- まえがき
- T 4年生「水道」の授業をどうつくっているか
- 「水のことを勉強しながら、東京都の勉強をやっていこうと思います」
- 1 家で使う水の量と金額を調べさせる
- 2 学校では一カ月にどのくらい使うのか
- 3 水はどこからきているのか
- 4 発表のルールをつくりなさい
- 5 調べる方法の発表と確認
- 6 「水道」の授業を読み解くポイントは
- ―「問い」と「調べ方」をセット化する極意 /赤阪 勝
- U 4年生「雪国のくらし」の授業をどうつくっているか
- 雪国の暮らしは大損か? という学習課題で燃えた子どもたち
- 1 教師向山・しょっぱなの「ツッパリ」
- 2 話のきっかけをつくるのは誰?
- 3 子どもの発言はこう整理する
- 4 「雪国のくらし」の授業を読み解くポイントは“ここ”
- ―教師がほとんどしゃべらずに成立する授業 /松崎 力
- V 5年生「工業地帯」の授業をどうつくっているか
- 目標の具体化の手順と単元の構造はこうだ!
- 1 本授業研究設定のねらい
- 2 教材と目標の設定
- 3 児童の実態
- 4 本時までの学習の流れ
- 5 本時の学習
- 6 実態調査について
- 7 「工業地帯」の授業を読み解くポイントは“ここ”
- ―工業地帯に住んでいない子に追試した結果の考察 /中田 幸介
- W 6年生「多摩川は誰のものか」の授業をどうつくっているか
- 身近にある切実な問題から見えてくる“社会の窓”
- 1 授業の着想
- 2 授業計画
- 3 第六学年三組社会科学習指導案 指導者 教諭 向山洋一
- 4 児童作文にみる授業の様子
- 5 授業の考察
- 6 「多摩川は誰のものか」の授業を読み解くポイントは“ここ”
- (1)―社会事象に対する問題解決型アプローチ /片上 宗二
- (2)―生活圏にある社会的な問題が浮上するドラマチックな教材開発 /松崎 力
- X 6年生「江戸時代の人口」の授業をどうつくっているか
- 一九八四年 有田・向山立ち会い授業の実践
- 1 資料の見方・考え方の急所をおさえる
- 2 グラフを比べて変だなと思うことを書かせる!
- 3 「グラフの感じ方が違う」へと突入!
- 4 真実に迫る調べ方って?
- 5 「江戸時代の人口」の授業を読み解くポイントは“ここ”
- ―グラフ読解を通して調べ学習の原則提示 /赤木 雅美
- Y 6年生「福沢諭吉」の授業をどうつくっているか
- 江戸時代になくて明治時代にあるものは? から考えさせると
- 1 子どもをひきつける導入エピソード
- 2 江戸時代と明治時代の身分図を説明させて
- 3 平等と自由をめぐって
- 4 「福沢諭吉」の授業を読み解くポイントは“ここ”
- ―諭吉は横浜で何を見たか〜から出発しているわけは /川原 雅樹
まえがき
向山洋一氏の社会の授業には傑出した提案性があります。研究会で公開されたものや学級通信等の記録に残っているもの、音声として録音されているもの等を含めると、その数も膨大です。多くは「そのまままるごと」の状態で残っています。向山氏が加工しないままで(つまり都合のいいように改変しないで)そのまま残しているからです。これらの膨大な記録の全貌はまだ解明されていません。その中から本書では特に代表的だと思われる授業を六つ収めました。
@ 4年生「水道」
A 4年生「雪国のくらし」
B 5年生「工業地帯」
C 6年生「多摩川は誰のものか」
D 6年生「江戸時代の人口」
E 6年生「福沢諭吉」
たとえば「工業地帯」です。
向山氏は子どもたちに「自分流の法則(仮説)」を考えさせました。
ア 〜であれば工業地帯である。
イ 工業地帯であれば〜である。
社会科という教科の本質は「社会事象間の因果関係」をとらえさせることにあります。
「Aが原因でBの結果になった」ということの説明ができること。
これが、社会科の目標の中核なのです。地理も歴史も、産業も経済も、要するに目指すところは同じです。
向山氏のこの仮説の文型は「社会事象間の因果関係」をストレートに表現しているといえます。いわば、直球を投げているのです。授業前の実態調査の取り方、仮説をつくらせるまでの「体験の蓄積」のさせ方、仮説をつくらせた後の「検証」のさせ方等の一連の流れを含め、このようなタイプの授業は向山氏以前にはありませんでした。学問の本質に迫りながらしかも楽しくて力がつく社会科の授業。それを目指す先生方が、本書を手にとってくださるなら嬉しいです。最後になりましたが、本書の構成等について多くの指針をくださった明治図書の樋口雅子氏に心より感謝申し上げます。
/谷 和樹
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- 明治図書