- はじめに
- 1章 生徒指導提要とエンカウンター
- 1 『生徒指導提要』とは
- 2 『生徒指導提要』の特徴と留意点
- 3 ガイダンス機能と生徒指導
- 4 生徒指導と教育相談
- 5 生徒指導提要とエンカウンター
- 2章 対応・中学年のエンカウンター・エクササイズ12か月
- §1 1学期の生徒指導とエンカウンター
- 1 道徳で役立つエクササイズと展開
- 4月の効果的実践プラン◆世界のあいさつ
- 5月の効果的実践プラン◆チェック,チェック,チェック!
- 6月の効果的実践プラン◆心のチャンネル
- 7月の効果的実践プラン◆笑顔をありがとう
- 2 総合的な学習で役立つエクササイズと展開
- 4月の効果的実践プラン◆無言ゲーム
- 5月の効果的実践プラン◆ブレーンストーミング
- 6月の効果的実践プラン◆イメージマップづくり
- 7月の効果的実践プラン◆インタビュー名人になろう!!
- 3 学級活動で役立つエクササイズと展開
- 4月の効果的実践プラン◆これが今のぼく・わたし 他己紹介をしよう
- 5月の効果的実践プラン◆たくさんの仲間とふれ合おう あいさつゲームをしよう
- 6月の効果的実践プラン◆グループで競い合おう 新聞ゲームをしよう
- 7月の効果的実践プラン◆クラスのいいところベスト5を決めよう
- 4 朝の会・帰りの会で役立つエクササイズと展開
- 4月の効果的実践プラン◆朝と帰りはこれで決まり!! あいさつでコミュニケーション
- 5月の効果的実践プラン◆みんなで協力〜学び合い的SGE〜
- 6月の効果的実践プラン◆コミュニケーション量アップ〜楽しくできるSGE〜
- 7月の効果的実践プラン◆星に願いを 私バージョン
- §2 2学期の生徒指導とエンカウンター
- 1 道徳で役立つエクササイズと展開
- 9月の効果的実践プラン◆ブラインドデート
- 10月の効果的実践プラン◆ミスターXからの手紙
- 11月の効果的実践プラン◆わたしの感情グラフ
- 12月の効果的実践プラン◆二分の一成人式をしよう〜自分のいいところ探し〜
- 2 総合的な学習で役立つエクササイズと展開
- 9月の効果的実践プラン◆ランキング〜自分のしたいことベスト5
- 10月の効果的実践プラン◆私の町のステキなところ〜ブレーンストーミング〜
- 11月の効果的実践プラン◆みんなでインタビュー
- 12月の効果的実践プラン◆わたしのために あなたのために
- 3 学級活動で役立つエクササイズと展開
- 9月の効果的実践プラン◆いのちのつながり
- 10月の効果的実践プラン◆わたしのいいところ
- 11月の効果的実践プラン◆10年後のわたし
- 12月の効果的実践プラン◆なんでもかなえてくれるサンタクロース
- 4 朝の会・帰りの会で役立つエクササイズと展開
- 9月の効果的実践プラン◆みんなでつないで!
- 10月の効果的実践プラン◆ズバリ当てます!! 未来ウォッチャー
- 11月の効果的実践プラン◆すきなのはどっち?
- 12月の効果的実践プラン◆「1,2,3,……10!!」
- §3 3学期の生徒指導とエンカウンター
- 1 道徳で役立つエクササイズと展開
- 1月の効果的実践プラン◆友だちだったら言えるはず!
- 2月の効果的実践プラン◆わたしはなかなかのものだ
- 3月の効果的実践プラン◆大好きな友だち,ありがとう!
