- まえがき
- T 信頼関係づくり
- 一 子どもたちと廊下ですれ違うとき、教師の目線はどこにあるか。
- 【目立たないおとなしい子】
- 二 教室に入る瞬間でさえ教師は見られている。
- 「教師が見られる」から「子どもが見られる」へ。
- 【昨日まで欠席していた子】
- ◆掲示板一 話しかける(空港へ向山先生をお迎えに行ったときの出来事)
- 三 席替えは特別な場面である。「いつもの通り」で済ませてはいけない。
- 【遠慮がちな子】
- 四 苦情を言いに職員室へ飛び込んで来た子へ対応する。
- 共感に徹することが第一の仕事となる。
- 【苦情を言う子】
- 五 「解決していません」に○をつけた子がいた。その日のうちに手を打ちたい。
- 【いじめられていると思っている子】
- 六 テレビで重大事件が放映された。次の日の教室で何を語るか。
- 【世界情勢に不安を抱く子】
- 七 休み時間の半分を教室で、残りの半分を職員室で過ごす。
- 【教師の評価を待っている子】
- 八 なぜ楽しい授業が必要か。笑顔を見せることができるからである。
- 【授業を受けているときの子】
- 九 努力を子どもに見せるのが嫌いだった。そのためにずいぶん損をしてきた。
- 【教師の努力を知った子】
- ◆掲示板二 水野学級参観記・ドキドキの学級会 /宍戸 威之氏
- 一〇 晴れ舞台で失敗させない。マイクの使い方一つで発表は駄目になる。
- 【全校集会で話す子】
- 一一 早く帰りたがるのは自然である。いかに喜ばせるかが腕の見せどころである。
- 【委員会活動の子】
- 一二 子どもの言動に「ほころび」が見られた。「ほころび」はサインであり、原因は教師にあった。
- 【まじめだったのに変化が見られた子】
- ◆掲示板三 同じことがありました /高杉 祐之氏
- 一三 つけさせるだけになっていた読書記録。学期末になって知ったM子の努力。
- 【地道に継続していた子】
- 一四 子どもは悪いことをしたくはないのだ。悪いことを払拭してあげるのが教師の務めだ。
- 【悪いことをしたと思っている子】
- 一五 男だけの授業。性に関する情報を手に入れることができない子もいる。
- 【一人で悩んでいる子】
- 一六 できるだけ早く処理させるのは、うしろめたさを引きずらせないためだ。
- 【宿題を忘れてきた子】
- ◆掲示板四 仕事を与えて取り払ってやる・水野学級参観記 /紫前 明子氏
- 一七 「仲良し」と「仲間」は違う。「仲良くしなさい」と言わない理由を語った。
- 【友だちづくりが苦手な子】
- 一八 行動させ、それを取り上げ、ほめて、意味を語る。
- 【信頼関係の基本はほめること1】
- 一九 聞いて歩いてでもほめる。書かせてでもほめる。
- 【信頼関係の基本はほめること2】
- U 緊張関係づくり
- 一 授業では言葉をきちんと使わせることができる。
- 【言葉を削った授業】
- 二 自由に書かせない。教師主導で書かせる。
- 【説明しない授業】
- 三 実験はさせる前で決まる。向山型店実験材料渡し点の追試。
- 【主導権を握る授業】
- ◆掲示板五 休憩を入れる、休み時間の雰囲気を消し飛ばす、恋心をくすぐって雰囲気を盛り上げる、どれも担任にしかできないことである。
- 四 「こんなこともできないのか」の「こんなこと」はどうでもいいことである。
- 【できない子にやさしい向山型算数】
- 五 指名して感じる。感じるから指名する。
- 【授業中のフィードバック】
- ◆掲示板六 ほとんどの子がマンガを読んでいる状態から一気に授業体制を整えた・水野学級参観記 /宍戸 威之氏
- 六 自習をさせたあとの点検は必ずする。点検をするから次のときに崩れない。
- 【自習課題の点検】
- 七 シンプルだから評価に力を向けられる。そして評価がシステムを強化する。
- 【向山式マル一〇個音読練習システム】
- 八 テストこそ緊張感と充実感をもたらす授業である。
- 【音読練習から音読のテストへ】
- 九 ここで動いたら昨日を越えられない。無言のままうなずいてやる。
- 【指名なし音読】
- 一〇 熱中するような楽しい授業も、緊張関係があってこそ楽しいものとなる。
- 【法則に則った授業をする】
- ◆掲示板七 漢字一字の授業
- 一一 伝記は待っていても読まない。教師が読ませれば読む。
- 【図書室からありったけの伝記を持ち込んで読ませる】
- 一二 授業はいくつもの活動を次々と仕組んだ方が統率できる。
- 【ユニット六つで組み立てた国語の授業】
- 一三 凝縮するから緊張感が生まれる。
- 【作品をまるごと扱った授業】
- 一四 「します」ではなく「〜なさい」と言い切る。
- 【言葉づかいに気をつけた授業】
- 一五 誰ができて誰ができていないのかを把握する。その上で「まだの人いらっしゃい」と言う。
- 【反復と確認でできない子を救う】
- 一六 個別指導は荒れる原因。クラス代表への指導も全員の前でやる。
- 【自由研究発表の指導】
- ◆掲示板八 水野学級参観記・学級会でのイベント案評定 /紫前 明子氏
- V 対応力づくり
- 一 「どうして赤ボールペンじゃ駄目なんですか?」→ 「否定しない」「先手を打つ」「選択させる」
- 【高学年女子との接し方・闘い方】
- 二 子どもは先生に出しゃばってもらいたくはない。でも間違っていたら言ってほしいと思っている。
- 【女の子の世界】
- 三 女子の揉めごとにおいて断定は禁物である。十中八九でも断定はしない。
