- まえがき /小林 幸雄
- 第1章 ボランティアの授業に取り組むポイント
- 1 大堀提案と石黒提案に学ぶカリキュラム研究のポイント /小林 幸雄
- 2 三つのキーワードを縦軸にボランティア学習を組む /小林 幸雄
- 3 少子高齢社会の基礎的な理解をはかる授業例 /小林 幸雄
- 4 ボランティア学習においても「学習課題」作りを! /小林 幸雄
- 5 優れもの教材を活用する教師の「腕」と教材開発の「心意気」 /小林 幸雄
- 第2章 すぐに使える授業実践例
- ★“点字”の学習
- 6 向山氏に学ぶ「指書き・空書き」を入れた点字の学習 /小林 幸雄
- 7 子どもが楽しんで取り組む学習点字ペンの授業(6年生) /白石 周二
- 8 点字について学ぼう(5年生) /江見 和彦
- ★“手話”の学習
- 9 歌って楽しい手話歌の授業 /大野木 一雄
- 10 クイズとエピソードで楽しく学習,手話の授業 /大野木 一雄
- 11 「電話お願い手帳」の授業 /大野木 一雄
- ★“アイマスク体験”の学習
- 12 社会科見学からボランティア授業へ(中・高学年) /甲本 卓司
- ★“車いす体験”の学習
- 13 社会福祉協議会と連携した「車いす体験教室」(6年生) /甲本 卓司
- ★“盲導犬”の学習
- 14 盲導犬の授業 /尾崎 文雄
- ★“交流”の学習
- 15 国際ボランティアの授業(6年生) /甲本 卓司
- 16 老人ホームとの交流 /尾崎 文雄
- ★“ボランティアに関する自由研究”のテーマ例
- 17 ボランティアに取り組む夏休み自由研究・テーマ6例 /小林 幸雄
- 第3章 そのまま使えるおすすめ教材(クイズ&ゲーム)
- 18 迷路型点字学習ゲーム /小林 幸雄 /岡田 健治
- 1 とどけ!ぼくの手紙
- 2 点字ドライブだぞ
- 3 バイキンマンに負けるな!
- 4 カッパにご用心!
- 19 一字かえ『遊び』点字の巻 /小林 幸雄
- 20 指文字ゲーム /小林 幸雄
- 21 点字神経衰弱ゲーム /小林 幸雄
- 22 クイズ―我が国で発明された点字ブロック /小林 幸雄
- 23 点字50音をマスターしよう /甲本 卓司
- 24 点字をおぼえよう /甲本 卓司
- 25 点字の50音表
- 《クイズ&ゲーム解答》
- あとがき
- 著者・サークル紹介
まえがき
1993年夏,向山洋一氏は日本初のジュニアボランティア教育を提唱した。
その夏,向山氏は,家族と共にオーストラリアのパースを訪れた。娘さんのペンフレンド,ケリーに会うためでもある。ケリーの家は,パースの街から特急で2時間,南極大陸方面に下り,そこから車で2時間入ったところの小さな村にあった。ケリーは,水泳が得意で人命救助の資格をとったことを誇らしげに話してくれたという。
その瞬間,向山氏の頭はスパークする。
この子は,人のための学習をしたのだ。それを誇りに思っているのだ。
日本の教育の中に,このような視点があっただろうか。
上記の話を,向山氏は,帰国するや否や若手教師に対して熱く語った。そして,日本の子どもが,「人のための学習」をするシステム作りの構想まで言及したのである。
それは夏休みも終わりに近づいた8月の下旬,山口の法則化イベント会場であった。大挙して参加していた我々,作州教育サークルのメンバーもちょうどその中にいたのである。
帰宅後,いち早く行動を起こしたのが,作州教育サークルのメンバー,甲本卓司氏と大野木一雄氏の二人であった。
彼らは,手探りでボランティアの授業を開発していった。また,市の社会福祉協議会に連絡をとり,車いす体験教室も行った。
それらの動きを,連日,向山氏に報告しながら,3時間で1ユニットの「人に役立つ学習」を初めて終了させたのであった。人に役立つ学習を終えた子どもたちは,学校長より初の終了証ももらった。
幸運にも私は,その歴史的瞬間に立ち会うことができた。誇らしげに修了証をもらう子どもたちの表情がひときわ印象強く残っている。
このように,向山氏の熱い思いに共鳴した若手教師が,がむしゃらに前進した結果,全国に先駆けて人のための学習の第一歩を踏み出したのである。
この動きこそが,現在ある「ジュニアボランティア教育」の原点なのである。
さて,新学習指導要領が発表されて以来,ボランティア学習と言えば,今では当然のことである。
しかし,93年当時,全国に先駆けて,向山氏がジュニアボランティア教育を提唱されたときは,すぐに使える教材も教具も,役立つ指導案もほとんどなかったという。
向山氏は言う。
教師の仕事は「教え子とともに未来を見つめる」ことにある。「ジュニアボランティア教育」の大切さが分からない教師は,けっきょく,半世紀前に「戦争」に抗しえなかった教師と同じなのである。
当時,教師は教室のことのみに目を奪われ,子どもたちの未来,次の社会の方向を全く見なかった。結果として,多くの教え子を戦場に送り出してしまったのである。『教室ツーウェイ』(明治図書出版)’94年11月48ページ
さて,本書の特長は3点。第1に,ボランティア学習に取り組むポイントについていくつかの観点から提起していること。第2は,すぐに使える授業例が,たくさん載せてあること。第3は,新型の教材(クイズ&ゲーム)が載せてあることである。
「教え子とともに未来を見つめる」教師であるためにも,ぜひ,本書を有効に活用していただきたい。
1999年5月 作州教育サークル代表 /小林 幸雄
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- 明治図書