- まえがき
- T章 あなたの教室環境イメージは?
- ―教室環境はあなたの「学級経営の質」が問われる―
- §1 「きたない教室」
- §2 「きれいな教室」
- §3 「うるさい教室」
- §4 「生きている教室」
- §5 教室環境は「教師自身」
- U章 あなたの教室環境デザインの戦略指針は?
- ―教室環境はあなたの「センス」が問われる―
- §1 教室環境デザインを「盗む」
- §2 教室環境デザインは「日常」から
- §3 教室環境デザインに「センス」を
- V章 低学年・明るい教室環境づくり12か月
- §1 4・5月のデザインと実際
- A 〈キラリ見つけ〉〈仕事見つけ〉
- B みんなのめあてをつくろう 〜学級目標づくり〜
- §2 6・7月のデザインと実際
- A みんなで祝おう みんなの誕生日
- B 1年間使える教室の基本アイテム 〜うたごえ楽譜・読書の木〜
- §3 8・9月のデザインと実際
- A いよいよ 夏休み
- B ペタペタレターでみんながつながる 〜ふせんメモで よいとこ見つけ〜
- §4 10・11月のデザインと実際
- A 実りの秋は〈実りの教室〉
- B スポーツの秋・芸術の秋
- §5 12・1月のデザインと実際
- A きっかけは例えば〈鏡餅〉
- B みんなでかざろう 私たちの教室
- §6 2・3月のデザインと実際
- A 〈学級の終わり〉はカレンダーの積み重ね
- B ありがとう 6年生 〜卒業をお祝いするプレゼント〜
- W章 中学年・明るい教室環境づくり12か月
- §1 4・5月のデザインと実際
- A 子どもの笑い声が大きくなっていく
- B はじめよう!係活動
- §2 6・7月のデザインと実際
- A 生きて成長する学級目標
- B 学級会コーナーを作ろう
- §3 8・9月のデザインと実際
- A 楽しかったね,夏休み!
- B 話合いを活性化しよう
- §4 10・11月のデザインと実際
- A 教室中が運動会気分!
- B 行事を120%活用しよう(異学年集会)
- §5 12・1月のデザインと実際
- A みんなで拍手!作品展
- B 学級集会を成功させよう
- §6 2・3月のデザインと実際
- A こんなに成長した世界一周旅行
- B 係活動でこんな教室になったよ
- X章 高学年・明るい教室環境づくり12か月
- §1 4・5月のデザインと実際
- A 基礎基本の〈当番表〉
- B 〈思い・姿・計画・足跡〉みんな一緒に!
- §2 6・7月のデザインと実際
- A 学級目標を視覚的に
- B 係 大好き!
- §3 8・9月のデザインと実際
- A 運動会のがんばりを生かそう
- B 学校生活,グレードアップ再スタート
- §4 10・11月のデザインと実際
- A 〈紹介新聞〉で振り返ろう
- B みんなでフェスティバルを成功させよう
- §5 12・1月のデザインと実際
- A 新しい年 さあ!
- B 冬休みに向けて,そして新しい年を迎える教室
- §6 2・3月のデザインと実際
- A 6の3フラワー花束をつくろう
- B 希望と夢をもって最高学年へ(5年生)
- あとがき
まえがき
○ 「子どもたち色」
小学校の教室は全国どこでも基本的に同じである。8m四方,つくりもほぼ同じ。しかし,教室に入ると何かが違う,雰囲気が違う,全国同じ教室はない。それは教室がその学級の色,「子どもたち色」に染められていくからである。「子どもたち色」とは何か。
○ 「私たちを見て,私たちの学級を見て」
20年も前のことである。そのときの勤務校は毎年研究発表会を開いていた。だから,私も毎年,市内市外の多くの教員を前に授業を公開していた。
それは5年生の担任の時であった。
研究発表会の前日,こんな話を子どもたちにした。
「明日,たくさんの先生がみんなの授業を見に来る。でも,みんなはいつもと同じでいい。だけど,心の準備をしてほしい。心の準備を何かの形に表せるといい。たとえば,鉛筆を削ってくるとか」
私の話はそれで終わった。
そして,次の日。中休みに鉛筆を削っている子がいた。一・二時間目の授業で鉛筆を使ったから,削り直していたのである。私はもしやと思い,子どもたちに聞いてみた。「きょう,鉛筆を削ってきた人」
全員が手を上げた。いままでこんなことはなかった。すぐに言葉を発することができなかったほど,この子どもたちの素直さ,意欲に私は強い感動を覚えた。
一時間目の授業中,教室の後ろのロッカーの上に花瓶にさしてある花が二つあるのに気づいた。今日のためにだれかが持ってきてくれたのだろう。
しかし,いつもは花がないのに公開授業のときに花があるというのは,私には照れくさい。そこで,授業中,子どもたちに気づかれないよう,二つの花瓶をそっと端に動かした。目立たないようにしたのである。すると,中休み,女の子がふたりその花瓶を動かして元の位置に戻していた。
私は聞いてみた。「この花どうしたの」
「私たちふたりで買ってきました」
「お金はどうしたの。お家の人に出してもらったの」
「いいえ違います。ふたりのお小遣いを出し合いました」
子どもたちの気持ちがひしひしと伝わってきた。公開授業に対する子どもたちの気持ち,「私たちを見て,私たちの学級を見て」という意欲・凝集性・誇り……それらを強く感じた。
私は「公開授業がうまくいった,うまくいかなかったなんて,もうどうでもいい。この子どもたちの気持ちで十分だ」と思った。
○ 「みんなの心」の表現
「花をかざる」これも教室環境である。そして,子どもたちが自ら創り出している。そして,そこには「私たちを見て,私たちの学級を見て」というみんなの強い気持ちがこもっている。
それは,それまでの子どもたちによるクラスづくり・仲間づくりにより学級が子どもたち色に染まってきたからである。子どもたちはその色を教室環境に反映させようとしたのである。もっと正確に言えば,子どもたちみんなの気持ち,「心」を教室環境に表現したかったのである。
ここに教室環境の本質がある。
教室環境は教師が創り出すものではない。教室環境は静的なものではない。
教室環境は子どもたちが創り出す,動的なものである。
本書で表現したかったことはこのことである。
「子どもたちが創り出す教室環境」その実践の陰にひそむ,教員の「子どもたちへの思い,学級経営への姿勢」それらも伝えられたら本望である。
「教室環境は子どもたちが自ら『子どもたち色』に染めていく」
2006年11月 編者 /松永 昌幸
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- 明治図書