- 【授業に入ったら突っ伏して泣いていた】
- 四 対応する教師の在り方が問われている。
- 【よくない言葉を口にした子】
- 五 一生懸命さの価値づけが放置されたとき、子どもたちの「美しさ」は失われる。
- 【駄目な叱り方の典型】
- 六 人の可能性をつぶしてよいのか。じゃんけん制に納得しない子。
- 【立候補させるときに意識した言葉】
- 七 その行動を問題だと自覚していない行動が問題行動なのである。
- 【手紙のやり取りがはやっているとき】
- 八 「指導してください」と言われたとき。時間はかけず説教臭くもしない。
- 【校内生活指導】
- ◆掲示板九 叱り方(番外)時にはこんなこともする。
- 九 からかいは見逃さずに叱る。
- 【謝って済ませるだけでは駄目な場合】
- ◆掲示板一〇 水野学級参観記・キレた子に対する叱り方 /角田 俊幸氏
- 一〇 集団を意識すると叱り方は決まってくる。
- 【守るために叱る】
- あとがき
まえがき
信頼関係を土台にして緊張感のある授業ができる学級は荒れない。
信頼関係と緊張関係
学級はこの二つの関係を行き来しながらつくられる。
学級づくりのマトリックス(評価座標)は次のようになる。
(図省略)
二つの関係が強いほど学級は安定する。
二つの関係をつくるのは学級担任の仕事である。
担任は信頼関係を土台にして緊張感のある授業をつくるべきである。
これが本書の主張である。
本書はこの主張を次の手段で具体化した。
描写の中に技術をとけ込ませる。
技術を取り出して伝える書き方ではなく、出来事の中で技術を伝える書き方である。
なぜ技術だけを提示しないのか。
技術以外の何かも同時に伝えたかったからである。「何か」とは教室の雰囲気だったり、子どもたちの動きだったり、そのときの教師の考え方だったり様々だ。本書は教室に生じるそうした様々な出来事をまるごと提示しつつ、その中に技術をとけ込ませている。したがって、技術+αを読み取ることができるはずである。
また、本書におけるほとんどの文章は次のことを通して書かれている。
教室での出来事をその日のうちに書く。
徹底して「その日のうち」にこだわった。
次の日に書こうとすると次の日の出来事が生じて思い出せなくなるからである。
教室は新しい出来事の連続だ。書かないでいると次の日の新しい出来事に取って代わられる。「そのときどうしたか」などという大事な部分が次の日の出来事に店上書き点される。本書は、毎日の仕事の中で思い出せなくなってしまうような「小さな」しかし「大事な」ことを紙上で再現することに努めた。各章の中身はすべてが学級の事実に基づく実践日記である。
学級は「二つの関係」を行き来しながらつくられる。
本書は成功の記録ではない。
力のない一教師が目の前にいる子どもたちを相手に、時に悩みながら、時に手応えを感じながら「二つの関係」を行き来した記録である。
同じような立場に立つ若い教師の役に立てるならと思い、ありのままをここに提出する。
二〇〇四年一二月一四日 /水野 正司
緊張関係づくり
対応力づくり
この3章から成り立っている。
この本は著者の日記から作られている。
そして、子どもに対する対応などの技術が「描写」にとけ込むようにして書かれている。
こういうとき→こういう技術を使う!
こういう技術がある→こういう場面で生かす!
という書き方ではなく、
日々の学級、授業の様子の描写が掲載され、その中に、技術がとけ込むようにして書かれている。
あこがれだ。
この書き方は。
記録として、あこがれる。
内容も一級品だ。
読んでいておもしろい。
学級の様子を想像してみると、おもしろい。
すごいと思う部分あり、納得できる部分あり。
そして、よほど意識していないと、真似はできないプレッシャーを感じた。
特に高学年女子の対応は見事だ。
投稿があったことを知り、びっくりしました。
過分なる評価もいただき恐縮です。
なつかしい「紫前明子」からの便り、うれしいです。
明治図書さんのこの機能を掲示板のように使っていいものか迷いましたが、ここでお返事させていただきました。
「珍しいタイプ」であるのは多分「日記」が中心の本だからだと思います。「その日」にこだわることが、このような形になるとは夢にも思いませんでした。
今はまた新しい現場で「信頼関係づくり」と「緊張関係づくり」の間で日々を過ごしております。
そのベースにあるのはすべてTOSSの実践です。
TOSSで学んで来なければ今の私はありません。
もし次があるとすれば、今以上にTOSSから学ばねばならず、それが現在の私の課題です。
新しい峰は毎年やって来ています。
「水の如し」はまめにチェックして、プリントアウトもしていましたが、一冊の本にまとまるとやはり読みやすいです。
「描写の中に技術をとけ込ませる」
これがこの本の一番の特色です。本には載らないような、日常の小さな小さなひとコマの中に、大切な指導がたくさん隠されていることがよくわかります。教師のさり気ない活動の中に、たくさんの意味があることがよくわかります。
「今日の勝負どころはここだな」「ここで私が動いたら今日の音読は意味がない。昨日を越えられない。」など、意識して少しでも子どもを伸ばそうとする教師の姿勢が何より勉強になりました。
授業を引き締める・楽しくするちょっとしたアイデアも満載で、いつか使いたいネタがたくさんありました。
珍しいタイプの教育書だと思いますが、これが一位になるということは、こういうさり気ない日常の実践をみんな知りたかったということなのでしょうね。続刊も期待しています。