての深い理解は、他者や社会との関係だけでなく、自己と対話しながら自分を深めていく上でも極めて重要である。

 ○ 国語は、長い歴史の中で形成されてきた我が国の文化の基盤を成すものであり、また、文化そのものである。国語の一つ一つの言葉には、我々の先人の情感や感動が集積されており、伝統的な文化を理解・継承し、新しい文化を創造、発展させるためには、国語は欠くことのできないものである。(中略)国語科では、小学校の低・中学年から、古典などの暗唱により、言葉の美しさやリズムを体感させた上で、我が国において長く親しまれている和歌・物語・俳諧、漢詩・漢文などの古典や物語、詩、伝記、民話などの近代以降の作品に触れ、理解を深めることが重要である。


 つまり、今後、世界にはばたく人間として必要となる資質は、「我が国や郷土の伝統や文化を受け止め、そのよさを継承・発展させること」「自分とは異なる文化や歴史に敬意を払い、共存できること」「他者や社会との関係だけでなく、自己と対話しながら自分を深めていくこと」であり、そのために、「自らの国や郷土の伝統や文化について理解を深め、尊重する態度を身につけること」であると述べられている。また、伝統的な言語文化教育の意義のほか、その学習方法も「古典などの暗唱」と具体的に示されており、学習すべき対象も「和歌・物語・俳諧、漢詩・漢文などの古典」と記されている。

 注視すべきことは、小学校の低・中学年から古典などの暗唱により、言葉の美しさやリズムを体感させることの教育的意義を明示していることである。

 この考えを基盤とした新学習指導要領の改訂を受けて、現在、全国各地の小・中学校や地方自治体などにより、独自の「暗唱詩集」が作成され、児童生徒に暗唱活動を促すようになってきた。中には、毎朝、十分間を利用して「朝の暗唱タイム」などと称して意欲的に活動を推進している学校もある。「教室から声が聞かれなくなったことは悲しいことである」と、ある教育者が音読・朗読の減少したことを嘆いておられた。しかし、今後、児童が古典にふれ、全国各地の学校から音読・朗読・暗唱活動が行われるようになることは喜ばしいことである。おそらく、古典を口ずさみ、古典について語り合う児童が増えてくることであろう。しかし、指導者の中には、「意味もわからないままに繰り返し読ませることは効率の悪い学習方法である」という根強い考えがある。また、実践者から「全く意味がわからないのでおもしろくない。意味を教えてください」という児童生徒からの要望が強い、などという声も出され、今後、具体的な指導方法のあり方を求める声が強くなってくるのは事実である。


 本書全三巻は小学校児童の漢詩指導のあり方に焦点化した漢詩暗唱スキルワーク集である。児童が漢詩に出会い、漢詩の読みを知り、漢詩に書かれている作者の人間観、社会観、自然観などにふれ、共鳴・共感しながら暗唱活動を行うことの必要性とその活用型学力の育成指導プロセスを児童の心の流れに沿ったワークシートと連動させながら具体的に書いている実践の書である。

 本書全三巻は次のような内容構成としている。

 第一巻 活用型「漢詩暗唱スキル」ステップワークの開発(低学年)〜言葉の響きやリズムを身体で楽しむ

 第二巻 活用型「漢詩暗唱スキル」ステップワークの開発(中学年)〜言葉の響きやリズムの楽しさを味わう

 第三巻 活用型「漢詩暗唱スキル」ステップワークの開発(高学年)〜言葉の響きやリズムの美しさを味わう

 それぞれの巻において、低学年・中学年・高学年の児童の発達段階を想定し、親しんでほしいという願いをこめながら漢詩を選定した。そして、さらには、どのようなワークにすれば、児童の漢詩暗唱スキルが身に付くのかを模索しながら具体的実践を積んできた。そうした模索の実践を数例紹介している。今後、どのような漢詩を選定し、どのような授業を実践したらよいのかと悩まれている全国の指導者の参考にしていただければ幸いである。


   全三巻統括責任者 西九州大学 子ども学部 /金久 愼一

著者紹介

瀬川 榮志(せがわ えいし)著書を検索»

中京女子大学名誉教授 全国小学校国語教育研究会名誉顧問

東京創造国語研究会名誉会長 全国創造国語研究会名誉会長 全国国語科教育研究所長

21世紀の国語教育を創る会代表 全日本言語教育学会名誉会長 全日本国語教育立国推進本部顧問

東洋大学国文学科卒業。鹿児島県・埼玉県・東京都の公立学校教諭。青梅市教育委員会〜東京都教育委員会指導主事として12年。墨田区〜中野区の校長として10年勤務。その間,文部省教育課程教科等特別委員・教育課程調査研究協力者並びに副委員長,学習指導要領並びに指導書作成委員,NHK学校放送教育番組企画委員等を歴任。公立学校定年退職後,中京女子大学教授として17年間勤務。

金久 愼一(かねひさ しんいち)著書を検索»

現在 全国日本語教育学会理事 西九州大学子ども学部准教授

1948年大分県に生まれる。福岡教育大学教育学部卒業。昭和47年より北九州市の公立小学校に勤務する。昭和53年より9年間,福岡教育大学附属小倉小学校に勤務し,昭和62年より北九州市立小学校に再勤務。北九州市立小学校長として13年間勤務し,平成21年3月北九州市立小学校退職。

現在に至る。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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