- まえがき
- T章 生徒指導への取り組みの構えと重点
- 1 本質を見失わない
- 2 生徒理解に始まり,生徒理解に終わる
- 3 孤軍奮闘を慎み,全教職員の協働で進める
- U章 生徒指導への取り組みの基礎・基本
- §1 教科の授業でどう取り組むか
- §2 道徳の時間でどう取り組むか
- §3 総合的な学習の時間でどう取り組むか
- §4 学級活動でどう行うか
- §5 学校行事でどう行うか
- §6 学校運営,学年経営でどう行うか
- §7 学級経営でどう行うか
- V章 生徒指導への取り組み〜こんなときどうする
- §1 授業態度や学習態度の問題
- 1 教材や宿題を忘れる生徒が増えた
- 2 授業中,勝手な発言や私語が多い
- 3 授業中,学習活動に無気力な生徒が多い
- 4 学習遅進や学習不適応の生徒がいる
- §2 学校や学級の生活問題
- 1 遅刻する生徒や服装が乱れている生徒が増えた
- 2 携帯電話を持参する生徒がいる
- 3 給食当番や掃除当番をきちんとしない生徒が多い
- 4 学級内に対立しているグループがある
- 5 上級生とトラブルを起こしている生徒がいる
- §3 暴力行為などの問題
- 1 校内で1対1の殴り合いの喧嘩があった
- 2 日頃から言動が粗暴な生徒がいる
- 3 教師に対して暴言や威圧的な言動をとる生徒がいる
- 4 教師に暴力を振るった生徒がいる
- §4 いじめ,自殺,不登校の問題
- 1 学校生活に馴染めずに孤立している生徒がいる
- 2 級友を遊び半分でからかったり,ばかにしたりする生徒がいる
- 3 級友に恨みや憎しみをもって接する生徒がいる
- 4 いじめられているのでないかと疑わしい生徒がいる
- 5 自傷行為をする生徒がいる
- 6 自殺について異常な関心を示している生徒がいる
- 7 不登校になり始めた生徒がいる
- 8 長期間,不登校の状態が続いている生徒がいる
- §5 校外生活の問題
- 1 メールやブログ,プロフでトラブルを起こしている生徒がいる
- 2 深夜徘徊など交友関係が乱れている生徒がいる
- 3 窃盗や万引きなどの犯罪行為をした生徒がいる
- 4 虐待を受けているような疑いのある生徒がいる
- §6 健康安全に関する指導
- 1 登下校時の事故と事件の防止
- 2 禁煙,飲酒,薬物乱用防止
- 3 性非行の防止
- W章 生徒指導の仕事〜知っておきたいミニマム
- §1 校内での連携の取り方
- §2 家庭・地域・専門機関との連携の取り方
- §3 生徒理解と教育相談の充実
- §4 個別指導と集団指導のポイント
- §5 生徒指導に関する法規
まえがき
教師の精神疾患による休職者数が,20年近く連続して増加している。10年前の2.4倍,20年前の5倍になる。その出現率は,全国平均は0.6%であるが,都市部では1%前後となっている。精神疾患による休職者数の増加は,精神科を受診する抵抗感が以前よりは少なくなっているという状況もあるが,教師の精神的負担が以前よりも大きくなっているという現実は否定できない。
診断を受け,精神疾患として病気休職に入る教師が5,000人を超えるということは,そこまでには至らないが,大きな精神的負担を抱え,悩み,苦しんでいる教師は数倍の数に昇ることが推測できる。いや,ほとんどの教師が大なり小なりの精神的負担を負いながら教育に当たっているというのが今日の学校の現状であろう。
精神疾患で病気休職をとる者の数が,他の職種と比べて多いかどうかは不明である。また,どの職種にも精神的負担はあるもので,教師に限ったものではない。しかし,生徒と深くかかわる教師という職務の特性から,生徒の教育へ与える影響を考えたとき,これは見過ごすことのできない状況であることに変わりはない。
では,なぜ,これほどまでに教師が大きな精神的負担を負っているのであろうか。様々な要因が重なり合っていることは間違いない。
・ 学校現場に押し寄せる急激で,多種多様な教育制度改革
・ 長時間労働など,特殊な勤務条件
・ 近年の保護者や地域の教師に対する要望の多様化と対応の困難さ
・ 複雑化する生徒指導
これらが,教師に大きな精神的負担を与えていることは間違いない。特筆すべきは,生徒指導の問題である。少年非行の低年齢化,粗暴化,凶悪化は確実に進んでいる。いじめ問題や自殺問題も後を絶たない。学級崩壊といわれる学級が機能しない状況も多く見受けられる。学級経営や生徒指導に関する保護者とのトラブルも多い。
こうした状況の中,文部科学省は小学校段階から高等学校段階までの生徒指導の理論・考え方や実際の指導法等について,時代の変化に即応して網羅的にまとめた基本書として「生徒指導提要」を取りまとめた。
そこで,本書では,生徒指導提要の趣旨と内容に即して,中学校教師が直面する生徒指導上の課題や問題を類型別に実践的に取り上げた。それぞれの課題や問題についてはその具体的事例を示し,その事例における取り組みのポイントを簡潔に示した。
@直ちに取り組んで解決しなければならない対処法,対応策
A問題や課題の発生を予防する取り組み
B問題や課題が発生しない開発的な取り組み
教師は,生徒を乗せて走る三輪車である。学習指導力と生徒指導力という二輪の後輪によって安定し,駆動輪と方向舵である前輪の教師の人間性によって走っていく。学習指導力だけでは安定しない。教師の人間性に問題があれば方向を定められず,進むこともできない。生徒指導力は,経験の積み重ねによってその質も向上する。
本書は,現場でよいモデルを見ることができない先生,経験を積み重ねている中で重圧に押しつぶされそうになっている先生,生徒指導に悩み,苦しみながらも果敢に取り組んでいる先生方の一助になればという願いで編集した。優れた三輪をもった経験豊かな執筆者が,他の先生方のお役に立てればという願いから,経験を踏まえた確実な実践例を示している。
本書の活用に当たっては,問題事例や課題事例を目の前の問題や課題と置き換えていただき,地域・学校・生徒の実態を正確に把握し,仲間の先生方と力を合わせて取り組んでいただきたい。
結びにあたり,本書刊行の趣旨にご理解をいただき,公務多忙な中,貴重な経験を提供いただいた執筆者の先生方,刊行に際してご尽力を賜った明治図書出版株式会社の安藤征宏氏をはじめ,編集部の皆様に心から感謝を申し上げる。
平成23年3月 編者 /桑原 憲一
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- 明治図書