- 2 総合的な学習で役立つエクササイズと展開
- 1月の効果的実践プラン◆かるた大会をしよう
- 2月の効果的実践プラン◆ありがとうを伝えよう
- 3月の効果的実践プラン◆みんながスター
- 3 学級活動で役立つエクササイズと展開
- 1月の効果的実践プラン◆心のストップボタン〜上手に“怒り”と付き合おう〜
- 2月の効果的実践プラン◆『グリーンカード』
- 3月の効果的実践プラン◆『大切な名前』
- 4 朝の会・帰りの会で役立つエクササイズと展開
- 1月の効果的実践プラン◆「はい,元気です」
- 2月の効果的実践プラン◆「ラッシュアワー」
- 3月の効果的実践プラン◆「お手紙ノート」
はじめに
1 生徒指導とエンカウンター
従来の生徒指導(生活指導)は,何か課題や問題が発生してから対応・対処する「なおす」生徒指導が主流であった。特に,校内暴力や対教師暴力,…のように,目に見える被害や実害を受けるケースが多かった頃には,ちょっと強面の“体育会系教師”が求められ,しっかり生徒を指導出来るのが教師として求められた時代もあった。
その後,いじめや不登校,児童虐待や引きこもりなどの心理的な面での問題行動が時代時代に話題になり,対症療法的に指導するのではなく,予防や開発を意識した「育てる」生徒指導の有効性が提案され,全国の教育センターや教育研究所などで,盛んに研究され,研修も行われてきた。その時に教育相談の技法の1つとして提案されたのがエンカウンターであったと記憶している。当時は「ガイダンスの機能」としても紹介され,一時期は,これからの生徒指導として注目されたこともあった。
時間がかかりはしたが,『生徒指導提要』が出された最近では“ガイダンスカウンセリング”として再度提案され,注目されてきている。今後,実践事例や報告書等も増えてくるものと思う。私は歓迎したい。
2 日本の教育史では…
元々日本の教育の中には,“指導”という名の下に「教える」生徒指導が根付いており,「なおす」意識が中心になって,教育的な効果をあげてきた。それらは,治療的・対症療法的な生徒指導として大切にされてきた。昔の日本の風土にマッチしていたからだと思う。
一方では,教育相談の分野で“ガイダンス機能”として取り上げられた予防・開発的な生徒指導と対比されることが多く,論議されることが多かった。正直,私自身は,問題が表面化してからの治療的・対症療法的な問題対応・対処で,何度か苦しい場面を経験してきていたので,問題が発生しないように,予防・開発的な視点で生徒指導をすることに賛成し,学級指導(現在の学級活動・内容(2))の授業として提案し,推進してきた。
しかし,私自身が,教育委員会や大学等で,何度か生徒指導資料の作成のお手伝いをさせていただいたことがあるが,その年代に応じて課題が様変わりしていることに気づく。
おおざっぱに説明すると,30年近く前は,校内暴力(児童生徒間同士・対教師間等)や器物破損などの“非行や反社会的な問題行動”が,20年前はいじめや不登校,などの心理的な面での課題(比較的個別的な課題)である“非社会的な問題行動”が,10年前頃からはインターネットや,携帯電話等のメディアに関する,パーソナルでもあり,ソーシャルでもある混合型の問題行動(潜在化しやすい課題)が起きてきている。これら多種多様な問題行動全てに活用できるようなオールマイティに使えるものは見あたらないが,適切に対処・対応するためには,治療的・対症療法的生徒指導と,予防・開発的な生徒指導とに峻別してとらえるのではなく,ケースに応じて柔軟に取り組むことが有効であると思う。
今回の『生徒指導提要』は,そのことを踏まえて論議したのではないかと思えるほど,児童生徒の多岐にわたる課題に対応できるように編集されていると私は思う。
3 発達や成長を意識して…
「育てる」生徒指導を意識すると,児童生徒の発達を意識して取り組むことが必要になり,小学校では学級活動のそれぞれの学年部のねらいが参考に出来る。
〔第1学年及び第2学年〕
学級を単位として,仲良く助け合い学級生活を楽しくするとともに,日常の生活や学習に進んで取り組もうとする態度の育成に資する活動を行うこと。
〔第3学年及び第4学年〕
学級を単位として,協力し合って楽しい学級生活をつくるとともに,日常の生活や学習に意欲的に取り組もうとする態度の育成に資する活動を行うこと。
〔第5学年及び第6学年〕
学級を単位として,信頼し支え合って楽しく豊かな学級や学校の生活をつくるとともに,日常の生活や学習に自主的に取り組もうとする態度の向上に資する活動を行うこと。
ぜひ発達課題を意識して取り組んで欲しいと思う。
4 「まえがき」で…
『生徒指導提要』の「まえがき」では,生徒指導を進める上での基本書物として,児童生徒にかかわる全教職員,教育委員会を始め多くの関係者などに読まれ,具体的な指導や研修に活用されることで生徒指導の一層の充実が進められることへの期待が述べられている。
昨今の学校教育に対しては,すべての子どもの健全育成と同時に,いじめ,暴力行為等への指導や対応など個別の問題への効果的な対応も求められている。われわれ教育に携わる者の指導改善に役立てられ,指導の充実が図られることが期待されているのである。
エンカウンターは,エクササイズを実施し,その後にシェアすることで,ほんねとほんねのふれあい(交流)により,児童同士の分け隔てのない人間関係を通して,自らと対峙することに価値がある。自分が気づいたこと,感じたこと,考えたこと,等をお互いに開示し合うことで,心温まる関係を醸成出来るよう,「育てる」生徒指導にカウンセリングを生かす姿勢を大切にしていただきたいと思う。
平成23年5月 編者 /八巻 寛治
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