- まえがき
- T 総合的学習における理科の学力
- /高階 玲治
- 一 今,学力の何が問題か
- 二 総合的学習と理科とはどう関連するか
- 三 学力形成としての「学習スキル」の考え方
- 四 総合的学習と教科との関連とその課題
- U 理科でめざす学力とは何か
- ――学力低下,学習意欲低下をどう克服するか /角屋 重樹
- 一 理科の目標
- 二 学年目標
- 三 理科でめざす学力を具体化した学習指導の事例
- 四 学習指導レベルでの理科でめざす学力の抽出
- 五 学力低下,学習意欲をどう克服するか
- V 理科で磨く課題探究能力と総合的学習
- /森 一夫
- 一 理科で,なぜ問題解決型学習が重視されるのか
- 二 どのような問題解決的手法があるか
- 三 理科で磨く課題探究能力を総合的学習にどう生かすか
- W 理科で磨く実験,観察,栽培,飼育及びものづくりなどの学びと総合的学習
- /深海 龍夫
- 一 実験での手法を生かした総合的学習
- 二 生き物を通して地域に親しむ総合的学習
- 三 ものづくりを生かした総合的学習
- 四 熱帯植物館を活用した総合的学習
- 五 インターネットを利用した総合的学習
- X 理科で磨く情報活用能力と総合的学習
- /遠西 昭寿
- 一 情報とは何か
- 二 情報収集能力を身につける
- 三 情報リソースとその特徴
- 四 情報収集と施設や設備の利用
- 五 研究成果のまとめと発信
- Y 理科で磨く成果発表力と総合的学習
- /田中 康善
- 一 課題研究の成果を目的に応じて適切にまとめる
- 二 調べた結果を表現したり,日常の自然事象の理解に生かしたりする
- 三 論文やレポートの書き方ができるようになる
- 四 学習感想のすすめ
- Z 理科から発展する総合的学習の実践 1
- ――総合的学習の課題に関連した理科教材から発展する総合的学習
- A 理科教材から総合的学習の課題づくりに発展させた実践事例
- 1 長良川を舞台に繰り広げる理科学習から総合的学習へのアプローチ――「流れる水のはたらき」の学習から環境学習へ /古田 靖志
- 一 長良川で環境を学ぶ総合的学習の構想
- 二 理科教材から総合的学習への発展
- 三 「流れる水のはたらき」の学習の構想
- 四 理科「流れる水のはたらき」の指導計画
- 五 指導の実際
- 六 総合的学習ユニット「長良川の環境」の構成
- 2 生徒が自ら学ぶ環境学習――理科を中心としたクロスカリキュラム /丸野 憲昭
- 一 環境学習のねらいとポイント
- 二 環境学習カリキュラム
- 三 学習内容とその実践
- 四 成果と課題
- B 理科教材と総合的学習をクロスさせた実践事例
- 1 岩手の環境から学ぼう――サケ・水・人・ふれあい 6年「人とかんきょう」を発展させて /楳内 典明
- 一 理科と総合的学習のかかわり
- 二 第6学年理科「人とかんきょう」を発展させた実践から
- 三 実践を振り返って
- 2 身の回りから学習対象を選ぶ 4年「生活の中の電気」 /山下 浩徳
- 一 本単元の考え方
- 二 総合的学習を進める上でのポイントと本単元の指導
- 三 単元目標
- 四 単元計画 (約17時間)
- 五 指導の実際
- 六 総合的学習と理科学習
- 3 フィールドに出ることで学際的な総合的学習につなげる /内山 裕之
- 一 ビデオトープづくり
- 二 イボニシ貝の解剖
- 三 ツバメの観察
- [ 理科から発展する総合的学習の実践 2
- ――総合的学習のプロセスに生きる理科で培った力の発揮(総合的学習の基盤としての理科の学力)
- A 課題追究段階を中心にした実践事例
- ――どのように支援したか
- 1 課題追究を支える「学習力」の育成 /中谷内 政之
- 一 「しごと」「けいこ」「なかよし」による教育
- 二 「しごと」学習での取り組み(5年生2学期現在)
- 三 理科学習で培われる学習力(5年生現在)
- 四 総合的学習を推進する力と理科の役割
- 2 自己課題の設定と追究の場面 /大平 和哉
- 一 自己課題の設定場面をどのように支援したか
- 二 課題追究の活動場面をどのように支援したか
- 3 局面を限定して授業を組み立てる 永島 稔明
- 一 局面を限定して授業を組み立てる
- 二 生徒は地域の環境をどうとらえているか
- 三 地域の環境を調べる
- 四 実践を振り返って
- B 成果発表段階を中心にした実践事例
- ――どのように支援したか
- 1 成果発表をどう支援するか /迫田 一弘
- 一 理科「人とかんきょう」から発展させ総合的学習に
- 二 単元の目標と指導計画の作成
- 三 授業のあらまし
- 四 どのように成果発表段階を仕組んだのか
- 五 学習を終えての成果と課題
- 六 支援は指導あってのもの
- 2 理科学習と関連させて生かす「発表」の方法 /山本 智一
- 一 はじめに――「発表」の場での理科と総合的学習との関連
- 二 「発表」を支援する具体的な場面
- 三 おわりに――「発表」の意義
- 3 学びの文脈を重視した成果発表とその支援 /益田 裕充
- 一 成果とその過程
- 二 教師の支援
- 三 学校の枠組みを超えて
- 四 共同学習を呼びかける
- 五 インターネット掲示板の活用
- 六 文脈を重視するチャット
- 七 おわりに
- \ 総合的学習に発展や関連できる理科教材例
- /岡田 篤
- 一 単元拡張型による教材例一覧
- 二 キーワードスタート型による教材例一覧
まえがき
総合的な学習の時間(以下,総合的学習という)は,各学校で本格的な実施がはじまった。
一般的に言えば,最近は,総合的学習をどう実施すればよいか,という実践スタイルの問題はおおよそ終わり,第2次ステージに入りつつある。これから問題になるのは,総合的学習でどのような「力」を身につけるか,ということである。
一方,最近わが国において社会的な問題とされはじめているのは新学習指導要領が内容を3割も削減したことから,「学力低下」が広範に起きるのではないかという危惧の声である。各教科の学力をどう保持し,高めるかが重要な課題になってきた。
ところが総合的学習は各教科等の授業時数を減らしてまでして創設されたものである。したがって総合的学習でどのような学力を育てるかが重要な課題になる。各教科の学力保障は可能なのかという厳しい声がみられる。
しかし,これまでの教科教育の反省として,その教科の授業時間内で知識や理解を得させようとする傾向が強かったということがある。そのような考えに立つと,学んで得た知識や能力を生活や「生きる力」として生かすことが難しいだけでなく,授業時間削減による学力低下に歯止めを掛けられないでしまう恐れがある。
それに対して,たとえば理科で学んだ「課題探究能力」を他の学習活動,とくに総合的学習の各場面で活用できれば,子どもは教科で獲得した基礎や基本を応用したり,発展させたりする。また,まだ学んでいない教科内容であっても,やりたい課題であればチャレンジし学びとろうとする。教科の基礎・基本は後から学ぶこともある。つまり各教科で学び,身につけた知識や能力が総合的学習で生かされる場面がたくさん生まれるのである。
各教科の基礎・基本が,総合的学習の基盤になっていると言える。
そこで本シリーズが描く学びの世界は,総合的学習と各教科―国語科,社会科,算数・数学科,理科―の両者の関連の中で,互いに有効な教育作用を見いだすことである。
そこに新しい学びの発見があると考えて本シリーズを構想した。
とくに本書は「理科から発展する総合的学習の学力」として,理科と総合的学習の関連の中で学力の育成を考えるものである。これまでとかく各教科と総合的学習は別物とする認識がみられたが,本書は互いの関連を明確化することによって子どもの学力形成を一層豊かなものにしたいと考えたのである。
そこで本書の構成を次のようにした。
第T章は「総合的学習における理科の学力」として,学力形成を中心として総合的学習と理科の関連を明確にし,学習活動で働く力を「学習スキル」の形成として捉えている。新たな学力の考え方であり,総合的学習と理科との内的関連を明確化させようとしたものである。
第U章は「理科でめざす学力とは何か」として,理科の基礎・基本や全体構造を明らかにして本書のベースになる基本的な考え方を示した。また,最近言われている学力低下,学習意欲低下の問題をどう克服するかについても示唆のある提言を行っている。
第V章は「理科で磨く課題探究能力と総合的学習」として,これまでも理科で行ってきた問題解決型学習をさらに重視し,総合的学習に生かす手法を具体的に提示している。その視点はきわめて興味深い。
第W章は「理科で磨く実験,観察,栽培,飼育及びものづくりなどの学びと総合的学習」であるが,表題に示されているように極めて具体的に理科の学習が提示され,育成すべき能力が示されている。
第X章は「理科で磨く情報活用能力と総合的学習」として,課題探究活動における情報収集・活用などの働きを研究成果の発信までも含めて提示していて参考になる。
第Y章は「理科で磨く成果発表力と総合的学習」として,発表力の育成を中心に,目的に応じたまとめ方、論文やレポートの書き方など具体的に提示している。
第Z・[章は具体的な実践事例である。
・理科教材から総合的学習の課題づくりに発展させた実践事例
・理科教材と総合的学習をクロスさせた実践事例
・課題追究段階を中心にした実践事例
・成果発表段階を中心にした実践事例,などである。
第\章は「総合的学習に発展や関連できる理科教材例」である。理科が総合的学習にどう生かされるか,そのような教材をどう考えるべきか,など具体的な参考例をたくさん示している。
このように本書は「理科から発展する総合的学習の学力」として,その基本になる考え方,実践のあり方など幅広く追究している。本書によってさらに豊かな実践に発展されることを期待したい。
最後に本書に執筆いただいた各位,明治図書の江部満氏に心から厚くお礼申しあげたい。
平成13年6月 ベネッセ教育研究所顧問 /高階 玲治
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- 明治図書